見出し画像

シャングリラへゆく⑦チベットに受け継がれる埋葬方

理想郷のことを人はシャングリラと呼ぶ

雲南の香りに魅せられて僕は旅をした
冒険家が探し求めたシャングリラに想いをよせ
奥へ奥へ雲南省の秘境を旅した記録

①から読めばより深く楽しめます
シリーズ「チベットへゆく」の第二部
シャングリラへゆく物語

チベットに受け継がれる埋葬方

雲南省の山の奥の奥の奥にあるチベット寺
ダライ・ラマ5世が晩年に
チベット信仰を広める為に各地に建てた寺の一つ

松贊林ソンツェリン

松贊林ソンツェリン

こんな山奥で この寺を見上げた僕は
思わずシャングリラとつぶやく

とても綺麗で黄金の屋根が
太陽光を反射し際立つ夕刻は幻想的だ
寺の造りもポタラ宮殿をイメージしてか 
どこか似ている

寺の中はとても静かだった
修行僧の姿はみられず観光客が部屋を次々に移動し見学していた

中途半端な時間だったのもあるので
休憩中かもしれないが
朝、夕は恐らくお堂の中でお経の暗記を
しているのだろうと想像した

左(パンチェンラマ10世)右(現11世)

ゲルク派の寺でよく見かける
パンチェンラマの写真
激動の時代を駆け抜け謎の急死を遂げた
パンチェンラマ10世の話は
チベットへゆく⑩でもご紹介

現在のパンチェンラマは11世
写真の右の人物 写真は若い青年だけど
2022年現在で32歳になる

実はこの現パンチェンラマ11世に
まつわる話も面白い
写真左の10世が1989年1月に急死を遂げた後
パンチェンラマ11世探しが始まる

1991年3月
パンチェンラマは既に生まれ変わっている事が
チベット伝統的な占いにより判明
8月に再度占うと その子ではなく
まだ認定する時期でもないと示しが降りる

93年に改めて行われた占いでは
タルシンポより東の地に生まれている事を
いくつかの予兆から読み取り再調査が行われる

94年1月 
ネーチューン神託師(拉薩にある寺の神託師)は
「法王(十四世)は転生霊童を探している
一丸と探せばチベットで見つかるだろうと」
告げる

94年12月に認定時期を占う
可」と示され
いよいよ認定への最終局面へと進む

3人の最終候補に絞られ最終選定に入る

95年チベット暦、3月の早朝
ネーチューン神託師は3人の候補に関して
「もはや言うべき事はない我が師(十四世)は
既に答えを持っている」と告げた
十四世は一度も会う事なくお告げと
千里眼的インスピレーションの能力から選定に入る

有名なラマの転生児に遠く離れた十四世は
インスピレーションを得て神がかり的に転生児発見
に能力を発揮し探し当ててきている

占いにより発表する時期を決める
1995年5月14日に当時6歳の
ゲドゥン・チューキ・ニマという名の
少年を認定した

通称ニマ少年

ダライ認定のニマ少年

しかし、法王が選んだ少年は認定公表後に
政府により拘束され姿を消した

現在も、その行方は分からず
一般人として生活しているとだけ発表されている

実は、10世がこの世を去ってから14世は
インドより中国政府へ何度も
パンチェンラマの選定に協力を要請してきたが
拒否され続け協力はしてもらえなかった

チベットの伝統的な手法でダライラマが
認め認定されたニマ少年は
中国政府は認めなかったという経緯がある

そして政府が認定を認めた別の少年が
写真の右の人物で
彼が現在のタルシンポ僧院の座にいる

中国が認定した11世

そして現在に至る

かつてダライ・ラマ六世が偽物と呼ばれ
新たな六世が連れてこられたように
パンチェンラマもチベットが伝統的手法により
探した子ではない肉体が座主として継承している

チベットに生れ落ちてしまっては
インドにいるダライ・ラマ十四世は
手を差し伸べる事ができない

歴史は繰り返すとするならば
消息をたったニマ少年の生まれ変わりを
占いにより探す事になるかもしれない
そんな未来も僕は想像してみる



寺を見学の後
納帕ナパ海草原(以後:ナパ海と略す)へ移動した

寺から少し離れた場所にナパ海という湖があり
その近くに大きな湿地帯の草原が広がっている

なぜ?こんな場所に
突然現れたような違和感の綺麗な大草原
車では入れない為 馬に乗り変える

大草原の中央当たりに1本の川が流れている
そこがもう一つの僕の今回の目的地でもあった

ここではチベット族が亡くなると
水葬を行う場所

そして肉体は川に沈められ魚や鳥が食べる

現在、頻繁には行われないが 
全くないわけではない
禁止されてるのか黙認されてるのか
わからないが伝統的に水葬は今でも行われている

有名なのは天葬(鳥葬)
山に49日を過ぎ魂が完全にに抜けた
肉体をハゲワシの餌にするのは有名で
習慣が残る村なら運が良ければ今でも見学出来る

今回、水葬を見学する事はなかったけど
インドのガンジス川で燃やされ
中途半端で流される肉体とどこか
通ずるものも感じる

信仰による来世への準備は
死ぬ者の最後の切なる頼みかもしれない

チベット仏教の埋葬は
最高峰は 塔葬(ミイラ化)
これはダライ・ラマと同じく
特別な僧のみ採用される

他にも
火葬(燃やす)権威あるラマに行われる
天葬(鳥に食べさす)
水葬(魚に食べさす)
土葬(罪を犯した人)

チベットに置いて
最も避けたいのは土葬
殺人者や伝染病者や罪を犯した人は
土葬される

今は火葬が主流になっている

チベットに受け継がれる埋葬方

何もない大草原に流れる1本の川
長い歴史の中でこの川で多くの肉体は
自然に帰り魂は輪廻してきた

こんな山奥の奥の奥で
信仰は今でも継承されている

文明は進化し続ける事が必ずしもよいとは
限らない
それは僕らから見たものさし

近代文明は
数百年続いた習慣や文化を一瞬で壊わす
長く続いた伝統と信仰は途切れる

この寺が観光地化せず
活気に満ちていた時代を想像してみた
数千人の僧が唱える真言の波動が
山に湖に草原の隅から隅へと
小さな隙間に入って心を満たしていく

山に囲まれた村はチベットの仏の加護の中で
生まれ 生きて 死んでいく

でもそれも 
シャングリラだった遠い過去になった

そんな悲しい気持ちで
この地を後にした

⑧茶葉古道を訪ねて再び南に進路をとる へ続く


↓↓聖地巡歴記 インド編 はこちらをどうぞ!

↓↓聖地巡歴記 西安編 はこちらをどうぞ

↓↓聖地巡歴記 ミャンマー編 はこちらをどうぞ

↓↓聖地巡歴記 南京編 はこちらをどうぞ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?