マガジンのカバー画像

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第四期生

25
数々のクリエイターの出身母体となった"小池一夫劇画村塾"。その第4期生である筆者の業界回想録です。
運営しているクリエイター

#マンガ

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第1章(3)

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第1章(3)

<まず机の前に三時間!〜当たり前だが、実は最も大切だった実技>
 
 “漫画においては、何よりもキャラクターが重要”ということを、小池一夫先生はひじょうにわかりやすい例を挙げて説明された。
 例えば、小説との比較である。

 昭和に一時代を築いた松本清張先生の名作傑作の数々、『点と線』や『ゼロの焦点』『眼の壁』など、見事なタイトルはパッとすぐに浮かぶが、
「主人公のキャラクターは?」
 と、問われ

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第1章(4)

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第1章(4)

<課題作品提出一度に十本も?!〜先輩の伝説の提出本数に衝撃驚愕!そして、小池一夫御大の面接へ>
 
 いずれ課題が出されるということは、最初の講義で、小池先生からも、事務局のSさんからも告知はされていた。
 さらに、先に”伏線”と記したが、それは以下のようなお話を、あらかじめ聞いていたからだ。

 狩撫麻礼先輩が、入塾生に向けたメッセージの中で、

「皆さん、課題が出されたら、できるだけちゃんと提

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第4章〈2〉

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第4章〈2〉

<「ファックじゃなくて、ファクシミリとやら」〜狩撫麻礼先輩からの電話>
 
 前述もしたが、社会現象とも言える大ブームを巻き起こしていた新世代のプロレスUWFやシュートボクシングなどの試合を、後楽園ホールを始めとして、様々な会場へ観に行っていた。
 たなか亜希夫先輩や、前出の小池一夫先生のマネージャーのOさんも、大のプロレス好き格闘技好きであったので、皆、観戦仲間だった。
 共に観戦し終わった後に

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈2〉

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈2〉

〈集英社の雑誌で同時に3本連載しつつ、他社の雑誌でも複数の連載を持ち、1日に1本の締切、365日休み無し〉

 劇画村塾に入塾し、小池一夫先生と出会い、さらに優秀な漫画家さんや編集者さんと巡り合い、はからずも漫画原作者として恐ろしいほど多忙になってしまった。

 最も連載が多かった時期は、集英社の雑誌で3本同時連載しつつ、他社の雑誌でも複数の連載を持っていた。
 小池先生ほどではなかったが、それで

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈3〉

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈3〉

 
<カリスマ性を持った現役の一流作家が率いてこそ〜劇画村塾の存在意義>
 
 ここで、少し閑話休題的に、小池一夫劇画村塾の存在意義について、あくまでも自分なりの意見を記しておきたい。
(劇画村塾に通った皆さん各々で印象も意見も違うはずだからだ)

 創作は、本当は、塾やスクールなどでは教えられないという意見もある。
 それも一面の真理だとは思う。
 が、事実として、劇画村塾からは大勢のプロの作家

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈4〉

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈4〉

<”キャラクターを起てる”ことの幅広さ〜すべてのメディアで応用が可能>

 小池一夫劇画村塾のさらなる存在意義として、漫画家や漫画原作者だけでなく、それ以外の分野のクリエイター諸氏を、世の中に送り出したことが挙げられるだろう。
(『ドラゴンクエスト』の堀井雄二先輩、『桃太郎電鉄』のさくまあきら先輩をはじめとして、ゲームクリエイター、小説家、プロデューサー、編集者など、卒塾生のクリエイターは数多い)

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈5〉

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 第5章〈5〉

<劇画村塾で学んだ作劇上のテクニック〜キャラクターを起てるための技の数々>

 これまで述べてきたように、小池先生が提唱された、

「キャラクターを起てる」

 ということは、ひとつの主義であり、論理であり、概念である。

 劇画村塾では、その具体的な方法や練習の仕方なども、小池先生から教えていただくことができた。
 それらの技は、今でも、作劇において十分に通用し、また応用も可能である。
 (実際

もっとみる
"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 終章

"キャラクターを起てろ!"劇画村塾第4期生 終章

〈あとがきのようなもの〜劇画村塾の前に劇画村塾なし、劇画村塾の後にも劇画村塾なし、されど……〉

 今……。
 眼の前に一本のボールペンがある。
 表面に綺麗な装飾が施された、特注製の品である。
 いつだったか、小池一夫先生にお会いした際に、

「これ、おまえにやるよ」

 と、いただいたものである。
 その時は、恐縮しながら、ありがたく受け取っただけで、まさかそれが形見になるとは思ってもいなかっ

もっとみる