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「天のくに・天川村」を歩く旅〔1.大峯登山〕

9月13日から1泊2日で奈良県の天川村に行ってきました。
この記事では、最初の目的地である大峯山登山の様子をお伝えします。

大峯山は、役行者(えんのぎょうじゃ)が開き、平安時代から盛んになった修験道(しゅげんどう)の道場として知られています。
修験道は、山岳修行によって呪力を体得する信仰のこと。
こうして修行する人のことを「山伏」と呼び、現在でも多くの山伏が大峯山を訪れるそうです。


旅の始まりは近鉄吉野線の下市口駅。

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8時20分の始発バスは、洞川(どろがわ)温泉ゆき急行です。
洞川温泉は大峯山の玄関口として知られ、山伏のための行者宿が並ぶ温泉街。

バスは山道特有の「何度も曲がりながら少しずつ高度を上げていく」道路を進み、乗り物酔いのような感覚に襲われました。

下市口駅を出発して1時間で、洞川温泉に到着です。

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荷物を預けるため、この日宿泊する旅館に向かいます。
道の両脇に商店が軒を連ね、いかにも温泉街という雰囲気。

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実はこの洞川温泉から、大峯山の登山口である清浄大橋までは徒歩で50分ほどかかります。
しかし今回は、旅館の車で送ってもらえることになりました。
非常にありがたい話です。

旅館のおっちゃんは、「女人結界門」から目と鼻の先のところで車を止めてくれました。

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こんなに近くまで車で入れることに驚きです。

結界門から先は男性しか入ることができません。

門の前で一礼して入山します。

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最初は比較的平坦な道。

すでに下山してくる人たちとすれ違います。

大峯山では、すれ違いざまに「ようお参り」と挨拶するのが習慣だそう。
初めて聞いたときは都市伝説かと思っていましたが、実際にすれ違うとみなさん「ようお参り」とおっしゃるので、これは事実であることが判明しました。

女人結界門から50分ほどで、最初の休憩所「一本松茶屋」に到着。

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旅館のおっちゃんから、休憩所に着いたらその度に休憩するようアドバイスを受けたので、ここで休憩します。
割としっかりした建物で、荷物を置いて食事や服の着替えもできそうでした。

ここから次の「洞辻茶屋」に向かいます。

道はさっきより少し険しくなり、小岩や木の根を踏み分けないといけません。
頂上までも距離があるこの区間が、個人的には1番辛かった。
辛い箇所なので写真を撮る気力も出ませんでした(言い訳)。

途中に「お助け水」があります。

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飲用できるのかは謎ですが、とにかく冷たい。
横にベンチもあり、ちょっと休憩できました。

お助け水を過ぎると、またも黙々と登ります。

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そうこうしているうちに、洞辻茶屋に着きました。
一本松茶屋を出て50分ほどです。

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この洞辻茶屋は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている、吉野から熊野への「大峯奥駈道」との合流地点です。

この先は吉野。

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洞辻茶屋には本来軽食の出店があったようですが、今年は昨今の情勢から休業しているとのこと。

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記憶は曖昧ですがメニューを見たところ、山の上にしては良心的な価格設定だと感じました(うどんが500円とかだったはず)。

ここで食べるご飯はめちゃくちゃおいしいだろうなあ。

ここからいよいよ大峯奥駈道を進みます。

途中に分岐点がありました。

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せっかくなので、往路は左の「古来よりの行者道」を進むことにしました。

ところどころ見える山の景色が、まるで中国の霊山のような雰囲気を醸し出します。

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平安時代に盛んになった修験道は、山中で修行をする密教の影響を色濃く受けています。
中国に始まる密教の起源を考えると、この雰囲気はまさに修行にぴったりだったのではないでしょうか。

景色に感動していたら、道が険しさを増しました。
鎖を使ってよじ登る、完全な岩場です。

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鎖がある岩場は3箇所、鎖がない岩場は無数にありました。
この辺りからは軍手必須の場所と言えそうです。

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山頂に近づくと、「西の覗」の行場に着きました。

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「西の覗」は「日本三大荒行」の1つで、この岩から身を吊るされる修行です。

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旅館のおっちゃんに「若いもんにはやってもらいたい」と勧められましたが、修行のときは「非常に密」になるために今年は開かれていません。

山頂が近づいてきたので、宿坊が見えてきました。

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ここをさらに進むと、山頂にある「大峯山寺」に到着です。
洞辻茶屋から1時間10分ほどかかりました。

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本堂の隣に、拓けた場所があります。
ここで昼食を摂ることにしました。

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これまであれだけ深い山中を歩いたのに、山頂にはこんな拓けた場所があることに驚きました。

雲が晴れれば周辺の山々を見渡せそうです。

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この日はあいにくの天気でしたが、拓けた山頂では楽しく過ごしました。

ここから下山します。

往路と違い、「岩をくだる」必要があります。
足の踏み場を慎重に吟味するこの動作は、往路以上に精神的な疲労を感じました。

そういえば、往路に分岐点がありましたよね。
復路は先ほどの看板で右の「平成新道(下山道)」を通ったのですが…

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階段の嵐です。
崩れかけの箇所もあり、脚への負担は相当なものでした。

かと言って、また鎖にしがみついて降りるのも嫌なので、ひたすら階段を降ります。

下山の最後では脚が疲れ、どこかで脚を踏み外さないか心配でした。

まさに無心で歩いているという感覚です。

少しだけでも修行の雰囲気を味わうことができたのかもしれません。

そして、登山口である清浄大橋へ。

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頂上での休憩も含めて往復6時間ほどかかりましたが、良い経験になりました。

山の頂がはるか遠くに見えるのか、雲に隠れて見えないのか。

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連絡すると、旅館のおっちゃんが車で迎えてきてくれることになりました。

洞川温泉へ戻ります。

大峯登山はこれにておしまい。


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