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『Prototyping with OTON GLASS』

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https://note.com/keisukeshimakage/n/nb276d5b28866 ※現在進行形の原稿になります。物語部分は現在のバージョンのものをお読みいただけ…
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# 120_『Prototyping with OTON GLASS』

目次 # 121_はじめに [試作編] # 122_情報技術の系、人の系、知の系 # 123_OTON GLASS 解体新書 # 124_バンドはプロジェクト? # 125_プロトタイピングことはじめ # 126_少数派性の発露 # 127_小さなコンピュータ # 128_オルタナティブな社会の造形 # 129_機械学習とクラウドサービス # 130_一人称の物語という知の構造 # 131_ものづくりの生態系 [詩作編] # 132_ふぁぶびおとーぷ? # 133_詩作

# 121_はじめに

 本書は大きく試作編と詩作編に分かれる。前半の試作編は、島影が開発を率いてきた文字を代わりに読み上げるメガネOTON GLASSを題材に、プロトタイピングについて講義をする内容となっている。情報工学やインタラクションデザインを学ぶ人を主な対象としている。後半の詩作編は、本書におけるプロトタイピングのエッセンスを抜き出し、ほぼ誰にでも実践できる形で方法論化し、ワークショップの形式で実行する内容となっている。いずれも講義録の形を取っているが、過去の記録ではなく、今後実演されること

# 122_情報技術の系、人の系、知の系

 みなさん、はじめまして、島影と申します。どうぞこれからしばしの間よろしくお願いします。今回、講義の初回ということで、なんとなくの本講義の全体像みたいなものに触れていけるといいかなあと思っています。それでその前にですね、今回の講義というのは、ぼくとここにいる須田さんの二人で、講師の方務めさせてもらいます。須田さんのことについてはご本人から話してもらうのがいいかなと思いますが、簡単にぼくの方から紹介すると講義の全体像を説明していくのにスムーズなので少しお話させてもらいます。  

# 123_OTON GLASS 解体新書

 みなさん、はじめまして、ここからの内容を担当する須田です。よろしくお願いします。ご紹介いただいた通り、島影さんとは同じ大学の出身で、私の方はインタラクティブアートの研究室に所属しておりました。現在は、大学や専門学校で非常勤講師として、デザインやプログラミング、電子工作などを扱う授業を担当しております。この講義内でも、コンピュータやOTON GLASSを使う実践形式の演習部分を担当させていただきます。  演習は、今回を含めて全五回を予定しています。各回、前半は島影さんにこれま

# 124_バンドはプロジェクト?

 島影です。みなさま、本日もよろしくお願いします。突然ですがブルーハーツとかミッシェルガンエレファントとか世代ですか?ぼくはけっこう90年代の日本のロックンロールに影響を受けているですよねー。ブルーハーツとかは世代を超越した普遍性があるので世代とか関係ないかもしれませんが、でも彼らが激しく活動していた時期に聴いていたかどうかは聴き手に大きく関係しそうです。ミッシェルなんかは結成1991年なので、ぼくが生まれた年に結成しているわけです。それで2003年解散なので、ぼくが小6とか

# 125_プロトタイピングことはじめ

 須田です。さて、前回はOTON GLASSを実際に使ってみることで機能や操作方法に触れ、バラバラに分解してみることでどのように出来上がっているか見てみたわけですが、今回からは、島影さんの話に登場したキーワードに焦点を当てて、OTON GLASSを掘り下げていきたいと思います。今回のキーワードは「プロトタイピング」です。

# 126_少数派性の発露

 島影です。みなさん、今回もどうぞよろしくお願いします。前回は、恐れ多くも(かつテキトーに…)90年代の日本のロックバンドをメタファにして、プロジェクトとしてのOTON GLASSの変遷を辿っていきました。そこで、とりわけバージョン1、3、5の奇数番号のモデルというのが、その時々の社会状況、またぼくをはじめとした実践者の当時の状況を象徴的に反映したものになっているとお伝えしたと思います。今回は、ことの起こりであります、バージョン1の時の話をしようと思います。

# 127_小さなコンピュータ

 須田です。前回は、OTON GLASSのこれまでにおいて重要だったプロトタイピングの姿勢に注目し、ハードウェアとソフトウェアを組み立てる基本動作とも言える、電子工作とプログラミングに触れてみました。やや大袈裟に言うと、電子工作の演習では、私たちの操作は電気を使って表され、逆に電気でできた情報が私たちの目の前に現れる、そんな瞬間に立ち会いました。プログラミングの演習では、Pythonという私たちとコンピュータの共通の言語を使って、コンピュータに指示を出してみました。ボタンや光

# 128_オルタナティブな社会の造形

 島影です。みなさん、今回もどうぞよろしくお願いします。前回はOTON GLASSのバージョン1を皮切りにお話をしました。プロトタイピングという行為を、試作品の開発という限定的な意味から解放するような形で、プロトタイピングまたそれを中心としたプロジェクトを実践する身体像、具体的にはぼくのからだを題材に考えていき、日常とか生活として実践される活動としてのプロトタイピングの意味みたいなものを言葉にすることを試みました。

# 129_機械学習とクラウドサービス

 須田です。前回は、OTON GLASSに使われているRaspberry Piという小さなコンピュータを使って、コンピュータの姿を詳しく見ていきました。簡単なプログラムを書いて、接続された電子回路上のボタンの状態を読み取ったり、LEDを光らせたり、接続されたカメラに写る画像にもアクセスしてみたりしました。そして最後には、ネットワークと通信を行なうプログラムを書いてみて、Webサーバーとの通信も行なってみました。私たちの操作や環境の情報が、電子回路やカメラを通して電気に変換され

# 130_一人称の物語という知の構造

 島影です。みなさん、今回もどうぞよろしくお願いします。まず、前回ですけれどもOTON GLASSのバージョン3を題材に、自らの少数派性の発露と共に、それが強度のある体験を実現するものになることで、それを起点に小さな社会が造形されていくというお話をしました。また機械学習の民主化というのが、そこで非常に大きな役割を担ったこと、ぼく個人にとっての機械学習の新たな意味が発見されたということもお話ししました。

# 131_ものづくりの生態系

 須田です。いよいよ実践演習は最終回となりました。前回は「機械学習」と「クラウドサービス」をキーワードに、OTON GLASSが行なっているネットワーク通信の全容を紐解いてみました。最終回なので、これまでの演習も振り返ってみると、ハードウェアを試作するための電子工作の基礎、ソフトウェアを試作するためのプログラミングの基礎、小さなコンピュータであるRaspberry Piの使い方、その他にも様々なツールの紹介と、OTON GLASSの分解と再構築を通して、多岐にわたる技術に触れ

# 132_ふぁぶびおとーぷ?

 みなさま、本日はどうぞよろしくお願いします。改めて、本日、講師を務めさせていただきます、島影と申します。本日なんですが、前半はぼくの活動の話をさせていただいて、後半はみなさんに手を動かしてもらうというか、ワークショップのような時間をつくろうと思っております。ぼく自身の活動は、なかなか解決が難しい社会的な課題に対して、少し特殊な方法でアプローチしていて、少しみなさんの日常から距離があるような内容かもしれないのですが、その活動の根本というか基礎の部分はみなさんの日常にもつながる

# 133_詩作日記を企画してみる

 はい、それでは後半に入ろうと思います。前半は弱視とか情報技術とか、少しみなさんから距離のある内容だったかなと思います。なのですが、彼らとみなさんの違いというのは、ざっくりとはからだの特性(例えば目の見えやすさ)や得意なこと(例えばエンジニアリング)が違うだけで、ぼくが着目しているのは共通してそれぞれの日常についてです。どうやって日常の生活をつくっているか、というのに着目してます。当たり前ですけどみなさんにも日常があります。ぼくは誰しも日常の中に表現とかつくると言ってもいい行