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シリーズ「学校教育の再設計」①

目的

これまでの社会変容とこれからの社会変容に対して、学校教育はどのように変化していくべきかを皆さんと一緒に考えたい。また、どうすれば教育政策に具体的に落とし込んでいけるのか行政的なプロセスや手続きを考えたい。

社会の変容と学校教育の現状

(1)社会の変容

日進月歩のテクノロジーの進歩により、その技術の恩恵を受けて我々が暮らしている社会の変化も著しいものがある。

  私が、高校1年生の時に「ポケットベル(以下「ポケベル」)」が流行し、当時の高校生はポケベルにメッセージを送るために、学校の電話コーナーに長蛇の列を作っていた。そのポケベルも次なる「P H S」(当時は略してピッチと呼んでいた。)にとって変わられ、数年で「携帯電話」が主流となっていった。また、その数年後にはApple社のiPhoneがスマートフォンの走りとして、日本を席巻した。と、私個人の人生を振り返ってみても、身の回りの特に情報に関する分野の進歩は凄まじいものがある。昨今においては、GAFAMによる巨大テック企業の登場、それに変わることが期待されているChatGPTなどについてもその一例である。

また、日本の一例として総務省が作成している『令和3年度版 情報通信白書』の中の「企業におけるクラウドサービスの利用動向」(表1)を見ると、クラウドサービスを利用している企業が2016年から2020年の4年間で約20%近くも伸びていることが分かる。多くの人が民間企業と何かしらのつながりがあることを考えると、テクノロジーが社会を変容させている一例と言える。

また、テクノロジーによる変容だけでなく、人々の「意識」についても大きく変化している。例えば、本国会で議論されている「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(以下「LGBT理解推進法案」)についての議論にも現れているように、「多様性」や「ダイバーシティ」などがかつてよりかなり重視されるようになってきた。

 あくまでもこれは私個人が主観的に感じている「社会の変容」の一側面でしかなく、実社会では細かい部分でもっと大きく変化しているであろう。

視点を世界に移しても同じようなことが言えるようである。

文部科学省の官僚である白井俊氏の著書である『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』(ミネルヴァ書房)に、「2030年は、より“VUCA”な時代となることが予想される」とOECDのEducation2030プロジェクトがとらえていることを紹介している。”VUCA“(「ブカ」もしくは「ブーカ」)とは、変動性(V: volatility),不確実性(U: uncertainty),複雑性(C: complexity),曖昧性(A: ambiguity)の頭文字をとったもので、加速度的に社会が変化し(変動性)、将来何が起こるか予測することが難しく(不確実性)、移民の増加などで社会が複雑化し解決策を見つけることがより困難になり(複雑性)、物事の意味が曖昧になり意思決定が難しく(曖昧性)なってゆく社会を表しているようである。

例えば、昨今のコロナ禍による社会の変容は、それ以前に誰が予想できたことか。また、ウクライナへのロシアの侵攻の予想と世界への影響を誰が予測できたのか。これらの2つの例がもたらしている社会の変容(現在進行形であるので、今も変容している最中であろう)をもってしても「“VUCA”な時代」と言えるであろう。

 では、このような「“VUCA”な時代」に我々にはどのような力が求められているのだろうか。
(次回に続く)

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