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【18限目】3年から始まる毛筆授業

2020年7月30日

私は、5年前に初めて専科で書写の授業を担当するようになりました。

以前に書道教室に通ったことはありましたが、担当するにあたり、すこしでも良い教えが出来たらとの思いでもう一度書道教室に通うことにしました。(初めての専科で不安な気持ちでいたときに、夫からの進めもあり、通うことにしました)

3年生になって初めての毛筆の授業が始まります。習っている子もいれば、筆を持つのも初めてという子もいます。

授業が始まるまでに、子どもが必要なものや、習字授業での約束事などをプリントにして配っておきました。


みんなの準備物

〇 習字セット
〇 新聞紙を3~4枚を4分の1に切って、縦方向にし上をホッチキスで止めて作ります。(作品がよごれなように挟むためのも)
〇 ペットボトル。(使った筆を洗うためのもの。)


習字授業の約束事

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〇 授業前の休み時間に、習字の道具のセット(右の図ように机に並べる)とペットボトルに水を3分の2ぐらい入れてから遊びに行く)
〇1回目の授業で、習字セットの中身の名前と使い方を説明し、理解させます。


私が準備するもの

1回目の授業が始まるまでに、一人一人に朱書きで学年・名前のお手本を書いてラミネーとして全員に配っておきます。

〇 お手本(黒板に貼るもの)
〇 練習用紙(わら半紙練習する字を白抜きにしたもの)
〇 ビニールシート2枚(ペットボトルの水を捨てるためのバケツの下に敷く。)
〇 濡れた雑巾5~6枚・乾いたタオル1枚(『魔法の雑巾』と、呼ぶ。)


(魔法の雑巾)

雑巾はトラブルが起こったときに使うもの。最初は墨をこぼしたり、水をこぼしたり、筆を落として床を汚してしまったりと、色々なトラブルがありますが、そんな時は、叱ったりせずに、魔法の雑巾で拭くように言います。

そんなことを繰り返しているうちに、子どもたちは、「先生。魔法の雑巾を貸してください。」と、言って墨を拭きます。

トラブルの度にみんなが大騒ぎをしていたら授業が進まないので、その子だけが自分で対応できるように指導するが大切です。拭き終わったら返しに来てくれます。

魔法の雑巾は毎日家に持ち帰り、洗濯し一晩中消毒して、次の日に消毒薬を洗って持っていくようにしています。


授業の進め方

◇黒板にその日に学習する字を貼り、書くときに気を付けるところ、筆圧、バランス、中心をそろえることや、今日のめあてなどを話してから、黒板に私が書いて説明をします。

◇練習用紙に印刷した字をなぞり、形、大きさ、太さなどを確認します。

◇清書は2回で、半紙は2回に分けて配ります。1回目の半紙を配る。名前を書くときに清書用紙が汚れないように保護紙(半紙)も配ります。そして、「足ペタ・ピン・トン、さあ書こう」で書きます。

◇1回目の清書が終ったら、前に出して黒板に貼ってもいいよという人は、まえの黒板に私が貼ります。全員が書いた頃に、黒板に貼った作品について、みんなで鑑賞します。そこで課題が見つかったり、いい所を褒めたり、お手本どおりに書けていはいないけれど味のある字も褒めます。お友達の作品から、共通理解し、自分が気をつけたいことを理解して、2回目の清書に入ります。

◇2回目の課題は、①姿勢のチェック、②自分のめあてを決める、③お手本をよく見て書く、④名前を丁寧に書くです。

◇終わった人から、それぞれの班ごとに、提出用の新聞のファイルに良い方の作品を挟んでいきます。そして片付けに入ります。

◇練習用紙・提出しなかった半紙・保護紙を使ってペットボトルの水で洗った大筆を拭いて、その紙ですずりも拭きます。(小筆は洗わず拭くだけ)

◇ペットボトルの水は前のバケツに捨てます。筆とすずりを拭いた紙は前にぶら下げてあるビニル袋に捨てます。すずりに墨が多く残っている人はすずりから私が墨をすって回ります。吸ってほしい人は手を挙げて知らせてくれます。(すずりをもって捨てに来ることは禁止です。)

◇後片付けが終った人は、「終わります!」と、言って、次の授業の準備をして、静かに教室から出ていきます。チャイムが鳴っていない時は本などを読んで、静かに待ちます。

◇授業が終わったら、書写係がバケツの水を捨てたり、早く終わった子がビニルの袋のごみを捨てに行ったり、黒板に貼ってあるものを片付けてくれます。一学期が終わるころには、何も言わなくても、教室へ行くとバケツが用意されています。練習用紙を配ってくれる子。黒板にお手本などを貼ってくれる子。バケツの下にシートを引いてくれる子。ゴミ用のビニル袋を教卓の前にぶら下げてくれる子たちに助けられて授業の準備が終ります。

何をするかが分かっていると、子どもたちは、自ら行動してくれるんだなあと思いました。


初めての書写の時間から一年目3学期の最後の教材は「水」という字で、横画・縦画・折れ・跳ね・左はらい・右はらいとすべての要素が入ったものです。この字を書きあげることで1年のまとめとなります。

1年が経つと、話もよく聞いて書写の時間を楽しんでくれ、筆の使い方も、字も上手になり、自分で準備や後片付けもはやくできるようになりました。

子どもは学びたい、知りたい、出来るようになりたいという気持ちを持っています。その気持ちを満足させてあげられる一つとして教師側の準備が大切だということを、子どもの成長が良くわかる書写の授業を通して学びました。


担任の先生が、習字を初めて学ぶ3年生の授業をする時の準備は大変だと思いますが、専科で、習字の授業の準備、進め方、約束事を指導しておくと、4年生~6年生の担任の先生の書写の時間にも引き継がれていくと思いました。

昨年度の書初め展に向けて、3年生~6年生まで各クラス4時間の習字の授業を持たせてもらって、出品する作品を仕上げましたが、その4時間は、3年生で指導したことが、子どもたちに引き継がれていました。

改めて3年生は、専科による書写授業が必要だと思いました。

書道は、心静かに、いい姿勢で、ゆったりとした気持ちで、作品をつくる時間だということを大切にしました。


【編集担当より】

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「バラとオレンジとワイン」

幼いころ、母親は家で授業の用意をするのを見ながら、「なんでこんなに遅くまで家で仕事をしているのだろう?」と興味深く見ていたのを思い出しました。書道の授業についての記事を読むと、ここまで想定して1つの授業を準備するのは、それは時間がかかることだなと改めて思いました。

学校の授業というのは、専門外であまり考えたことがなかったですが、同じカリキュラムでも教える先生によって授業の質は変わるのだろうなと思いました。以前に研修コンサルタントをしていた時に、上司の方によく事前準備についてご指導いただきました。やはり段取りが何事も大事ですね。

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