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小説

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掌編小説 夢三編

掌編小説 夢三編

 今はなき「書き出し.me」というサイトから頂いた書き出しを題材に、拙いながらも書いた過去の作品です。少し手直ししました。
 頂いた書き出しは「あのー、すいません……この右から二番目にある『夢』っていくらで買えますか?」です。

1.掘り出された夢(青春)
「あのー、すいません……この右から二番目にある『夢』っていくらで買えますか?」
 俺がなんの気なしに古本屋に立ち寄ったのは、ほんの気まぐれだっ

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掌編小説 ひどい男

掌編小説 ひどい男

 遠ざかれば遠ざかるほど、過去は輝いて見える。
 でも、もう俺は忘れてしまった、あいつのフルネームなんて。わざわざ覚えておいてやる義理などないのだ。
 あだ名なら刻銘に覚えている。俺はかつて、あいつのことを「ルゥト」と呼んで、朝も昼も夜も一緒に過ごしていた。虫取りで競争して双方で自慢し、畑仕事があれば鍬を持って駆けつけ、片方が叱られて落ち込んでいたら追いかけて相談に乗る。綺麗な巻き毛の茶髪に琥珀色

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