【建築家を志した建築】ジョージ・ナカシマ設計のカトリック桂教会
建築行脚
カトリック桂教会/京都府/1965年/家具デザイナーによる教会の設計
今から24年前、大学1回生の春に
建築の右も左もわからないときに訪れた僕の建築の原風景。
建築技師としてではなく建築家として建築に携わりたいと
思った瞬間でした。
そしていま一度、訪れる時ではないかという思いに駆られて
ご好意に甘えて見学させていただきました。
HPシェルによる印象的な空間の創出
家具デザイナーとして知られるジョージ・ナカシマの日本で唯一の建築。1965年竣工で50年以上たった今なお佇むその姿は
よい年の取り方をした建築の理想形に思えてなりません。
ウォルナットなど木のイメージのあるナカシマですが、
意外や鉄筋コンクリート造。
しかも3次元のHPシェル(双曲線外殻構造)構造の屋根で
大胆なフォルム。
ですが、その佇まいは実に街になじんだ
奇抜でも無難でもないいい塩梅です。
内外ともにコンクリート打放しの仕上げですが、
随所に現れる木製家具や建具により温かみを感じるデザインです。
円形の開口部に長方形の障子枠がはまり構成される窓は
和洋折衷の表情を生み出し、
唯一無二の空間になり得る重要なコンテンツとなっています。
障子の扱い方は窓の可能性を感じさせてくれ、
これは学生時代以降僕の設計に大いに影響しています。
HPシェルによる内外空間の合理的なフォルムは
教会たる神秘的かつ何事も受け入れてくれそうな
おおらかさを演出しています。
何人も救おうとする教会の本来の目的を体現した
建築なのではないでしょうか?
和洋折衷デザインの取り入れ方
建築を学びだした学生時代に初めて見学して衝撃を受けました。
「教会だから、洋風」みたいな先入観。
別に「洋風らしさ」である必要はありません。
主題は「居心地の良さ」であったり「教会の目的の達成」です。
ですから、リビングに和風要素を入れてもいいわけです。
そんなことを思わせてくれた教材的な建築でした。
【建築行脚】
歴史に学ぶ建築行脚
自分以外の設計を体感し、つぶさに観察し分析する。
考えを図面に置きかえて提案する。
アイデアに寸法を与えるのが職能。
経験の使い回しだけではたかが知れています。
建築のアイデアを得るためにしていることは、
建築を見に行ったり、スケッチしたり、実測したり。
それらを自分の武器にして図面に向き合っています。
そんな建築を巡る旅のレポートです。
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