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「フリー」のビジネスモデルはITでも大半は失敗。製造業で成功したら神レベル?

「フリー」という本を読んだことがある人、もしくは「ロングテール」という言葉を知っている人は多いのではないだろうか。いずれもぼくの愛読書の一つでどちらもクリス・アンダーソンという人が書いた本だ。

今回はそんなクリス・アンダーソンさんが提唱したフリーの概念、いわゆるフリーミアム戦略について少し考えてみたい。

■著者について少し・・・

クリス・アンダーソンと言えばWIREDの編集者を10年ほどやっていたことで有名だ。ロングテールという、いわゆるアマゾンなどニッチなニーズに対してカバーできるようなビジネスを示す言葉を2004年にWIREDで提唱し、ロングテールという本も書いた人物。その前はネイチャー、サイエンス、エコノミストなどの雑誌で働いていた人物だ。

そんな彼が2009年に発表したのがフリーといういわゆる無料をベースにした戦略について書いた著書だ。

ちなみに無料モデルに関する話に入る前に、彼は今何をやっているか・・・

彼は3D ROBOTICSという会社の創業者でCEOだ。もともと2015年くらいに世界のドローン三強メーカといわれた会社で、DJI、Parrot、そして3D Roboticsの3社が世界をリードしていた。当時は北米最高峰のドローン企業は3D Roboticsと言われていたが、ハード面の価格競争などについていけず、2017年には人員整理を行い風前の灯火状態まで売れ行きが落ち、競合他社の技術が急速に進化しているということに気づいていなかった。今は3D Robotics社はドローンを作るハードの会社ではなく、ソフトを作成する会社となって事業を続けているが、成功しているとは言えない状況にある。

彼のドローン会社での成否はさておき、無料ビジネスの概念について提唱をしてくれたことについては世の中はかなり影響を受けているし、その価値が下がることはないのでさっそく内容について少し書いてみる。

■ 「フリー」と聞いてどういった無料のビジネスを思いつくだろうか

今ではすっかり定着した無料を起点とするビジネス。「なんでこれが無料なの?」と思うようなサービスが世の中にはいろいろあるので、ビジネスモデルについて考えるはとても楽しいことだ。例えばビジネスモデル2.0図鑑という本を読まずに自分で考えて、仮説の答え合わせを同著を読んで行うのも趣味の一つだ。

例えばどんなサービスがあるか。

例えばYoutubeは外せないだろう。無料で様々な動画が見れる。無料の携帯ゲームもそうだ。無料でなんであれだけ遊ぶことができるのか。

身近なアナログのところでいえば無料ティッシュもそう。本来お金を払わないと買えないティッシュを無料でもらうことができる。

あとはクレジットカードもそう。お金をある意味翌月以降に支払いを先延ばしする権利を得ているのに特に費用は無料。

Twitter、Dropbox、Evernote、gmailなどあらゆる無料なサービスで世の中は回っているといっても過言ではない(このnoteだってそう!)。

この無料を軸としたビジネスというのはもともとはとあるベンチャー投資家が無料(Free)と有料(Premium)を掛け合わせた造語として”Freemium(フリーミアム”という言葉を作ったとされており、それを広めたのが冒頭のクリス・アンダーソンだといわれている。この無料と有料を組み合わせたフリーミアムモデルは「フリー」の概念の1つのパターンとして考えられる。

■ 「フリー」モデルは大きくわけると4パターン

このように世の中に数多くあるフリーミアムモデルのビジネスだが、大別すると4つのパターンに分けられる。それぞれごく簡単に触れておきたい。

1)一部利用者負担型

これはもっとも多いパターンかもしれないが、基本サービスは無料で提供して、一部のヘビーユーザーといえる有料会員からの利益で儲けるというスタイル。

例えばスマホゲームでいえば無料でプレイできるが、一部のヘビーユーザーは強力な武器やアイテムを有料で購入したり、ガチャガチャを引くための回数券を有料で買ったり、制限されたプレイ回数を増やすためなどのために課金をしてプレイしている。

そういったプレイヤーからの収益でゲーム全体のコストを回収している場合が想像しやすい(LINE、GREE、モバゲーなど)。

他にもEvernoteやDropboxもこのパターン。Adobe PDFも無料で閲覧はできるが、編集は有料ソフトを販売していたりするのでこのモデルに当てはまる。

この一部利用者負担型というのが前述のフリーミアムモデルといえる。

2)ボランティア型

これはちょっとイメージがわきずらいかもしれないが、口コミや評価、記事などをタダで公開する一方、アクセスを稼いでトラフィック広告や、実際にその口コミを頼りに店舗に店に足を運んでもらった場合にその店舗から収益を得るというスタイルのビジネスのことをさす。

イメージしやすいのが食べログ。ボランティア的な評価を集めることでそのサイトを通じて利用者がそのお店を知ることになり、そのお店の予約をしてクーポンを付けて誘導することでお店側はそのサービスにお金を払っている。

価格コムもこの同じパターンといえる。価格コムもサイトからその店に誘導することで利益を得るようなサービスになっている。

3)第三者補助型

名前の付け方がちょっとわかりづらいが、利益を利用者からではなく、第三者から得るというパターン。どういうことかというと、利用者は一切そのサービスの料金を支払わないが、サービスを提供している会社は別の利益を得るグループからお金を回収するというモデルである。

代表例が民放。NHKと異なりぼくらは無料で民放を見ることができる。誰がどう見てもその番組はスポンサーが経費を負担しているモデルであるのは明らかだが、ぼくら視聴者からではなくスポンサーから利益を得ているのがこの第三者補助型というパターンに当てはまる。スポンサーは番組に自社の広告を流すことで利益が得られるので費用を支払っている。

4)内部補助型

最後が内部補助型。これも英語の直訳なので言葉がちょっとわかりずらい面があるが難しいことはない。単純にサービスを提供する側が自社でコストをかけてお客さんに来てもらう販促活動といってもいい。

例えばビラを配っても受け取ってもらえないので、ティッシュにして受け取ってもらうことで多くの人にお店の存在を知ってもらって、そのうち何%かがお店に実際にきてもらえるようにする。

Amazonも配送料を無料にしたことで爆発的に成長を遂げたといっても過言ではない。配送料はAmazonが負担をしているからぼくらは無料の配送料でしかも安い価格の商品(細かく言えば実際は店舗より高かったりする場合も多いが)を得ていることになる。

家まですぐ届けてくれるというベネフィットを消費者に提供することで圧倒的な量を稼ぐということを実現しているのがこのモデルの特徴といえる。

■ 「フリー」モデルのポイントはITサービスの特徴を最大限生かしているところ

このようにフリーミアムに限らずすべての「フリー」をモデルとしたビジネスはぼくらの生活に溶け込んでいて、もはやそれなしでは成り立たない状況になっている。

昔からあるものでいえば「Buy one get 1 free」というような1個買えば1個無料というレベルのものしかなかったし、だいたい利用料を払わなければどんなサービスだって受けられなかった。昔の世代の人からしたら、「無料でこんなことができるなんでおかしい」と懐疑的に感じるようなビジネスで世の中はあふれている。

昔の人がなじみがないのもそのはず。このフリーについてはITが発達する以前は考えられなかったといえる。

なぜならば、デジタルコンテンツやITサービスを消費者に提供するためのコストが「ものすごく低いかゼロ」という特徴があるから成り立っているからだ。

例えば本を出版するとしたら印刷して製本して本屋に置かなければならずそこに係るあらゆる会社や人の費用を賄う必要があるが、電子書籍でボタン一つで出版すればデジタルコンテンツであればコストは圧倒的にかからない。このようにデジタルがなせる業であるので、昔の世代には思いつきもしないサービスだったといえる。

■ メーカー・製造業で「フリー」モデルは実現できるのか

デジタルのなせる業と書いたものの、正直デジタルの世界でもほとんどが失敗してるという話を聞いたことがある。

あのEvernoteも最初にサービスがではじめたころからぼくは使っているが、運転資金が足りなくなるという話が何度かあったし、実際にどうやってマネタイズするのかというところで「誰がお金を払うのか」という論評が多かった気がする。

そんなEvernoteも生活に欠かせない存在になることができたことで現在は多くの有料プレミアムユーザーを得ることができている。

今では9-10人に1人くらいは有料プランに加入している状態だ。面白い話だが、1か月以内に有料プランに移行するユーザーは1%にも満たないが、2年使ったユーザーが有料プランに移行する確率は10%を超えるという話がある。

このように長い蓄積が、消費者にサービスから離れられないような状況を作り、より便利にサービスを使いたいという動機から有料プランに移行するまで待たなければならないのだ。

フリーミアムモデルは「ゲームの課金以外は無理」という意見もあるようで、無料をベースにしたデジタルの世界でも相当難しいモデルとされているのだ。

とにかく儲かるまで時間がかかるし、長い間、資金を提供(ファンディング)してくれる投資家がいないとうまくいかないし、多くのITサービスはそれ自体が赤字であることもとても多い。

—— 〻 ——

このようにデジタルでも相当難しいモデルを製造業、メーカーで実現することはできるか。残念ながら大成功を収めている会社というのはなかなか出てきていない。

例えば無料のはがきサービスを見たことがある人もいるのではないか。無料の広告入りのTシャツを提供している会社もある。こういった会社は主に広告を収益源としたモデルといえるので一部ではこういったものがあるのはあるが、大々的に成功した会社というのはあまり見当たらない。

他にも内部補助型に該当するようなものはある。「赤字か無料」で一つの目玉製品を提供して他の物を買ってそこで利益を得るような手法はスーパーや八百屋、アパレルなどでも見受けられる(赤字というのは現実的には無料ではないのでフリーにはあたらないが)。

このようにフリーを起点としたビジネスでもし製造業で成功する会社が現れたらその会社はとてつもない成長を遂げる可能性もある。

暇なとき少し考えてみようかな。

keiky.


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