インタビューライター必見。取材を成功させる6ステップ
大昔に一度だけ開催したセミナー「取材を基本から学びたいライターのための明日から使えるインタビュー術セミナー」で使用した資料を基にした記事です。
このままお蔵入りするのももったいない気がしたので、公開することにしました。
ライターだけでなく、社内報のために社員にインタビューをする広報や、導入事例記事のために顧客にインタビューをする営業などにも活用できると思います。
メルマガ登録でこの記事のPDF版をダウンロードできます。
noteには載せていない、実体験に基づくお役立ちコラムもあるのでぜひこちらからご登録ください。
PDFで22ページなので、印刷して手元に置いておくと便利です。
『集客につながるランディングページとキャッチコピーの書き方』(47ページ)もダウンロードできます。
では、本題に入ります。
※取材を受ける形態は大きく分けて2つあります。
① 制作会社や編集プロダクションなどがコンセプトづくりや取材日の調整を行い、ライターが取材・執筆を行う
②ライターと取材対象が直接やりとりし、コンセプトづくりや日程調整もすべて行う
ライター初心者の場合は①ケースが多いので、こちらを想定して進めます。
Step1 「取材はむずかしい」という思いこみを捨てる
■取材とは?
取材とは、文字通り「材」料を「取」ってくること。
料理の買い物と同じです。
一流のシェフでも鶏肉がなければチキンカレーは作れないのと同様に、文章力があるライターでも取材力が足りないと、良い記事は書けません。
■取材に必要なのは、センスではなくスキル
「初対面の人と話すのが苦手」「コミュニケーション力が低い」と取材を怖がる方もいますが、取材はあくまでビジネスの会話です。
お笑い芸人がプライベートでも面白いとは限らないように、ライターも普段は人見知りでも大丈夫。仕事上の情報収集ですので、決まった枠組みの中で必要なことを聞き出せればOKです。
■取材を成功させるには?
とにかく、事前準備がなにより大切!
たとえば、作る料理が決まっていれば買い物はスムーズです。
逆に、決まっていなければスーパーの中をウロウロすることになります。
「取材はむずかしい、できない」と悩んでいるのは、まさにこの状態です。
だから取材も、どんな記事(料理)を作るためにどんな材料が必要かを事前に把握して準備しておけば大丈夫です。
では何を聞くかをどうやって決めていけばいいのでしょうか?
それについて解説してきます。
Step2 記事の目的を明確にする
■事前準備でいちばん大切なこと
「誰に」「何を」「何のために」読者に伝える記事なのかを取材前にきっちり把握しましょう。
ここが不明瞭なまま取材に臨んでしまうと的外れな質問をしてしまい、記事のクオリティにも悪影響が出てしまいます。
たとえば、「子どもが5歳のときに起業し、3年で年商1億を達成した女性社長」を取材するとしましょう。
取材相手は同じでも、記事の目的によって聞く内容は大きく異なります。
「どんな記事に仕上げるか」というゴールを決めておくと、効率よく準備を進められます。
※制作会社や編集プロダクションなどが、ここをはっきり教えてくれない(教えるのを忘れている)場合があります。
必ずライター側から質問し、クリアにしておきましょう。
そうしないと、後から何度も書き直しになる可能性があります。
Step3 取材対象について情報収集をする
取材の成否は、準備で9割決まります。相手を知らないまま取材を行うのは、丸腰で敵陣に乗りこむようなもの。事前調査の方法を身につけ、心にゆとりを持って取材に臨みましょう。
※一般企業を取材することを想定して話を進めますが、個人や公的機関などを取材するときも基本は同じです。
■オフィシャルのホームページ・ブログ
基本的には隅から隅まで目を通します。量が多くて読み切れないときは、代表者あいさつ、プロフィール、会社概要、商品紹介のページに目を通し、どんな人がどんな商品を売っている会社なのかを把握します。
次に、取材のテーマに関係の深いところを重点的に読みこんでいきます。
たとえば求人広告の取材なら採用ページを、導入事例の取材なら商品紹介ページを、という具合です。
■企業名・代表者の個人名で検索
他媒体の取材記事などがヒットする場合もあるため、非常に参考になります。
オフィシャルサイトを見て満足してしまうケースが多いので、忘れずに行いましょう。
【失敗事例】
ITベンチャー企業の取材開始15分前に代表者の個人名で検索すると、元ヒルズ族でウィキペディアに名前が載っている大物であることが判明。事前に調べておけば、もっと突っ込んだインタビューができたはず……。
【成功事例】
代表者の個人名で検索すると、同じテーマで複数の媒体から取材を受けていることが判明。読みこむとどこも似たり寄ったりの内容だったので、掲載媒体に合った質問を用意し、オリジナル性の高い記事になった。
■同業・競合のホームページ
他社と比較することで、取材対象の強みやオリジナリティが見えてきます。業界での立ち位置をなんとなくでもいいので把握しておくと、取材に役立ちます。
オフィシャルホームページを制作するための取材のときは、そもそも自社サイトがありません。
そんなときも、同業・競合のホームページを読みこむことでイメージがつきやすくなります。
■転職・就職サイト
なじみのない業種や職種を取材する場合、オフィシャルホームページを読んでも頭に入ってこないことがよくありますが、そんなときは転職・就職サイトの解説ページがおすすめ。未経験者に向けてかみ砕いて解説されているため理解しやすいからです。
「システムエンジニアとは」など、「○○とは」で検索してみましょう。
また、転職・就職サイト(リクナビなど)に求人広告が掲載されている場合は必ず目を通します。会社概要や仕事内容がコンパクトにまとまっているので非常に役立ちます。
■SNS
オフィシャルのSNSには、ホームページには載っていない最新情報が載っている場合があるので必ずチェックします。
さらに取材対象者の個人名でも検索してみます。本音がポロリと書かれていることもあり、人柄を知るのに役立ちます。
ただし同姓同名が多数いて取材対象者を特定できなかったり、友達以外に投稿を公開していないケースも多いです。
■動画
公式YouTubeチャンネルがあるときは、可能であれば全部、数が多いときは記事のテーマに関係が深いものをピックアップして視聴します。
社内の雰囲気や仕事の様子もわかり、文字や写真からは得られない情報が満載です。
公式YouTubeチャンネルがなくても、同業や競合の動画を視聴することで、業界や業種への理解が深まります。
■書籍
書籍のメリットは、情報を体系的に把握できること。インターネットには断片的な情報しかなく、書籍を数冊読んで業界の全体像をやっとつかめたことがありました。
取材先の代表者が本を出版している場合も、読んでおくことをおすすめします。
Step4 想定質問をつくる
事前調査をしていても、いざ本番になると頭が真っ白になってしまうこともあります。特に初心者のうちは想定質問を用意しておくと安心です。
■質問をつくるときの注意点
思いつくまま作成するのではなく、記事の仕上がりイメージから逆算します。
Step2の「記事の目的を明確にする」でお伝えしたように、「誰に」「何を」「何のために」の3つを必ず頭の片隅に置いておきましょう。
取材記事には大きく分けて2つのパターンがあります。
① 読み物としての役割が大きいもの(企業のユニークな取り組み、芸能人取材など)
② 数値的な結果が求められるもの(求人広告の社員インタビュー、物販のお客様の声など)
どちらの取材でも、基本的に過去・現在・未来をおさえておけば8割方OKです。
質問のパターンは無限大で、「これだけ聞いておけばOK」という質問はありませんが、以下の4つを意識するとつくりやすいです。
Why(なぜ)
What(何を)
How(どんなふうに)
When(いつ)
想定質問作成の実例1
ワーキングマザー向けサイトの取材。
仕事と子育ての両立を奨励する新興保険会社の会長にインタビューをする
step2でお伝えしたように、「誰に」「何を」「何のために」をまずは明確にします。
誰に?
ワーキングマザー
何を?
仕事と家庭の両立を支援する取り組みを
何のために?
家庭と仕事の両立が当たり前と考える企業の存在を伝え、ワーキングマザーに自信や誇りを持ってもらうため
質問は時系列でつくるとわかりやすいです。
「Why」「What」「How」「When」を意識して作成してみましょう。
想定質問例
この質問をもとに作成した記事です。
【ライフネット生命 代表取締役会長 出口治明さん】
「男は仕事、女は家庭」の時代を生きた団塊世代の男性が、育児と両立できる会社を創った理由とは?
想定質問作成の実例2
歯科衛生士専門求人誌の取材。
「先輩社員の声」として若手社員をインタビューする
誰に?
歯科衛生士学校の学生
転職を考えている第二新卒の学生
何を?
仕事の楽しさややりがい
何のために?
人材採用
求人広告や物販などの結果が求められる取材記事の場合、過去・現在・未来に加えて次の質問を加えます
就職や購入をする前、どんなことが心配だったか
実際に就職や購入をした後、心配事はどう解消されたか
誰もが就職や買い物で失敗したくないと思っており、「ブラック企業ではないか」「効果が本当にあるのか」など、何かしら心配をして購入や応募をためらいます。
その懸念事項をあらかじめ解決しておくことで、応募や購入にスムーズにつなげることができます。
こんなインタビュー記事を見たことがありませんか?
この場合、「また同じ結果になるのでは」が、購入前の心配事です。同じ理由から、購入に踏み切れない人はたくさんいるはずです。
しかし「一晩でお肌がぷるぷるに! 鏡を見るのが楽しくなりました」という声を紹介することで、購入前の心配事が現実にならなかったと伝えられます。
こうした事例を載せると懸念事項が解消され、購入への後押しをすることができます。
これを念頭に置き、歯科衛生士求人用インタビュー記事の質問を用意していきましょう。
過去、現在、未来の時系列で、「Why」「What」「When」「How」を意識して作成します。
想定質問例
Step5取材本番のコミュニケーション術
準備ができたらいよいよ取材に臨みます。ここでは、初心者によくある失敗と対処方法を紹介します。
■取材はアンケート調査にあらず
取材初心者にありがちな失敗が、想定質問を上から順に聞いてしまい、アンケート調査のような取材になってしまうこと。
話がブツブツ途切れてしまい、表面的な情報しか集められなくなってしまいます。
先ほどの歯科衛生士の求人用の想定質問をもとに、具体的に解説していきます。
では、取材を開始します。
ここまでは順調ですね。
では次にいってみましょう。
教育体制が話題に上がっており、教育体制は求職者にとって職場を選ぶ重要なポイントだと推察できます。
ところが想定質問にこだわり「3どんな仕事を担当しているか」を聞いてしまうと話題が飛ぶだけでなく、教育体制について聞くチャンスを逃してしまいます。
さらに「ちゃんと教えてもらえなかったらどうしよう」と「7入社前、どんなことが心配だったか」にも触れているので、型通り順番に質問をしていったら「さっき話したのに。聞いていなかったのかな」と不信感を持たれてしまう可能性もあります。
こうした事態をふせぐため、想定質問とその順番にこだわってはいけません。
話の流れに合わせて「用意した質問の中から適切なものを選んで聞く」、もしくは「回答の中から質問をつくる」が、正しい取材の進め方になります。
この場合、想定質問の中に教育に関するものはないので、その場で質問をつくっていきます。
ここで注意すべき点は、「新人教育のシステムについて教えてください」などの曖昧な聞き方はなるべく避けること。どう答えていいかわからず相手を困らせたり、「良いです」などの漠然とした回答しか得られない可能性が高いからです。
回答をもとに、より具体的な質問をつくっていきましょう。
取材前に想定質問をすべてリストアップできることはまれです。むしろ的外れなときのほうが多いくらいです。
たとえば真空包装機を導入した企業を取材したとき、「従来品と比べてどれだけコストを削減できたか」を詳しく聞こうと準備をしていたのですが、真空包装器機を導入したのが初めてで、比較のしようがなかったことがありました。
このときも、回答の中から質問をつくって乗り切りました。
慣れるまでは、回答の中から質問をつくるのは難しいかもしれません。でもできるようになれば、取材初心者は卒業です。
■想定質問はどう使う?
その場で質問をつくるのなら想定質問が無駄になるのかと思うかもしれませんが、そうではありません。
想定質問がまったくの的外れでなければ、「チェックリスト」として活用できます。
取材に慣れてくるとどんどん回答の中から質問をつくるようになり、想定していた質問以外の内容もたくさんでてきます。
それこそが取材の醍醐味なのですが、脱線しすぎや聞き漏れのリスクも発生します。
そこで役立つのが想定質問リストです。取材中はリストをチラチラ見ながら趣旨から大幅に逸脱していないかを確認し、最後にもう一度リストを見て聞いていない質問をすれば完了です。
本番中に回答の中から質問をつくるのは、慣れるまでは難しいと思います。でも場数を踏めば少しずつできるようになります。
Step6取材前日・当日の準備とマナー
万全の状態で取材に臨むためには、質問以外にも色々と準備しておくことが大切です。
■服装、持ち物、PCのトラブル対策などは前日までに
基本的なことですが、シャツのアイロンがけや靴磨きは前日までに終わらせておきます。
私は慌てて当日に靴を磨こうとして靴墨を玄関にこぼし、出発前から気持ちが焦ってしまったことがあります。
Zoomなどオンライン取材の場合は、音声が出ないなどのトラブル発生時の対応を調べておき、落ち着いて対処できるようにしておきます。
レコーダーを使う場合は、電池残量と容量を確認。取材途中で使えなくならないように注意しましょう。予備の電池を用意しておくと安心です。
私は取材直前に電池残量が少ないのに気づき、編集者に電池を恵んでもらったことがあります。
■取材前と取材後にはひと声かける
本題に入る前に、時間をつくってくれたことに対してお礼を言い、取材の趣旨を簡単に説明しておくとスムーズです。
特に企業取材で一般社員を取材する場合、取材の趣旨が伝わっておらず、「上司に行けと言われたからとりあえず来た」というケースも少なくありません。
何のための取材なのかが共有できていないと話が引き出せないので、必ず伝えるようにしましょう。
取材開始前には、「会話を録音してもいいですか?」と許可をとることをおすすめします。
もし自分の会話が無断で録音されたら、良い気分はしないですよね。さらに、ひとことかける習慣をつけることで、録音し忘れを防ぐこともできます。
私は電源オフのレコーダーをテーブルに置いたまま取材を進めてしまい、終了後に青ざめたことがあります。
取材後にはオフレコ事項の確認をします。
会話の流れで話したけれど、記事にしてほしくない内容があるかもしれません。
実際に「夫の職業については書かないで」「セミナーの詳細は伏せて」などのリクエストを受けたことがあります。
もし確認していなかったら原稿チェックの際に削除依頼が入り、書き直しが必要になっていたかもしれません。
取材前後のちょっとした声がけで、スムーズに効率よく取材を進めることができます。最初のうちは余裕がないかもしれませんが、可能な限り意識してみてください。
おわりに
私はかつてコールセンターで働いていたのですが、新人に「電話対応のコツはありますか?」とよく聞かれました。
そのときの返答はいつも、「慣れ。冷や汗をかいた分だけ上達する」。
取材も同じだと思います。始まるまで何が起きるかわかりません。取材歴10年以上でも、いまだに冷や汗をかくことがあります。
とはいえ、知識ゼロで何の準備をせずに取材をしていては、いつまで経っても上達しないですし、取材対象者にも失礼です。
この記事を参考に準備をして、少しでも自信を持って取材に臨んでいただけたら嬉しいです。
メルマガ登録でこの記事のPDF版をダウンロードできます。
noteには載せていない、実体験に基づくお役立ちコラムもあるのでぜひこちらからご登録ください。
PDFで22ページなので、印刷して手元に置いておくと便利です。
『集客につながるランディングページとキャッチコピーの書き方』(47ページ)もダウンロードできます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?