JAMPの試行錯誤①:ビジョンとミッションについて
「JAMPの試行錯誤⓪:はじめに」で書かせて頂いた通り、全6回の「JAMPの試行錯誤」では、ステークホルダーの皆さまとオープンな「試行錯誤」を行なわせて頂くため、JAMPプラットフォームのあり方や目指す方向について、私が現在考えていることを様々な切り口で共有させて頂きます。
今回の「JAMPの試行錯誤①」では、JAMPのビジョンとミッションについて、そもそもそれらの位置づけに対する考え方も含めて、私の考えるところをお話させて頂きたいと思います。
ビジョン・ミッションに対する考え方
ビジョン・ミッションについては、創業当初から会社組織の根幹であると位置づけており、様々なステークホルダーとの意見交換をしながら、それらの言語化に意識的に取り組んできました。
ビジョン・ミッションが組織の根幹として自律的に機能するまで確立できていないと、どうしても目線が低くなってしまい、本来は手段に過ぎないサービスを如何に成長させるかということにとらわれがちになってしまいます。また、主力とするサービスが伸び悩んだときに、会社組織としての方向感や動きがぶれてしまうことにもなりかねません。
また、会社とは何ぞやということを突き詰めていくと、その本質は同じ目的を共有する人間の集団であり、法人格やその中での法的関係性は付加的なものに過ぎないというのが私の理解です。特に、専門性を活かした柔軟な働きかたを目指す私たちJAMPの場合、そのカタチは伝統的な会社というよりも、金融専門人材コミュニティという方がより正確かもしれません。
であるならば、多数の金融専門人材が集う目的は何なのか。社会的にどんな意味あいを持つ集団なのか。そのコアをしっかりと定め、言語化しなければ、そのつながりは非常に不安定なものになり、会社のカタチすら維持することもできません。別の言い方をすると、ビジョン・ミッションという「組織資産」が構築できない状態では、「人的資産」の構築はとても期待できないというのが、私の考えです。
現在の金融業界に対する問題意識
ビジョン・ミッションの言語化に先行して、私がJAMPを立ち上げたとき、更に言うと昨年冬からJAMP構想を企画・主導してきた際に持っていたのは、現状の金融業界に対する強い問題意識でした。
即ち、金融業界は、「高度金融専門性の偏在」や「硬直的な事業運営モデル」という構造的な問題を抱えており、そのために本来あるべきよりも小さい付加価値しか社会・経済に提供できていない、というものです。
「高度金融専門性の偏在」
例えば、金融・保険業界に就業する約170万人のうち、投資運用業界に就業するのは約1万人に過ぎず、その殆ど全員が首都圏の大手金融機関に正社員として所属しています。そのため、地方にある地域銀行や首都圏でも中小の金融事業者、スタートアップ企業、金融事業に参入を検討する一般事業者は、その専門性を柔軟に利用することができません。
一方、大手資産運用会社においては、「役職定年」制度のもとに55歳など一定年齢以上のシニア人材を専門業務から外し、一般事務作業に従事させるなど貴重な専門性を無駄遣いしているケースも少なからず散見されます。
「硬直的な事業運営モデル」
我が国の多くの金融機関は「自前主義」への拘りが非常に強く、全ての機能を内部で対応しようとすることが一般的です。外部の事業運営リソースを活用すれば、より効率的に経営リソースを配賦し、全体の生産性を高めることができるはずなのに、そういう事業運営にはなっていません。
業界全体でみると、同じような機能があちこちにあり、いずれも規模の経済を働かせられていないなど、大きな無駄が生じてしまっています。
こうした構造的な問題を背景に、ヒト(高度専門性)・モノ(事業運営リソース)の効率的活用が全く進んでおらず、金融業界全体として非常にもったいない状態にあるのです。
JAMPが目指すビジョン
私たちJAMPは、「ヒト(高度専門性)・モノ(事業運営リソース)が業界内で適切に共有されるプラットフォームの構築・運営を通じ、金融業界のビジネス・サービスの生産性を高め、社会・経済に提供する付加価値量を増大させる」ことをビジョンとして掲げています。
ここでいうプラットフォームとは、具体的には、
①金融事業者にとっては、金融事業支援プラットフォーム
②金融専門人材にとっては、就業プラットフォーム
③様々な強みを持つ企業にとっては、付加価値提供プラットフォーム
という異なった3つの切り口の機能の提供をするものを意味しており、ヒトの共有(②)とモノの共有(③)を通じ、金融事業の支援を行なう(①)という関係をイメージしています。
JAMPが果たすべきミッション
このビジョンを達成するため、私たちは、「金融業界を最適化する」というミッションステートメントを定めています。
このミッションステートメントは単にお題目として掲げるだけでなく、経営者や社員、パートナー企業の役割や目標に具体的に落とし込み、実際のプロジェクトやソリューション開発が如何に最終的にビジョンに向かっているかということを明確にする必要があります。
今後の課題
これらビジョン・ミッションは、単に定めただけでは、JAMP組織の根幹として機能することは期待できません。それが所属専門人材やパートナー企業の行動原理として自律活動を始めるまで、浸透させる努力を行なうとともに、日々のプロジェクトやソリューションに具体的に落とし込むということが必要だと考えています。
一朝一夕で期待できるものではありませんが、少しずつでも完成度を高めていくことを中長期的な目標としつつ、取り組んでまいりたいと思います。
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