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“バルベルデ・システム”の継続と“ロドリゴ・システム”への再構築――辿り着いた完成形は連覇にあと一歩届かず。レアル・マドリーのシーズン総括と来季の展望

こんにちは。

国内外の最先端のサッカーを扱う専門誌『footballista』に、今季のレアル・マドリーの総括および来季の展望をまとめた記事を寄稿しました。


カタールW杯の開催によりイレギュラーなシーズンとなった今季。昨季終盤に確立し、劇的なCL制覇を成し遂げた“バルベルデ・システム”の継続の道を選んだカルロ・アンチェロッティ率いるチームは、カゼミーロ退団の穴を新加入のオレリアン・チュアメニが見事に埋めたことで最高のスタートを切ることに成功しました。

しかしそのチュアメニやバルベルデがW杯によりコンディションを落とし、またバロンドーラーでありチームの大エースでもあるカリム・ベンゼマが低空飛行を続けたことで徐々にチームの空気が悪化。勝ち点をこぼし続け、スーペルコパのタイトルをバルセロナに奪われるとラ・リーガ連覇の可能性も早々に手放すことになってしまいます。この間、ヴィニシウス・ジュニオール、ティボ・クルトワらがチームを引っ張りました。

“バルベルデ・システム”の見直しと再構築を余儀なくされた指揮官に猛アピールを続けていたのがロドリゴ・ゴエスでした。今季偽9番の新境地を開拓するという経験を経て、より中央3レーンでのプレー、とりわけ崩しの局面における価値を発揮していたロドリゴは、ついにスターティングメンバーの座を確保。カウンターから、あるいは彼が右ウィングからレーンを横断しベンゼマ、ヴィニシウスと関わる崩しから決定機を量産するようになると、チームは再び上昇の兆しを見せ、コパ・デル・レイのタイトルを獲得するとともにCL準決勝へと進出しました。

マンチェスター・シティに昨季の雪辱を果たされ、CL連覇の道は絶たれました。結果は決して良くないシーズンでしたが、“ロドリゴ・システム”の誕生など来季に向け実りあるシーズンになったことも事実です。

しかし、史上最高のフットボーラー、ベンゼマを含む4人のアタッカーの退団が決まりました。ここまでフラン・ガルシア、ブラヒム・ディアス、ジュード・ベリンガム、ホセルの加入が決まっており、また新たな最適解を探すところから来季はスタートするはずです。

ついに本格的な世代交代となります。レアル・マドリーはどのような進化を見せるでしょうか。こうしたシーズンの総括と来季の展望を、紹介した記事で詳しく説明しているので、ぜひご一読ください。


シーズン総括記事を書くのはこれで3度目。ジネディーヌ・ジダンが率いた最終シーズンから、アンチェロッティが再就任してからの2シーズン。どのシーズンもその文脈を追うことができて、受け継がれていくレアル・マドリーをある程度言語化することができて良かったと思っています。日頃からツイートや記事を読んでくださっている方々、リプやDMで応援のメッセージをくださる方々本当にありがとうございます。学業やコーチ業との兼ね合いにより頻度を高めていくことは難しいかもしれませんが、来季以降も引き続きよろしくお願いいたします。

最後に、WOWOWオンデマンドのアーカイブに残っているであろう試合の中から、戦術的な観点から来季に向けて再視聴すべき今季の試合5選を紹介します。

  • CLグループステージ第1節 vsセルティック⚪︎3-0

“バルベルデ・システム”で完勝したCL開幕戦。果敢なハイプレスや旗手怜央を中心としたビルドアップにより押し込まれる展開が続くも、それをひっくり返すプレス回避から先制ゴールを奪うと、その後はボールを保持して試合を支配し試合巧者ぶりで勝ち点3を確保しました。先制ゴールの一連の流れは昨季のCL決勝リバプール戦を想起させる再現性がありました。

  • ラ・リーガ第16節 vsビジャレアル×1-2

ビジャレアルはいつもレアル・マドリーの前に立ちはだかる存在です。この日も巧みなプレス回避やビルドアップでレアル・マドリーを相手に押し込み、ジェラール・モレノを中心とした崩しが猛威を振るいました。“バルベルデ・システム”の機能不全を露呈させられた試合と言えるでしょう。

  • CLラウンド16第1レグ vsリバプール⚪︎5-2

トニ・クロースの体調不良によりロドリゴやエドゥアルド・カマビンガがチャンスを得た試合。昨季のCLとは打って変わり、互いがハイプレスを繰り出すオープン上等の試合展開で大量ゴールが生まれました。この試合で彼らが活躍を見せたことが、後の“ロドリゴ・システム”誕生のきっかけになった可能性があります。アンチェロッティの試合中の修正が光った試合でもありました。

  • コパ・デル・レイ準決勝第2レグ vsバルセロナ⚪︎4-0

いつにも増してハイプレスに出ていきボール保持の時間を確保するだけでなく、ブロック守備からの高速ロングカウンターの切れ味も鋭かった試合。この日の11人が結果的に今季の最終形、すなわち“ロドリゴ・システム”になったと考えられます。ベンゼマのハットトリックで永遠のライバルを久しぶりに虐殺。今季のベストゲームの一つでした。

  • CL準決勝第2レグ vsマンチェスター・シティ×0-4

現在のレアル・マドリーの到達点と限界を知ることのできる試合。昨季のCLラウンド16第1レグのパリ・サンジェルマン戦と同様、ほとんど何もさせてもらえない試合となってしまいましたが、その2試合の敗因に共通点があるようにも思えました。その意味で、また来季のCL優勝を目指す上で相手の強さを知る、という意味でも決して目を背けてはならない試合。来季の今頃、どのようにしてシーズン終了を迎えることができるでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました!




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