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地域と学校をつなぐ「コミュニティスクール」が地方のまちづくりで果たす役割とは?

コミュニティスクールってなに?
学校運営協議会を設置した学校でなんのこと??

コミュニティスクールは全国の学校の42.9%が設置

文部科学省資料

設置している自治体は3分の2ぐらい。

文部科学省資料

都農町では、都農中学校が4年前から設置、
ぼくは学校運営協議委員をさせていただき4年目。

町内にある小学校3校でも昨年から設置。まだまだ試行錯誤中ということで、教育委員会主催で、都農町第1回コミュニティスクール研修会が開催されました。

参加者は各校の学校運営協議委員のみなさん30名ぐらい。
都農神社の宮司から商工会役員や財団法人理事、PTAの歴代会長とか。

ぼくは研修のファシリテーターを担当、冒頭でぼくなりのコミュニティスクールの意味合いを伝えました。

コミュニティスクールとは(文科省の定義)

❶校長が作成する学校運営の基本方針を承認
❷学校運営について、教育委員会又は校長に意見
❸教職員の任用に関して、教育委員会に意見

ただし、❸の任用、いわゆる人事がコミュニティスクールの肝だとは思うのですが、現実的には難しいと思います。

個人的な問題提起として、❶の校長が作成する基本方針について、これをいきなり日ごろ学校とそれほど縁のない委員が聞いて承認、というのは建前すぎて現実的じゃないなと思います。

校長は県職員で定期的な異動がありますし、おおくは県内といえども校長本人のゆかりのない地域。そこで独自の基本方針となると、校長個人のエゴになりがちで、それを議論するのは好き嫌いになりがち。結果的には、反論が出にくいように、抽象度の高いきれいめの概念に落ち着く。

委員にとっても、有償で出席し責任は感じつつも、会社の株主総会なら利益とか判断指標があるけど、教育方針となると議論のしようがない。するとしたら、自分の子育て方針やこだわりを述べるだけで、言ってみれば好き嫌い。結果、無言で穏やかな同意に落ち着く。

学校と地域が協働していくためのコミュニティスクール、その趣旨は大いに賛成ですし、特に過疎地においては必須の機能だと期待しています。

もったいないので、自分なりに現実的なコミュニティスクールのあり方を提案してきました。

1.地域課題の解決をテーマにおく

コミュニティスクールを一番シンプルにいうと、学校と地域の連携

連携テーマは、校長から独自に出される抽象度の高い概念ではなく、明らかな地域課題(人口減少や若者流出)にフォーカスする。
そうすれば教育ビジョンは、抽象的・キレイごとではすまないはず。

研修会では、「もう知ってるよ!」と言われるの承知で、人口減少や子どもの数、町民の4分の3は他地域居住経験ありといったデータを共有。
言いたいことは、まずファクトベースの共有。

これまでのコミュニティスクールでは、「ふるさと教育」や「地域の愛着を増やす」といった抽象的な意見が多く、総論としては異論の余地がありませんが、もう少し、現実のデータに即して、2つ3つレイヤーを落として議論しないと協働のアクションは起きないと懸念。

2.いったい何人戻って来るのか?

参加者の方々に1つめのワークとしてお願いしたのが、今年度末、3校の小学校を卒業する89名の6年生が、今後、何人町に戻って来て、かつ町で働くのか?予測数値を書いてもらいました。

ぼくが各年代にヒアリングした限りで、いまの20代以降は、町に居住がいいところ10-15%、町に居住かつ勤務は5%以下。いま21歳の学年だとおそらく1人いるかいないかレベル。

今年度末に卒業する89名、いまのままだとおそらく10年後、町で働いている人は0-5人程度。

根拠なく「なんとかなるんじゃない?」とか「仕事がないからねー」と他人ごとみたいに憂うか、「大変だ大変だ」とただ脅すか、の前に、まず現実の数字を知りたいし共通認識をもち、それから作戦へと進めたい。

3.Uターンするための必然

「ふるさと教育」「町への愛着を醸成」はとても重要なんだけど、それだけではUターンまでは至らず。

学校の地域学習や自治会でも地域の良さを伝えるときに、どうしても「豊かな自然」「優しいひと」「おいしい食」「歴史と文化」に関することが多くなりがち。

もちろん、それは魅力なんでしょうが、いろいろな地域を渡り歩くうちに、自然や人、食といった類は全国各地、それぞれに魅力的なことがわかります。つまりUターンするかどうかの最大の決定要因にはなりにくいということ。

次の段階が「盆暮れ、必ず帰りたい」という人たち。これはいうまでもなく家族・親戚・友人を含め「会いたい人がいる」からです。でも、これだけでもUターンにはいたりません。

Uターンの必然性をつくるためには最低限3つのことが必要です

仕事を自分でつくれる
まちを自分で変えれる
子育て・教育を選べる

4.Uターンを促す戦略


Uターンを促すために必要な戦略として、ぼくが想像できる範囲で考えて実践をはじめてみたのが下記の3つです。

もちろん、これだけで必然性をつくれるとは思ってませんが、少なくても未来への変革と可能性を感じさせる戦略にはなってるんじゃないかと思ってます。

具体的に、キャリア教育は都農中学校で3年間続けている総合学習の時間を各学年15時間活用して実施している「つの未来学」。

まちづくり教育では、ゼロカーボンU-18議会にまちのゼロカーボン施策提言をするために結成されている小学生の選抜チーム「GreenHope」
継続的にまちづくりのことを考え、アクションを起こしていく中学生の地域クラブ「まちづくり部」

いま具体的なアウトプット先として進めているのが、シャッター商店街の再生プロジェクト「みちくさ市」です。

また、❸子育て・教育を選べる、に関わる内容としては、ぼくらが企画を担当している廃校になった都農高校で、子育て世帯を中心とした活用検討委員会を町の公募で発足。

毎月1回、都農高校でどんな子育て環境と選択肢があれば、子育てライフや子どもの教育が楽しくなるか、子育て最前線の町民たちと話し合いをはじめています。

5.過去の思い出より未来の可能性

以上の事例を紹介しながら、参加者には2つめのワークと3つめのワークをお願いしました。

共通するテーマは、町の未来

地域教育に関する話をしていると、どうしても「昔はよかった」「こんな良さを子どもたちに伝承したい」という向きの話になりがち。
もちろん、そのことも大事なんですが、もっと大事なのは、未来の可能性。

「昔はこんなにすごかったんだぜ!」
ではなく
「未来はこんなによくなる町なんだぜ!」

と大人たちが熱く語れるようになって、はじめてコミュニティスクールとして機能がはじまるんじゃないかなと思ってます。

6.これからのコミュニティスクール


冒頭のコミュニティスクールの役割についてぼくの提案をまとめます。

校長が学校運営の基本方針を提示する前段として、
地域(学校運営協議会)が現実の課題解決につながる教育ビジョンを言語化し、校長に共感を得る。
❷校長は、そのビジョンを実現するために、自身の強みややりたい教育を踏まえて基本方針を作成
❸その方針を学校運営協議会は自分たちのビジョンが実現するものなのかどうか、という観点で話し合い、承認

こんな流れになっていくと、コミュニティスクールが、これからのまちづくりにおけるプレゼンスを高めていくのではないかと思ってます。

研修の最後に、ぼくなりにたてた問いを各校の学校運営協議会に投げかけました。

早速、2つの協議会から継続的な協力を求められることとなり、半歩ぐらいは前進できたかなと思っています。

コミュニティスクールに関する実態や具体的な進捗は、なかなか知る機会がないなと個人的に思っており、もっと自治体同士で、お互いのコミュニティスクールの運営状況をカジュアルに共有できればなと思ってます。


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