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【連続不定期更新小説】どうして僕らは分けてしまうのだろう -オン派の営業社員はオン派の研修を今更受ける-

数あるコンテンツのなかから、本作を手にとって頂きまして、ありがとうございます!

本作は、今の世界と少し似ている、何年か先の未来を舞台にした小説です!
一応4話目ですが、単体で読んで頂いても大丈夫な内容にしています。
3話目は以下から読めます。読んで頂けたら嬉しいです!

-あらすじ-
数年前、感染力の強い病が世界中に流行した。その後、感染が収束した後にもオンラインツールを積極的に活用する人々と、病が流行する以前のようにオフライン重視の生活に戻る人々に分かれるようになった。
この時代の人々はどのように生きているのだろうか?

朝ベッドを出る時間は、自宅から目的地までの距離によって変わる。目的地が遠くにあるのなら、到着までの時間は長くなり、その分早くベッドから体を起こさねばならない。だから、目を覚ました朝、その日の行き先が俺の頭の中に浮かぶ。
そして、今日の行き先は、会社でも顧客先でもないことに気づく。

今日、俺はいつもと違う電車に乗り、研修会場に向かっている。
「オフラインにおけるコミュニケーション能力の向上」というテーマの研修を受講することになっているからだ。受講対象は、わが社に加えてグループ企業を含めた数社に所属している、入社数年目の若手社員すべてのようだ。俺もその対象に含まれている。

車内にはところどころ空席が目立つ。
何年も昔は通勤ラッシュがひどかったという話を聞いたことがある。
なんでも勤務者ほとんど全員が、職場に足を運んでいたらしい。
今でも、オンライン枠の勤務者は、勤務先まで実際に足を運んで仕事をするというケースがほとんどだ。一方で、オフライン枠で採用された者は在宅勤務が一般的である。
通勤する社員の人数が半減したため、電車の混雑がかなり解消されたという。

研修を受けるのは新人のとき以来だ。普段の業務に比べれば、予算もなく、責任も小さいぶん、研修を受けるのは気楽だ。
それに、いまさら研修によって、オフラインにおけるコミュニケーション能力を上げるのか、と思う。
オフライン営業部に所属している俺は、普段から顧客のもとに足を運ぶのが当たり前になっている。勤めている大手飲料品メーカーは、業界シェアも上位に食い込んでおり、取り扱う案件の単価はかなり高額だ。
いつも営業成績に直結する、クライアントとの対話をしているのに、研修では同年代としゃべるだけで実践とはほど遠いだろうと感じる。

やがて電車はめざしていた駅に到着し、目的地までの距離は残りわずかとなった。

会場に着くと、俺は受付で社名や所属先などを伝え、体育館のようなだだっ広いセミナールームの中に入った。

(つづく)
※数あるコンテンツのなかから、本作を読了頂き、ありがとうございます!
続きの5話目はこちらです!
1話目、2話目、3話目も下に掲載しています!

1話目、2話目、3話目はこちら!


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