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【イエスタデイをうたって】気がついたら何もせずに数か月くらい経ってしまう「先延ばし族」な若者は、今日どう行動するか

何かをしようと決心しても、ズルズルと先延ばしにしてはいないだろうか。
特に、告白などの恋愛がらみのことに関して、延期を繰り返してしまうことに身に覚えがあるだろう。
気がついたら数か月、もしかしたら数年経過していた、なんてこともあるかもしれない。

「イエスタデイをうたって」は、そんな先延ばしをしてしまう人々の言動を描いている。
頭や心の中に自分の気持ちを抱えているものの、実際に行動に移すことは難しく、ある意味"頭でっかちな”、今風に言えば”草食系な”人々の人間関係が表されているのだ。
物語が進むにつれて、登場人物たちは互いに知り合って人間関係を広げていく。そしてときに関係性を変える。

リクオと榀子の年齢もちょうどよい。
彼らが23歳くらいのときから物語は始まり、3年ほど経つと最終回を迎える。
まさに、若者という年代の生き様を描いている。

「若者のすべて」と呼ぶのにふさわしいストーリーだ。

名シーンは色々あるが、特にエンディングが印象的だ。
さらに、アニメ版と原作で、テイストは似ているものの、クライマックスが若干異なり、二度楽しめる。
まるで二度付けオーケーな串カツのように美味しいラインナップだ。

ストーリーの概要

大学卒業後、コンビニでバイトをする魚住(リクオ)。そんな彼の前に、ある日カラスを連れた少女・ハルが現れた…。 「49%後ろ向きで、51%前向きで…」へそ曲がりだけれども正直な彼らの心は、舞い落ちる桜のようにゆらゆら揺れて…。
出所:イエスタデイをうたってより一部加筆

※以下、ネタバレを含みます。この記事をここまで読んで、ネタバレをされたくないと思った方は、いったん「イエスタデイをうたって」を観るか読んで頂いて、その後にこの記事の残りを読んで頂けたら嬉しいです。

◆主な登場人物の関係(物語中盤まで)

※青:男性、赤:女性
原作では、主要登場人物であるリクオ、榀子、ハル、浪、雨宮の五角関係が見どころだ。漫画版には雨宮は登場しないため、四角関係となっている。
五角関係にみもりを加えた関係を図解した。

物語の途中(マンガ版の中盤、アニメ版の終盤)、リクオと榀子は付き合い始め、人物の関係性は変化する。このことを知って、ハルと浪は大きく傷ついてしまう。その後、リクオと榀子は向き合い、物語はいよいよクライマックスへと向かっていく。

【アニメ版エンディング】恋とはなんぞや?それは現実にあるものかも。

アニメ版の物語の終盤、リクオはハルに会いに行くことを決める。
ハルの居場所へ向かうバスの中で、リクオは自分の気持ちを反芻する。

ハルを傷つけてしまった自分にハルに会いに行く資格があるのか…
会いに行ったら迷惑に思われるんじゃないか…

思い切った行動するときは葛藤するものだ。
それでも、先延ばし族だったリクオはハルに会いに行く。

ハルに会ったリクオは、榀子への好意は、恋ではなく、勘違いだったという。
何年も心の中で温め続けた榀子への恋は、頭の中では育っていった。けれども、現実世界におけるリクオと榀子のプラトニックな恋人関係は、頭の中にある好意とは異なるものだったのかもしれない。他者との人間関係は、自分ひとりの頭の中ではなく、みんなとともに生活する現実世界に生まれる。
きっと頭の中にしかないことを、現実に持ち込んでもうまくいかなかったのだ。

「中途半端に大人なオレ達は…頭で考えすぎてるんだ」
「自分の本当の気持ちが受け入れられない」
出所:イエスタデイをうたって

それでは、リクオにとって、現実世界にあった好意は何か?
それは、ハルから寄せられる気持ちと、リクオがハルのことをめんどくさいけれどかわいいと思ってしまった気持ちである。

そして、リクオはハルをかわいいと思った旨を伝えた後にも、「いや、この瞬間だって勘違いかもしれない」と続ける。
どこまでも正直なリクオである。

けれども、リクオはハルに会いに行って話す、という行動をした。行動することは、誰の目にも見えない自分の気持ちを、相手に伝えることなのだ。

【マンガ版エンディング】行動してよ。私に自信をください。

ハルは、迎えに来た雨宮に「自信がないから選んでほしい」という。

「自信をください」
「雨宮さんにとって一番大事なのは誰ですか?」
出所:イエスタデイをうたって

これも行動だ。雨宮が、みもりかハルを選ぶかを行動で示すよう、ハルは尋ねたのだ。
そして、ここで重要なのは、雨宮の行動はハルの気持ちに影響を与えるということだ。
相手の心を動かすためにも、行動は必要なのだ。自分の頭の中にしかないことは、相手の気持ちを変えることはできない。
ハルのこのセリフは、恋愛において行動をためらってしまうすべての先延ばし族の方に読んでほしい。

そして、リクオとハルは再開し、アニメ版と似たエンディングへと進んでいく。

先延ばし族だった昨日をうたって

先延ばし族は、頭のなかで色々と考えてしまう。
けれども、ごちゃごちゃした言動になったとしても、今日行動を起こして、昨日までとは少し違う自分になってもいいんじゃないだろうか。昨日まで先延ばし族でも、今日からは行動する族になれるかもしれない。

先延ばし族だった昨日をうたって。

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