【絵本】『ゆめぎんこう』~思い出がもたらすもの~
あらすじ
感想
夢のアメを売る「ゆめぎんこう」。
お客さんの夢を買い取ってアメに替え、それを売るお店です。
空を飛ぶ夢に、虹のすべり台の夢、そして怖い夢まで…。「ゆめぎんこう」には、いろとりどりの夢のアメがたくさん揃っています。
ある日、店主のぺんぺんとバクのもぐもぐは夢の買い取りを依頼したおじいさんを訪れます。
おじいさんがアメに替えたかったのは、亡き妻との思い出の夢。
ほのぼのと読み進めていたのに、おじいさんが思い出話を語るラストには、読み聞かせをしながら涙が止まりませんでした。(母が泣いているときにティッシュで涙を拭ってくれる息子、やさしい)
作者は『リラックマ』や『うさぎのモフィ』を手がけるコンドウアキさん。
コンドウさんの絵本は、『おふとんさん』シリーズもそうですが、ほんわかとした可愛らしいイラストと楽しくもウルッとくるお話に心が温かくなります。
子どもだけでなく、大人にも読んでほしい絵本です。
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この絵本を読んで、是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』という映画を思い出しました。
私が観たのは約20年前、中学生の頃。
鑑賞直後は、さほどおもしろかったと感じませんでした。(「ARATAさんかっこよかった」くらいの浅い感想しかないおバカなJCでした)
それから20年の間、出会いと別れを繰り返し、いろんな経験を重ねるうちに、折に触れてこの映画を思い出すようになったのです。
『ワンダフルライフ』を思い出しては考えること。
「私なら何の思い出を選ぶ?」
今私が死んだら…。
息子とのなんでもない日々を思い出にして天国へ持って行きたいな。
幼少期や学生時代でもなく、結婚したときや、妊娠・出産したときでもなく、「今」。
大切な家族がいて、特別なことは何も起こらないけれど、笑ったり怒ったりして過ごす、ありふれた日常。
もし死んだら…というのは考えたくないので、年を取ったら…と考えてみても、やっぱり子どもが小さい頃の思い出がいちばん幸せだと感じるんじゃないかな、と私は思います。
『ゆめぎんこう』から話が脱線してしまいました。閑話休題。
『ゆめぎんこう』は、『ワンダフルライフ』とは話の趣旨が違うけれど、この映画の登場人物たちがそうであったように、きっとあのおじいさんはおばあさんとの思い出の胸に生きていける、そんな気がします。
それだけ、大切な思い出というのは人に力を与えてくれるのだと思います。
過去の思い出を大事にしながら「いつか思い出に変わる今」も大切に生きていきたい。
『ゆめぎんこう』や『ワンダフルライフ』に触れて、そう思いました。
書誌情報
『ゆめぎんこう』
作:コンドウアキ
出版社:白泉社
発行年:2020年