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福岡と、提灯の明かりと、唐津くんちと

今日も今日とて仕事を終え、明日は休みなので少々街をブラブラ。
すっかり暗くなりきってから駅へ向かうと、博多駅前の広場は妙に明るく照らされている。

イルミネーションの設営中で、まだ完成するはずはないんだけど・・・・・・。と思いながら広場に着くと、明るく広場を照らす正体が分かった。ずらりと並んだ提灯だ。

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大小さまざまな提灯が煌々と光るその前に、氷で作られた彫刻がある。モデルはここ最近で一番有名になった妖怪、アマビエだ。
彫刻を置く台座には、こう書いてある。

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以心伝心~灯を点し、氷に願う~

今日一夜限りの、イベントだった。
イベントの説明を見てみると、

感染症流行の終息を願って、秋の博多に提灯と氷像を展示します!
お祭りの象徴ともいえる提灯に灯りを点し、疫病退散のご利益があるとされる“アマビエ”の氷の彫刻とともにJR博多駅前広場に展示し、ライトアップを行います。
氷の彫刻はJR博多駅前広場で皆さまの前で実際に制作!

とある。
実際に制作するところは見られなかったが、本格的に足を踏み入れた秋の感じを思わせない広場の雰囲気に、高揚する。
きっと同じ気持ちの人がいるのだろう。彫刻の前、提灯のそばでは、足を止め、写真を撮る人たちが多くいた。

提灯が並ぶその下に、ポスターが2枚ほど飾られていた。
佐賀・唐津の歴史ある祭り、「唐津くんち」のポスターだ。ポスターの下には、今年の唐津くんちが中止になったことが書かれていた。

そうだよなと納得しつつ、中止になったことをここで初めて知った。200年以上の歴史の中で、初めてらしい。ポスターを見ながら、友だちのことを思い出していた。

その友だちは佐賀・唐津の出身。くんちのシーズンである11月になると、授業があっても関係なく佐賀に帰り、祭りに参加していた。よほどのことが無い限り授業を休むことがなかった自分は、本当に帰っていくそいつを見て、「マジか」と。授業を休むことよりも、祭りのために地元に帰るという姿が、単純にすごいと思ったのだ。

卒業旅行と称して佐賀に行ったその夜、飲んで酔っ払った別の友だちが唐津くんちのことをちょっとバカにしたように言うと、

「お前っ!くんちばナメとんか!!」

と、同じく酔っ払ったそいつがキレて掴みかかろうとする。酒の勢いに任せた2人を止めながら、唐津くんちに対する気持ちは筋金入りだなとちょっと感心もしていた。

今年、中止を知ったそいつは、どう思ったのだろう。中止自体が初めてなのだから、そいつにとっても初めての経験だ。
喪失感みたいなものがあるのだろうか。それとも案外、平然と過ごしているのだろうか。何か代わりになるような催しがあれば、同じように唐津に帰ったりするのだろうか。

地元のことを思って、地元を代表するような催しがあるとそのために帰郷するって、すごいことだと思う。
ここが地元です!と言えるような思いを持つ地域のない自分には、なかなかそんなことが無い。
「地元愛」という一言におさまらない、地元への気持ち、地元を好きだからこそできる行動に触れるたびに、少しだけうらやましい気持ちになる。

再開できるようになったら、またそいつは毎年、何があろうと地元に帰っていくんだろうな。
一夜だけ駅前広場をあたたかく照らす提灯の光のもとへ、代わる代わる多くの人が集まってきていた。

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