さくっとブルーズギターの歴史 其の一
サクっとブルーズギター年表
1920〜1930年代・・・Blind Lemon Jefferson, Son House, Robert Johnson, Lonnie Johnsonなどのブルーズギタリストが、後のブルーズギター発展に最も影響を与えた人物と言われている。
当時主流だったのがスライドギターという演奏法で、ボトルネック(ボトルの首を折ったり切り落としたもの)やナイフの刃から作られたものを左手の指につけて演奏していた。
当時ほとんどの演奏は即興で伴奏がなく、2度同じように演奏されることはめったになかった。
1940年代・・・ビッグバンドを特徴とするジャンプ・ブルーズが流行りだした頃、ギターはリズムセクションの要として活躍。ロックやR&Bの誕生に大きな影響を与えた。
1950年代・・・第二次世界大戦後、エレキギターの流行によってブルーズも変貌を遂げる。アメリカ・シカゴで息吹いたエレクトリックブルーズ(シカゴ・ブルース)はHowlin' Wolf, Muddy Waters, Jimmy Reedなどのギターサウンドが今のエレクトリックブルーズギターの礎となっていいる。また、この代表的なギタリスト達は全員ミシシッピ州で生まれ育った生粋のブルースマン。
エレキギターはシカゴブルーズが育てた
ミシシッピ州(デルタ)は初期のブルーズミュージック(デルタ・ブルーズ)が生まれた場所であることからブルーズ発祥の地と言われています。デルタ・ブルーズが生まれた時期は定かではありませんが、1920〜30年代あたりに録られた音源を聴く限りはアコースティックギターでの演奏が一般的だったと認知されています。
エレキギターが開発されて世に出始めたのは1930〜40年代。とは言え、正式に発売されていたわけではない頃の話です。製品としては1932年のリッケンバッカー製のフライングパンが最初期ではないかと言われています。
リッケンバッカー製フライングパン
ただ1930年代にエレキギターはあったとは言え、簡単に手に入るものではありませんでした。ヤフオクやメルカリで新品セットをいちきゅっぱで買える時代ではないので、当時のギタリストの殆どはアコースティックギターで演奏していたわけです。
1950年代に未知のスタイルとして生まれたエレクトリックブルーズ(シカゴ・ブルース)は、エレキギターに加えてハーモニカ、ベースとドラムのリズムセクションを擁し、トランペットやサックスなどホーンセクションも加わり、大音量で迫力のサウンドが大きな特徴でした。
シカゴ・ブルーズは当時ライブハウスや路上で盛んに演奏が行われ、その目新しさ故に多くの人々の目と耳を奪ったそうです。
黒人達のフィールドハラー(労働歌)だったブルーズはギターを持った黒人達が各地へ散らばって行くことで世に知れ渡っていきました。そしていずれは世界の国々で認知される音楽になっていくわけです。
ブルーズは変容しつつ急速に広まっていく
黒人ギタリストを主体としたシカゴ・ブルーズというスタイルが出始めた頃、T-Bone WalkerやJohn Lee Hookerといった同じ黒人ギタリスト達はカリフォルニア・ブルーズと呼ばれるスタイルを作っていました。
カリフォルニア・ブルーズの特徴は、シカゴ・ブルースやジャンプ・ブルース、ジャズスウィングなど当時の流行ジャンルを取り入れたハイブリッドのブルーズでした。
耳にした時の感覚的にはブルーズと言えど、似て非なる新しいサウンドとして捉えられた結果、こうしたジャンル分けの呼び名が付いたのだと僕は推測しています。
この地でブルーズを奏でた黒いギタリスト達もまたブルーズ生誕の地と呼ばれるアメリカ南部の出身でした。とどのつまりその血は次第に、、もとい急速にアメリカの至るところで広まっていきます。
黒人ブルーズギタリストが常識を変えていく
BB KingやFreddie Kingなど今や言わずと知れた著名ブルーズギタリストが現れたのもやはり1950年代です。
これまでブルーズギターというとスライド(ボトルネック奏法)がスタンダードでもあるにも関わらず、スライドを使わない独自の奏法を見せつけた彼らのプレイスタイルは他のプレーヤーや聴衆にとって"ユニーク"であったと言われています。
このユニークというのが色々な意味で捉えられます。「いいね!おもしろいね!」と思う人もあれば、「なんだそりゃ?変なの!」という意見もあったり、きっと様々だったのだと思います。これはその時代を目の当たりにした人にしかわからない感覚でしょうね。
1925年生まれのBB Kingは1949年にデビューして以来、2015年に亡くなるまで66年間にもおよぶ音楽活動の中で後世に与えた影響は計り知れません。これが最も偉大なブルーズギタープレイヤーの1人と呼ばれる由縁です。
こうして日毎に増大していくブルーズミュージックの波はアメリカ本土にとどまらず、海をも越え、多くの人々に知られ渡っていくことになります。
つまるところ、それはエレキギターという楽器が世界へ広まっていくことと同義だったわけです。
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