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大日本帝国陸軍版「桃太郎」

昭和の盛世、帝国の辺陲にて、厳かな忠誠を誓いし老翁と賢媼は、日々を質素にして誇り高く過ごしておりました。老翁は毎朝、村共有の草地にて草刈りの務めを果たし、鎮守の森の神々に清き献身を捧げておりました。

そんなある日、賢媼が川で衣類を洗う中、神秘の桃が流れつき、賢媼はそれを抱えて草庵に持ち帰りました。老翁が戻るや否や、二人で桃を開けると、中より英姿颯爽たる若人が出でてきました。彼は桃太郎と名付けられ、帝国の息吹を全身に宿しながら、雄々しく成長したのであります。

やがて成人の域に達した桃太郎に、帝国の危機を救う大任が下されました。オニガ島に巣食う鬼畜どもを討つべく、忠実なる犬、慧黠なる猿、勇壮なる雉を伴い、勝利を誓って出陣したのであります。彼の背には、老翁と賢媼の深い祈りが重く寄り添っておりました。

海を渡りし桃太郎の部隊は、ついに鬼畜どもの要塞が聳えるオニガ島へと到着したのであります。戦の火蓋が切られ、桃太郎は先陣を切り、慈悲なき銃火と鋭い刃をもって鬼畜どもとの壮絶な戦いを繰り広げたのであります。夜空を焦がす大砲の火花、鬼畜の悲鳴を断ち切る忠犬の吠え声、慧猿の策略、勇雉の疾風の如き攻撃が砦を揺るがせました。

最後の闘いにおいて、桃太郎は鬼畜の王を一騎打ちにて討ち取り、オニガ島を帝国の手に取り戻し、略奪された宝物を村へと持ち帰りました。その勇姿は、帝国陸軍の壮麗なる伝承として、不朽の記録に刻まれ、桃太郎の名は帝国の至宝として後世に讃えられることとなったのであります。老翁と賢媼は、平和を取り戻した土地で、英雄を育てし誉れを胸に、余生を静かに過ごすことが叶ったのでありました。

これ以上無き、めでたしであります。

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