学ぶは真似るところから【27】脱サラ研修講師が語る 独立開業のリアル 綱を信じて、バンジージャンプ!
見よう見真似で、お金をもらいながら形をつくる
2002年4月に天の助けか、クアトロ社からの新入社員研修で、はじめてまとまった売り上げを上げた私でした。幸運はさらに続きます。その前年の秋に坂口さんに引き合わせてもらっていた研修会社マネジメントフォワード社から研修登壇の依頼が来たのです。それは予期しない電話でやって来ました。
「研修のお願いなのですが、5月の7・8・9日の3日間、空いてますでしょうか」
その時の私は、外出先だったので、慌てて、手帳を見る暇もなく「あっ、はい。なんとかなると思います」と返しました。(だいたい空いているのは分かっていましたので)
「よかったぁ!」営業マン氏安堵の声と共に、内容を話し出しました。
この時の私は仕事を選べる立場ではありません。「できるかどうかは向こう様が判断する」という心境。とにかく、来た仕事をガッチリと掴むことが生きる道でした。
案件の内容は、マネジメントフォワード社のメインクライアントである大手通信会社からオーダーを受けたグループ内の研修会社が発注主。この当時のその会社は大掛かりなリストラを行っている真っ最中でした。今回の依頼は出て行く人向けではなく、残った人たち向けの研修でした。今まで、営業の仕事をしたことがない人たちに、営業の基礎を教えるというものでした。
幸いなことに、私の職歴の中に、自動車業界、機械業界での営業の実務経験があったことからの声掛けだったのでした。人生、何が役に立つか分かりません。
さらに私が幸運だったのは、この研修が100名を超える大人数の規模だったということ。主席講師一人、サブ講師三人の合計四人で行なう方式で、私はサブの一人でした。サブなのでテキストや教材を私がつくる必要はありません。3日間のカリキュラムの中で、レクチャー部分は主席講師が行ない、私のようなサブ講師はその内容を踏まえながら、そのあと行われるロールプレイ実習の指導を担当します。
先ほどの依頼の電話の場面で忘れられないことがあります。マネジメントフォワード社営業マン氏が申し訳なさそうな声を上げました。
「それで、あのぉ、講師フィーの件なのですが…」
「きたっ!」私は心の中で叫びました。
「9でお願いできますでしょうか」
人間、一回経験できていると対応も違って来ます。クアトロ社のことがここで生きました。
「ということは、3日で…」落ち着いて切り返すカドワキがそこにいました。
「27ということで、お願いします」
「分かりました。こちらこそよろしくお願い致します」
仕事をさせてもらいながら、勉強もさせてもらえる。しかも相応の報酬がある。なんともありがたい話でした。私の頭の中では、瞬時に5月の売上に27万円が立つことを浮かべていました。他の仕事の売上も入れて、4月に続き、5月もなんとか生きて行けるだけの売上げが立つ安堵感が私の身を包みました。
この案件も、あとから聞いた話では急遽沸き起こった話。急な話で出講できる講師がいない中で、マネジメントフォワード社の中で「そう言えば、なんか昨年、挨拶に来たあの人ができそうじゃない?」という事情のようでした。この部分だけ見ると、芸能界のシンデレラデビュー話のようです。突如の代役を無事に務め上げる新進俳優のような感じでしょうか。そりゃ、言い過ぎか(笑)。
この話には更に続きがあります。
「それで、もう一つお話があるんですが」とマネジメントフォワード社営業マン氏。
「翌週の5月15・16・17日も空いてますでしょうか」
続きの仕事の依頼でした。次の週にも同じ研修を行わないといけないのだが、主席講師である玉山先生は既にスケジュール済で出講できない。そこで、代わりの講師を探していたとのことでした。実施する内容、教材は今度、サブ講師をするこの研修と同じということでした。要は、サブ講師をした翌週に主席講師をするということです。翌週のこの案件は人数が少ないので、講師は私一人とのことでした。ちなみに、報酬は「10」。なんと、これで5月の売上、57万円が立ちました。独立開業以来、はじめて普通に「食える」という感覚を感じた瞬間でした。
(明日へつづく)
自分が培って来たものを勇気を出して発信していこうと思っています。お読みいただいた方々の今後に少しでもお役に立てば嬉しく思います。よろしければサポートをお願い致します。続けていくための糧にさせていただきます。