見出し画像

春には芽が出ると言うしかなく 【11】脱サラ研修講師が語る 独立開業のリアル 綱を信じて、バンジージャンプ!

 2002年春には芽が出ると根拠のない話を妻に言い

 2001年も秋になり、日が短く朝晩がすっかり冷えるようになってきました。にっちもさっちもいかなさそうに思える毎日が続いていました。文句を言わずについてきてくれる妻には、さすがにこの見込みのなさそうな状態は言えませんでした。妻からは一度だけはっきりと言われました。

「あなたが不安そうなことを言うと、こっちはもっと不安になる。」
これは身に沁みました。結婚以来はじめてといってもいいかもそれません。自分がこの家の家長であることを重く受け止めました。

 この頃の私は、来年の見通しとして、「春になったら、なんとかなるような気がするねん」と妻には言うようになっていました。実際には、何ら具体的な根拠のない話です。でも、本当に「なんとかなるんじゃないか」と思っていた、いや信じていたというべきかな。そう思っていたのは本当なのです。
 違う視点からの受け取り方になりますが、これは言い換えれば、春の時点で芽が出なかったら、そこで終わりにしようとの意思表示とも取れる話でした。実は我が家の財政的にもそのあたりが、もう限界だったのです。

 明けて、2002年1月。長男は私立中学を受験する予定でした。合格すれば、そのまま入学となります。親のわがままで、それを止めさせるわけには絶対にいきませんでした。
 2002年春の様子を見て、独立を継続するかの判断をする。私はそう決めました。そこまでは、やれるだけのことをやって行こうじゃないかということにしました。

 私が、春になんとかなると思っていた根拠は、「入社シーズン」であるということ。具体的な材料は他に何一つない状況でしたが、そこから何かが起きるんじゃないかと感じていたのです。感じたというより思い込んだ。いや、願ったというのが実情だったかもしれません。私の人生で、根拠なくなんとかなると言い切れたのはこの時を置いて、他にはありません。私は家長であるとともに、事務所の代表者です。根拠なき楽観的見通しは「夢」ではなく、「無責任」のそしりを免れないものではあったのですが、この時はそう言うしかなかったのです。こうして2001年の年の瀬は暮れて行きました。

 ちなみに、この年の我が家の夏のレジャーは、家族五人での映画鑑賞1回切り。『千と千尋の神隠し』この作品は、私にとって、人生、忘れられない一本となっています。
(明日へつづく)



自分が培って来たものを勇気を出して発信していこうと思っています。お読みいただいた方々の今後に少しでもお役に立てば嬉しく思います。よろしければサポートをお願い致します。続けていくための糧にさせていただきます。