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駆け出しプロ講師のための基礎講座 「コンサル」「講演」「研修」の違いと対応の仕方【4】 研修もどきは意外に多い

 研修もどき、研修っぽいものは世の中に意外に多い

 2003年に、とある教育団体の委嘱講師(現在は、兼任講師)となって、研修を学ぶ受講者としての一面が私にできました。この教育団体は、外部の講師をやみくもに、安易に自団体の講師として派遣はしません。クライアントさんからは、組織内の職員である研究員の講師であっても、組織外の人間で他と兼任の講師であってもこの教育団体の先生」であることに違いはありません。誰が行っても、研修の品質は基準をクリアしなければなりません。ということで、この教育団体が開発したプログラム、教材を使えるようになるには、所定の教育とライセンス認定試験を受けることが求められていました。

 2003年から2004年になって、コンサルの年間契約をこなしながら、研修業務も順調に拡充中。40歳になったぐらいの頃の私は、今の50代半ばを過ぎ、後半になった私に比べて、そりゃ元気でした。そして、多忙になってきたせいで、ちょっと生意気にもなっていました。ハッキリ言って、大阪から東京に呼びつけられて、2日間だ3日間だと缶詰にされて、そのあと莫大な手間をかけさせられて、レッスンプランをつくらされて、複数の人たちからあれが悪い、これが今一つとダメ出しの嵐。「そこまで言われてまでやってられないよ」の心境になることもしばしばでした。

とはいえ、そんな私を懸命にサポートしてくださる方もいたので、(傲慢な言い方ですが)「そこまでしてくれるなら、まぁやってやるよ」とやり続けた結果、いくつかの講座を担当できるようになりました。この団体の講師の経験を積み重ねるうちに、私はあることに気づきます。「なんだかんだ言っても、このプログラムと教材はよく出来ている。」

それまで、我流でテキスト、教材をつくっていた私は、アンケートの結果に苦しめられていました。仕事全体の評価としては、継続でオファーをもらえてはいたのですから、総体的には良い評価ではあったのでしょうが、アンケートの中の「教材について」という項目の中に、私のテキストの稚拙な作り込みに、受講者の方々は容赦なく酷評を書きました。覚悟はしていたもののこれには、流石に落ち込みました。

「話はおもしろいが、教材は今一つ。分かりにくい」一回や二回に留まらず、何回も書かれると自覚があるだけにつらいものがありました。その当時は今みたいにパワーポイントも使えず、ワード文書が主流ではありましたが、その技術にも稚拙な私は泥沼にはまっていました。これは、テキストの体裁だけの話ではなく、内容面でも一人の人間が、自らが見聞きして入手しただけの参考資料を使って、まとめただけの代物です。一方、この教育団体の教材は、何人もの人間が、これまで豊富に積み重ねてきた知見、経験を織り交ぜながら考案されたもの。その深みが全然違うのです。この団体の所属講師である私は、苦手な教材の製作に神経を取られることなく、インストラクションに注力できました。

 この団体の講師としての経験を積み重ねている頃、とある会場で受講者の方からこんなことを話しかけられたことがあります。
 「先生は、なんで、このワークをするか説明してくれるからいいです」
不思議に思って、詳しい事情を訊くと、今までの研修では、ろくな説明もなく、ワークシートを配布して、「さぁ、やってください!」という講師が多かったとのことでした。

 また、ある事務局の方からは「カドワキ先生は、ケーススタディをする時に、どうしてこういう当社と関係ないケースを使うか説明してくださるからいいですよ」と言われました。この場合は、資料を配布して、講師からは説明もなく、いぶかる受講者の気持ちおかまいなしに実施していたという事例でした。私が受けたこの教育団体での講師教育では、こうした粗いことは許しません。使用するすべてのものには意味があるのです。

 世の中、本当の意味での研修ではなく、研修ぽいことをしているに過ぎないことが結構多いと言っても言い過ぎではないようです。研修講師の経験を積み重ねていく中で、私は、世の中、訳が分からない研修がはびこっていることを多くの受講者の方々との対話から実感しました。テキトーなテキストで、テキトーな説明で、テキトーにワークさせて、発表させて、テキトーにコメントを入れている体をとって、「ちゃんと研修やっていますよ」としている実態があることは否定できないのです。

 研修会場での休憩時間で、食堂で、トイレで、はたまた懇親会場で、「今回の研修は本当に分かり易いです。前はこんなんじゃなかったです」という類の言葉に触れるたびに、(「一体、これまでにどんなのを受けられたのですか?」)と問いかけたくなります。気をつけよう!他人のふり見て、我がふり直せです。気をつけないと、自分がやった研修も同じように言われることもあるということです。おぉ、怖っ!ホント、他人事ではありません。


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