駆け出しプロ講師のための基礎講座「コンサル」「講演」「研修」の違いと対応の仕方【2】 特効薬を期待される「コンサル」の難しさ
特効薬を期待される「コンサル」の難しさ
コンサルティングの仕事の難しさの一つに、超特別な専門医扱いされることがあります。「この人だったら、すぐに解決してくれる」との期待です。ことに、私の専門分野は人事系です。人がらみのことばかり。細かい事情と感情が複雑に入り混じったドラマの世界です。そうは単純にはいきません。
コンサル契約を結んだウェストサクセス社(仮名)においては顧問となり、総務人事部長代行として退職勧奨をやりました。妻には、「もし、今日帰って来なかったら、躊躇なく警察に届け出を出してくれ」と言って出掛けたこともありました。
それも一度や二度ではありません。依頼主である経営者に泥はかぶらせない。これをミッションとしていました。
人事系の問題は、教科書に載っている知識を適用してすぐに解決するようなものではありません。現場に深く入り込んで、その会社の社員の特性を細かく掴んでいないと適切な手は打てません。私が提供していたのは、「この手のことはカドワキに連絡すれば何とかしてくれる」のサービスでした。経営者の代わりに、動いて対応してくれる存在です。ピンチの時に、必ずアウトを取ってくれる名リリーフ投手のような気持ちでした。
気をつけないと「出過ぎるて、余計なことをした」とマイナス評価。「出なさ過ぎると役に立たない」とマイナス評価。この出過ぎず、引っ込み過ぎずのあんばいが難しいのです。その昔のオーナー企業での管理職時代、この呼吸を会得しておいたのが功を奏しました。ここでも、人生無駄なしでした。
24時間、365日。いつでも携帯は通話可能。遠方に出張に出ている以外は、連絡を受けてから1時間以内に駆けつけ訪問対応。しかも、追加料金の請求は無し。今の私が、2002年~2009年のコンサルの私を見ると、「よくやっていたな」と思います。カドワキが来たら何とかなる。のブランドを必死につくっていたのかもしれませんが、その当時の私は、ともかくこの会社組織を維持するために全力を尽くしていました。崇高な使命感といえば聞こえはいいですが、現実的には、この会社がこけたら私自身も危ない状況でした。まさに一蓮托生です。今の私があの当時の仕事に値をつけるなら、月100万円でもいいと思います。
契約を切られる2カ月前、ウェストサクセス社の社長が、「あれだけのこと、あんな値段でやってもらえて本当に助かりましたわ」と言っていたのは、まさに的確な表現でした。月額の報酬は、40万円から、60万円、最後は70万円超にまでなっていましたが、途中から昇格の審査、組織編制、教育研修の企画と実施、さらに賞与、給与改定もその範囲に入るなど担当分野は拡充の一途でした。支払われたコンサルフィーから、外部の専門エンジニアへの支払いも私がしていましたので、実は、私に入る実入りはこの金額まるまるではありませんでした。
どこかの時点からは、もらう以上の仕事範囲になっていたのでしょう。それなら、そのバランスを取れるような契約にしないといけなかったのですが、それができなかったコンサル事務所の経営者としては未熟な私でした。コンサルのスタート時点から、何年も経って、金額をぐっと引き上げたところで切られていますので、コンサル事務所の経営的には、金額改定のタイミングをミスったことになります。使い勝手の良いコンサルを安価で使い倒したクライアント側に一日の長がありました。
あれから10年以上経った2021年の私は当時の状況についてこんな捉え方ができます。少しは、私の経営能力も上がったようです。
自分が培って来たものを勇気を出して発信していこうと思っています。お読みいただいた方々の今後に少しでもお役に立てば嬉しく思います。よろしければサポートをお願い致します。続けていくための糧にさせていただきます。