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なぜあなたは競合分析をするのか

はじめに

新規事業を立ち上げる時、中期経営計画を策定する時、成長戦略を考える時、事業再生を行う時等、様々なシーンの中で「競合分析しといて」と依頼される、また「とりあえず競合調べなきゃ」と思う時はありませんでしょうか。

なんとなくのルーティン業務になりつつある競合分析を本日取り扱います。なお、マーケティングのための競合製品・サービス・ブランド分析ではなく、競合企業そのものの分析を対象とします。

また競合分析ですべてがわかるわけではなく、実務では3Cの残項目の市場・自社、また5フォース、PEST等の視点も取り入れ、立体的に分析していきます。

競合分析の目的は?

最悪なのがとりあえず競合を調べ、レーポート作りましたがどうしましょう?的なものです。
競合分析はあくまで手段であり、その先に達成したい目的があるはずです。
ここを意識して分析をしないと、ただのレーポートになり後の意思決定やアクションには繋がりません。

競合分析の目的はフェーズや、PJ内容によりそれぞれだと思いますが、
私が認識するオーソドックスな目的をまとめました。

【競合分析を通じて知りたいこと = 目的】
①市場の詳細なセグメンテーション
 →例えば、ひとえに球技という市場でも野球・サッカー・バスケ等がある。戦っているプレイヤーからその競技を見極める
②市場セグメントの魅力度
 →例えば、大会で優勝した場合の賞金が高い(儲かる)、そのため練習量が実はそこまで多くない、強いチームがいない(血みどろではない)
③当該市場セグメントの戦い方・KSF(事業成功要因)
 →バスケでオフェンス8割・ディフェンス2割(スラムダンクのラン&ガンの豊玉とか)で戦うとか、リバウンドを制する者はゲームを制するみたいな(リバウンドがバスケのKSF的な。これもスラムダンクより)
④相対的な自社の強み・弱み認識し、自社独自の戦い方を導き出す
 →対戦相手と比べ、フィジカル面は弱いがチームワーク・体力では勝っている

実際の競合分析のステップ

①競合の顔ぶれを確認する(目的①、②)
当たり前ですが、競合を特定することからはじめます。ただこれが実は結構大変だったりします。
また、「JALの競合はANAじゃなくてZoomだ!」みたいなケースもあるので、「競合は誰か?」はなかなか深い問いです。

まあ、まずは同業種等の比較が基本オーソドックスかなと思っています。
競合が上場しているなら情報は取りやすいのですが、業種によっては競合はみな非上場みたいなケースもあります。

その場合はBaseconnectや、業界団体の会員名簿、Indeed等の求人情報等から顧客名を抽出し、それぞれのHPを確認し、競合となる企業を一つ一つ選定する地味な作業もしたことがあります。(聞ければ顧客に聞くのが一番早いです。)


②マーケットシェア(売上高)を見る(目的②)
競合の顔ぶれがわかったらマーケットシェアの推移を見ます。そこで、順位の入れ替えが激しいのか、順位の入れ替えが起きず安定しているのかを確認します。

マーケットシェア

また数社の寡占市場となっているのか、その他大勢がひしめく市場なのか等を確認します。


③競合のコスト構造(バリューチェーン)を把握する(目的①、③)
競合がバリュエーションのどこにコストを投下しているのか、付加価値構造はどうなっているかを把握します。

Amazonが物流に投資しているように、バリュエーションのどこかが付加価値・競争要因に連結しているのでそこの見極めに使います。

例えば、飲食店だと好立地に出店しており賃料が高くなっている、サービスが充実しており人件費・教育費が高くなっている等の特徴が現れます。
要はコストを投下しているポイント=競争要因とも取れます)

以下イメージは理想です。恐らくデスクトップリサーチでは限界があるので、有価証券報告書等からコスト費目を並べるだけでも、どこにお金をかけているかは少し見えると思います。あとは戦略や投資とかの情報から定性的な把握も可能です。

コスト付加価値


④売上高と営業利益でプロットする(目的②、③)
横に売上高、縦に営利率を取るだけで、なんとなくその業界の戦いのルールが見えてきます。
半導体のように、スケールメリットがKSFとなるようなものでは規模拡大が利益向上に直結しますし、逆売上規模に関係なく、利益率が高い企業がいれば必ずしも規模を追う必要もなく、別のKSFで戦うことが可能です。

売上営利


④売上高成長率・利益成長率でプロットする。良い会社・悪い会社の戦略・取り組みを調べる(目的③、④)
③と似てますが、③はその競技のルールを掴むのが目的で、④はイケている競合と、イケていない競合を分け、それぞれの戦い方等を考察することにより、勝ちパターン・負けパターンを把握することが目的です。
横軸は売上高の成長率をとります。
勝ち組・負け組を分けて、その企業のIR等を見るとどういう方向に進もうとしているか、これまで何をしてきたかが読み取ることができます。

イケてる・イケてない


⑥個別企業の具体的取り組みポイントを探る(目的③、④)
⑤で競合のと取り組みが見えてきたところで、より具体的な戦術・アクション部分及び、それらを支える強みやをリサーチ・検討します。

この段階になってると顧客インタビューやエキスパートインタビュー等のクローズな手法も取り入れていかなくてはいけません。

なので初期段階では、競合の隠している本質的強みの洞察がある、以下のような仮説が立てれればOKなのかと思います。
「イケてる競合は○○の方向性で進めている、それを支える強みは○○である。一方弱みとしては、○○があるのでここについては攻め入る余地がある。」

最後に

競合分析の手法確立されており、情報も程インターネットを通じて簡単に手に入ります。

そのため、なぜこの分析をしているのか?この分析手法は何を明らかにするためのものか?IR資料にはないが、この競合の本質的強みは○○ではないか?等自分でしっかり考えるとかなり差が付き、競合分析が自分の血肉になると思います!

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