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時を告げるリーダーシップから、時計をつくる変革へ

あらためて読み返して、グッときました。「ビジョナリー・カンパニー」の有名な一節です。

 昼や夜のどんなときにも、太陽や星を見て、正確な日時を言える珍しい人に会ったとしよう。(略)この人物は、時を告げる驚くべき才能の持ち主であり、その時を告げる才能で尊敬を集めるだろう。しかし、その人が、時を告げる代わりに、自分がこの世を去ったのちも、永遠に時を告げる時計をつくったとすれば、もっと驚くべきことではないだろうか。
 すばらしいアイデアを持っていたり、すばらしいビジョンを持ったカリスマ的指導者であるのは、「時を告げること」であり、ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは、「時計をつくること」である。

ビジョナリー・カンパニー

私たちがコンサルタントとして、ときに求められるのは、「時を告げること」のように思います。私たち自身も、お客さまが抱えている課題を解決するソリューションを提供することをいつも考えています。ただ、それが単発で終わってしまっては意味がありません。

では、「時計をつくる」ためにはどうしたら良いのでしょうか。

まず、時計はどのようなものか、考えてみます。
時を告げるためには、時刻を正確に示す仕組みが必要になります。1~12の文字盤と針です。

ただ、仕組みだけでは、時を告げることはできません。針を動かす必要があります。そのための原動力が必要です。また、原動力だけでは不十分です。表面には見えていない無数の歯車が力を伝え、針を動かしています。ときにメンテナンスも必要でしょう。

このように目に見えないもの、見えにくいものの両方をつくりこんでいく必要があります。これを会社のケイパビリティに置き換えると、会社という時計も目に見えるハード面と目に見えにくいソフト面があります。

ハード面は、例えば、経営計画や戦略目標です。これらは、時刻を定めるための仕組みということができるでしょう。

一方、人は感情の生き物です。仕組みがあっても動きません。このためコミュニケーションを円滑にするような場づくりや心理的安全性を担保するマネジメントといったソフト面が必要になります。

なかでもソフト面で重要だと考えるのは、経営理念やビジョン、組織や個人のアイデンティティなどの価値観、考え方です。実行に必要な原動力は、「私たちは何者なのか、何によって役に立ちたいのか」という理念を探求しつづけることによって生まれます。

会社は時計のような機械ではありません。人という生命の集合体です。それぞれが、原動力を生み出すことができ、また成長することができます。
一方で、時として原動力を失ってしまい、成長が止まってしまうこともあります。

人と人とが相互作用しながら、一人ひとりが変容していく。そうした対話の場をつくることができるか。
また、そのことが前向きな方向に向かうようにリーダーシップを発揮することができるか。
そして、それらがお客さまの役に立つ商品・サービスとしてアウトプットされているか。
この3点が会社という時計づくりに必要な要素です。

特に最後のアウトプットに焦点があたりがちですが、これは「時を告げること」です。人の前向きな変容をデザインすることが「時計をつくる」ことの本質だと思います。

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