お客さまの声を聴き、自分の声も聴く
私のお客さまは、皆さん素晴らしいロマンを持っています。自分たちの商品を愛していて、その商品をどうやったらお客さまに届けられるかを常に考えています。そのような「誰かを喜ばせることが自分自身の喜びである」という思いが世の中を変えていきます。
デザインにおける「わがまま」と「思いやり」
プロダクトデザイナーである川崎和男さんは、こんな言葉を発しています。
写真は、川崎和男さんの代表作で「CARNA」という車椅子です。
川崎さんの言う「わがまま」とは、自分勝手のことではありません。欲求に素直になることです。そして、欲求を満たせるようにデザインすることで、社会の誰かが喜ぶ。それを「思いやり」と言っています。
欲求に素直になることで、イノベーションは生まれます。ただし、それがイノベーションだと評価されるのは、誰かの役に立つからです。その一方で、何が欲しいですかと聞いて回っても、お客さまは見つかりません。お客さまは、自分の欲求に気づいているとは限らないからです。
「思いやり」がないと喜んでいただける商品をつくることはできません。しかし、「わがまま」から始めないと、いつものありきたりな結果に終わります。
お客さまの声を聴き、自分の「わがまま」に耳を傾ける
「わがまま」と「思いやり」はそれぞれ、「わがまま=Why」「思いやり=How」に置き換えられるように思います。
価値観が多様化している今の世の中では、そう簡単にものは売れません。だからこそ、作り手の「誰かの役に立ちたい」という思いが世の中の発展に寄与する原動力になります。「なぜ、なんのために」というWhyを問うことが大切です。
実現するためのHowも間違いなく必要です。ただし、Howはあくまで手段です。Howだけだと結果として似たような商品になってしまいます。なぜなら成功したやり方がHowとして流通するからです。しかも、手に入れやすく、真似しやすくなっています。
企業に求められるのは「独自の貢献」です。貢献するためにはお客さまの声を聴く必要があり、「独自」になるためには、自らの声を聴くことも必要です。
誤解を恐れずに言えば、お客さまのためにお客さまの声を聴いているのではないのです。お客さまは気づいていないけど、やっぱりこの商品は、世に出すべきものだと、自らの「わがまま」を対話によって深めることが本質的な目的です。
とはいえ、そんな対話の力は「売らんがため」という姿勢からは出てきません。「誰かを喜ばせることが自分自身の喜びである」という思いから生まれるのだと信じています。
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