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お客さまからも、商品からも学ぶ

昨日は、ある会社の中期経営計画策定プロジェクトのキックオフでした。とても社歴が長く、江戸時代から続いています。美味しい味噌とその派生商品の製造・販売をしています。もう400年近く、自然の恵みを毎日の食卓に届け続けています。

味噌業界は、時代の流れの中で大きなメーカーが残り、量産化が進んでいます。同社は、量産化の流れには乗らずに、味噌本来の良さを大切にしてきました。手仕事の部分もだいぶあります。そこで働く皆さんは、人間味があって暖かい。製品と対話しながら日々過ごしていることが言葉の端々から感じられます。

同社に限らず、醸造家の皆さんは、発酵の過程で活躍してくれる「菌」へのリスペクトを語ります。「彼らに任せればよい」「彼らが十分に働ける環境を作ればよい」「良い菌、悪い菌はない。共生関係をどう作るかだ」などなどの言葉です。

一般的に、工業製品を作るうえでは、「菌」は厄介なものと捉えられがちです。品質の再現性を邪魔するからです。そこで「殺菌」という手段が取られます。そのようにして作ったものだけでは、何か寂しさを覚えます。

工業化は確かに進歩の一つです。便利をもたらします。一方で、私たちの都合で、排除してしまっていることがあります。

とはいえ、同社は、昔ながらのやり方に拘泥していくつもりはありません。違うことをしていかないと生き残れない世の中でもあります。新しい製品を作っていくことが、これからの中長期戦略の中心テーマとなっています。

そうした戦略の議論の中で出てきたのが「味噌から学ぶ」という言葉でした。工業風の言葉で言えば、味噌の製造過程からノウハウを抽出する、ということになります。しかし、そういうニュアンスとはだいぶ異なります。「菌」との対話を通じて、彼ら(菌)の働く場所を考えています。彼らの働きを何かと組み合わせれば、「味噌」に限らないものが生まれるのではないか、そんな発想です。

こうした発想を生む組織能力は、長年かけて築きあげられたものです。ただ長いだけではなく、安易な方向に行かずに試行錯誤を通じて得られたものです。この力は、そう簡単には真似できません。彼らが、独自の貢献をするための原動力になります。400年続いてきたことではなく、400年何をしてきたかを振返り、自社としての意味づけを行うことが大切です。

さて、この力をどう活かしてゆくか。
パッとヒット商品が生まれるわけではありません。持っているものを何かと組み合わせ、試行錯誤することが必要です。

とはいえ、やみくもにやってもしょうがない。
結果、あれこれ調べて、最新のやり方を探してきたりします。あるいは、競合とは異なる差別化要因を見いだそうと分析したりします。これらがうまくハマる場合もあるでしょう。ただ、結局のところ過去に目を向けているだけです。

大切なのは、既存の市場に入ろうとしないことです。新たな市場を作っていこうとする視点を持ちたいところです。自社だからこそできる独自の貢献を未来に向けて展開することが求められます。

そこで大切になるのが、お客さまから学ぶということです。お客さまとの対話の機会を作り、お客さまが解決したいことは何か、あったら良いなと思っていることは何かを探究していきます。

この場合も自分たちの都合でお客さまの声を聴かないことが大切です。私たちもお客さまも気づいてないことを見出して、それを解決するために私たちの力を使うのです。

お客さまからも製品からも、素直に謙虚に学ぶ。ここにイノベーションの源泉があるのだと思います。

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