魔々勇々第19話感想「泣き虫で強がりなところが」(ジャンプ9号)
この記事で掲載している画像は全て2024年週刊少年ジャンプ9号「魔々勇々」(林快彦)から引用しています。著作権・肖像権等は全て権利所有者に帰属致します。
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サブタイトルは「豚のち牛のち晴れ」
モニカの心情の流れ。
掲載順上がった!
そして特集始まった!
新連載全員やってるから、特集で打ち切り回避みたいな楽観視はできないけど、ポジティブな要素として捉えてもいいんじゃないでしょうか。
「世界史解説」と銘打っているということは、作中描写から想像するしかなかった歴史の一端が次回以降明らかになるんだろうか。
新しい情報が少しでも入っていると嬉しい。
さて、前回でグリシャの襲撃は一区切りついたので今回は幕間劇。
こういう溜め会の会話劇が面白いのが魔々勇々。
キャラが立てば立つほど会話が楽しくなる。
個人的には、魔々勇々のキャラ達は既に河原でだべってもらうだけで満足できる。
今回はシーン一つ一つを順番に切り取るより、それぞれの関係性から読んだほうがよさそうだったので、セットを切り分けて感想を書いてみる。
◆エリシアとモニカ
・「豚女ァ~!!」
ぶひィで返せちゃうエリシアかわいい。
モニカのいじけ方は、ただの恋愛おバカってわけでもない。
拠り所がない自分が頼りにできそうな人を見つけたのに、その人の周りにはもう大切な人がいた。
自分の孤独を癒してくれると思った人は孤独でも何でもなかった。
その相手がたまたまたゆんたゆんだったからちょっといろんな感情が混ざっちゃっただけで、親のいない子供が持つ感情としてエリシアに敵意を持つのは至極真っ当な感情だと思う。
・「辛い時に雨に打たれるともっと辛いから」
絶望の雨が止まない世界から来たエリシアにしか言えない台詞。
声を遮る雨の音が嫌いだった。
でも、だからこそ、雨音にかき消されそうな助けを呼ぶ声に気付けた。
辛さに潰されそうなときでも雨はちゃんと冷たいことを知っている。
明るいドジっ子のくせに雨をモチーフにしたこのキャラ造形完璧すぎる。
・「嘘は意味無いのよ」
グリシャお前・・・前回の
「世界がニコニコになる」、「信頼してる」、「良い子」、「大事に持ってて」
全部グリシャにとっては嘘ではない言葉でモニカを欺いてたのか。
クズが極まってやがる。
狙ってない可能性があるのが更に怖い。
他者を躊躇なく傷つけながら「夢の為に頑張るのが人ってモンじゃあないか!!!」とか、他者には全く理解できない思考回路を人に語ってしまうあたり、グリシャは常に本音で語っているだけなのかも。
・下駄を介しての会話劇
仲間になりかけのキャラを、味方キャラが主人公の想いを語ることで仲間にするって展開自体は少年漫画のテンプレではあるんだけど、こういう場面で一捻り加えるのが魔々勇々の魅力。
下駄は自棄になりかけているモニカの心情を表しているのかなと。
週間連載で心情描写にモチーフを加えて行間を読ませるってとんでもない偉業に見える。
自分の解釈が正解じゃなくていいから、こういう描写の意味を考えているときに脳からいろんな物質が分泌されていることを感じる。
下駄を飛ばすモニカは、「雨に打たれるともっと辛い」というエリシアの言葉にまだ反発している。
逃げ出すのではなく下駄を飛ばしているだけだから、聞く耳を持たないわけではないけれど。
「雨に打たれることなんか辛くない。勝手に自分の孤独を理解したつもりになるな。大切な人がいるくせに。」
これに対して、雨に打たれながら下駄を拾うエリシアは、わざわざ下駄を雨の中に飛ばす自棄っぱちな気持ちに対して、「無理に濡れる必要はないんだよ。」と寄り添う。
そして、下駄を差し出しながら、好意を恐れないでと伝える。
そんな風に自棄にならなくても、無理に濡れなくても、コルレオは傘を差し出してくれる。
自分が傷つくことは厭わない、でも他者が傷つくことを何より悲しむ泣き虫な勇者のために、あなたも自分を大切にしてほしい。
下駄を履くことで受け入れたところに、自分が濡れることに気が回らないまま二人のために傘を持って現れるコルレオ。
エリシアが伝えた善性そのもの。
傘持って駆けつけるだけでかっこいい主人公他にいる?
◆エリシアとコルレオ
・「大丈夫」
ピンときた上で、コルレオには(説明しても分かるほど情緒が発達してないから)モニカの心情が理解できないことを察して、「大丈夫」とだけ説明するエリシアは夫の短所も含めて受け入れてる妻の顔になってる。
・「泣き虫で強がりなところが好き」
奇遇ですね!俺もです。
最初から強がりだったしピンチになるたびに泣いてる。
痛くて泣くし安心して泣くし心配して泣くし。
戦闘だって得意なはずがない。
エリシアを庇った初めての戦闘だって、コルレオの手は震えていた。
本当は強くなんてないのに人のために奮い立たせることのできる勇気を「泣き虫で強がり」と表現できるエリシアは正妻そのもの。
エリシア、お前がナンバーワンだ。
ヒロインレースめちゃくちゃハイレベルだけど、今回冒頭の作戦会議でミネルヴァの話が出たときにコルレオの表情をうかがえるエリシアはやっぱり最強。
・「何それェ」
絶対このときいい顔してるし、モニカの方見て微笑んでる。
傘を持っているのに傘を差すことを忘れる間抜けな人の好さを、既にいつものことレベルで受け入れている。
いつの間にか夫婦レベルの理解度。
◆パンネロとベン
この二人からもいい味が出てるんだよな。
・「パンネロさんは強いだけなので助かります」
辛辣すぎて草。
序盤から登場するこの二人のやり取りが楽しい。
教え方はスパルタだし極限のピンチになるまで放置しようとしたら考えが古いって思われる上にミネルヴァに横やり入れられるしで、振り返ってみると確かに強いだけと言われても仕方ないパンネロさん。
グリシャの移動手段に制限があることを看破したのも結局戦闘スキルに基づく描写だし、弁当魔王への分析も強さの分析だもんなあ。
ただ、実際のところベンは「だけ」と言いつつその強さを信頼しているわけで、互いに強みを理解してる大人の関係が好きです。
・「拘束には最適って事ですか?」
「なんだね?」とかいい顔で言ってるものの理解できていないパンネロさんに対して趣旨をすぐに理解するベンは有能。
グリシャの「アリ」の理由が紋章術の攻撃性の有無にあったことは読めなかった。
とりあえずミネルヴァがすぐどうこうなるわけじゃなくてよかった。
◆その他
・カルナ大学首席の人
慌てて駆け込みながら状況伝えれば場面転換できると思い込んでいる、首席とは思えない単細胞っぷりがたまんねえ。
「わが子がドーベルマンにっ」のときもだけど、会話に尺を割く分場面転換に絶対にコマを消費しないという強い決意を感じる。
そして、このテンポが癖になる。
まあ、紋章術のない世界だから、どんな脱走方法があるかとか想像つかないだろうしな…。
よく考えたら西パーシモットって地球で考えると「アフリカにいた!」レベルの情報なんだけど、よくこの情報でさっきの汚名返上してやるって顔できたな。
・降霊
そんな設定まであるのか!魂的なものがあるってことになるかな。
魔々勇々世界、回想で「なんで死んじゃったんだ…」ってキャラが次々出てくるから霊って形で登場できると嬉しいな。
エヴァンの復活についてはストレートに考えるとミネルヴァの外見でエヴァンが喋りだすってことになるんだけど複雑な気持ちになりそうだな…成功してしまうと元のミネルヴァに会えなそうだからエヴァンの復活は違う形で達成してほしい。
◆まとめ
こういうの読みたかったって思った展開を、いつも予想以上に面白い形で出してくれて嬉しい。
エリシアが日常会話するところが見たいって更新直前に呟こうとしてやめたんだけど、ここまでいいものが見られるとは・・・。
掲載順が上がると心穏やかに読めますね。
油断せずアンケ出していきましょう!
◆魔々勇々関連記事・ブログ紹介
魔々勇々について語っているのは自分だけではありません。
お勧めの記事もブログもたくさんあるのですが、一気に紹介すると長くなってしまうので今回は二つ紹介。
・紹介1 記事【エヴァンのすべて①】
①!?この分量で続きあるの!?
というほどに熱意が込められたエヴァンについての記事。
自分の記事は所詮は感想の域を出ません。
ですがこの方は作品から広げた想像の翼でどこまでも羽ばたいていきます。
確かな知識に裏打ちされた作品世界の考察と、オタクかくあるべしと言わんばかりの熱量。
狙ってない(少なくともそうは見えない)のに思いをぶつけるだけで面白いのずるい…俺だってこんな感じのくすりと笑える文章書きたかった…
・紹介2 ブログ【魔々勇々感想・考察ブログ】
多分現在世界で唯一の魔々勇々専門ブログ(noteはブログとはちょっと違うと思っているので。)
長文感想を毎回読めるので非常に満足感が高いです。
このブログの特徴はなんといっても一コマ一コマまでじっくり読まねば書けない細部の描写にまで踏み込んだ考察。
水曜日頃の更新が多いのは、その間もじっくりじっくり読み込んでいるんだろうなあと勝手に思っています。
水曜日あたりになると感想の呟きも減ってくるのでありがたいタイミング。
あれ、あの話のあのコマって誰か考察してたのかな…って時にこのブログを確認すれば大体考察されてます。
感情のままに勢いで書く自分の感想とは違う視点の考察。
「魔々勇々 感想」で検索したときに、このブログと並んで自分の記事が最上位に出るのは魔々勇々ファンとして誇りに思ってます。
◆過去話等感想
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話 第13話 第14話 第15話 第16話 第17話 第18話
◆特別編 魔々勇々の魅力
◆特別編 1巻書影を語る
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