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佐久間マリ
2022年1月15日 13:45
こんなことしてもらえる作品になったんだな、堂道よ。 お前、愛されてるよ! 日頃より堂道広報大使のkazunano様がPR動画を作ってくださいました。 日々、不眠不休で、堂道の普及に多大なる貢献をしてくださってます!ありがとうございます! 堂道の怒鳴り声、ガニ股、眉間の皺。 リアルにゴミ箱を蹴る堂道を拝める日がいつかきますように。
2021年12月30日 16:10
濃い目の口紅をぐるりと乱暴に塗りつけて、ジャケットを脱ぐ。 薄手のブラウスに、今日はあえて目立つ色の下着を透けさせてある。 胸元のボタンを一つ分多く開けながら女性トイレから出ると、急いで階段に通じる重い鉄の扉を体で押し開けた。池手内が、しらじらしく糸の後を追って離席しようとしていたのが見えていた。 ここで同じエレベーターに乗り合ってしまうのはどうしても避けたい。「やばいやばい、早く早
2021年12月29日 07:39
糸は、いつかのリバーサイドにいた。手すりにもたれて暗い川を見ながら、買ってきた缶チューハイを一人で開ける。 酒が苦い。 息を吐いた傍から川風がさらって行く。 したためた辞表をくしゃと握りつぶした。「玉響さんが辞表を出すのは勝手だけど、キミが辞めたところで、ボクが写真公表しないって約束にならないよ」と池手内に先手を打たれている。堂道への腹いせには違いなかった。 しかし、写真を撮ら
2021年12月27日 07:04
「池手内課長ォ、コレもうちょっとわかりやすく書けねえんですかネェ?」「い、いや、それは夏原さんに頼んだら……」「お言葉ですが、夏原さんは課内でも特に見やすいレイアウトで資料を作る事務サンなんですけどネェ? まあ、例えば百歩譲ってこれを夏原さんが作ったとして、課長はそれを指導する立場にあるんですがネェ?」堂道が次長になって、直接平社員が怒られることは少なくなった。 当然ながら、その代わ
2021年12月25日 07:19
*堂道と草太が楽しそうに釣りをしている。 糸と小夜はそれをぼんやりと眺めていた。甲板の白の跳ね返りが眩しい。サングラスがなかったら目を傷めていただろう日差しの強さだ。「お金持ちってホント天然だよね。大学の時にいた社長令嬢を思い出した」あらゆるもの、ことに対して悪意がなく、マイペースだった彼女によく似ている。堂道母しかり、春子しかり、美麗しかり。「小夜も結婚したらあんな感じになるの
2021年12月22日 21:45
「玉響サァン」席の後ろに立った人に名前を呼ばれ、糸は振り返った。 見上げると、見慣れた、けれど会社仕様の堂道次長。 疲れた顔は、仕事が忙しくて残業続きだからだ。「次長。なにか?」「ちょっと」「はい」堂道の後についてフロアを出るのに、痛いほどの視線を感じた。みんなが固唾を飲んで見守っているのがわかる。交際は、隠していないが公にもしていない。 堂道が次長となって本社復帰後
2021年12月20日 09:24
「人間、早々変われるモンじゃないよねー」「あー、久し振りだわー。この不快感」小夜と夏実が腕組みして眺めている。 その姿は『腰かけ感』より『お局感』が出てきてしまったまさに中堅アラサーOL。「昔、羽切さんにもらった耳栓、まだ引き出しの奥にあったような」「糸の嫁になって多少はいい人間に生まれ変わったかと思いきや、イヤ、ほんと三つ子の魂百までって言った昔の人はエラいわ。堂道は腐っても堂
2021年12月18日 07:00
ショッピングモールを出て、歩いて帰る。 昼間は新しい街並みも、夜になれば暗さが目立つ。 オレンジ色の外灯に照らされ、おもちゃのような家がテーマパークさながらに立ち並ぶ中は、堂道にはあまりにつかわしくないかわいらしい風景だったが、そのなかを買い物袋を片手に、二人で並んで手を繋いだ。「でも、やっぱり聞きたいです」「なにを?」「雷春さんと何があったか」「だからー、ないって言ってんだ
2021年12月16日 18:05
「それから二回突撃して、明日また行くの」 安い居酒屋は混み合っている。 小夜と草太に語って聞かせると小夜は涙をぬぐう真似をした。「糸、無敵すぎだよね。けなげで泣けてくるわ」「糸ちゃん、それ絶対ゲシさん嬉しいから。喜んでるから」「そうだといいなぁ」 糸は言って、生ビールをぐいと煽る。 最初にアポなしで訪れてから、糸は一か月に一度の割合で堂道を訪ねている。 一回目は前述のと
2021年12月17日 07:24
二年間、離れている間にはけんかもあった。 この時以外にもさみしくて八つ当たりしたこともあったし、辛くて泣いたこともあった。 すれ違いで、さすがにもう無理だと弱気になったこともなくはない。 しかし、今日新幹線に乗る糸はうきうきしていた。もうそんなことは全部、綺麗さっぱり忘れてしまっていた。 新幹線のチケットは久しぶりに自分で買った。 堂道に一応は歓迎されるようになってから、あらかじめ約
2021年12月16日 19:22
「……ひーん! やっぱり来てましたぁ……」「あ、そう」 リビングに戻ると、堂道が紅茶を入れてくれていた。 ティーバッグの紐がマグカップから所在なさげに垂れ下がっている。 明るい部屋で、スウェットと白いTシャツ、洗いざらしの髪の堂道を久しぶりにちゃんと見て、糸は、またこの人を好きになってしまったと思う。 堂道が買ってきてくれたものは、二種類の生理用品と二枚のショーツ、鎮痛剤とプリンだ
2021年12月16日 18:29
「お邪魔します……」 部屋に入るのは最初に突撃した日以来だ。 しかし、あの日のような興奮はなかった。 金曜日の夜は願ってもない展開を見せているのに、居酒屋からずっと、おいしくないものを食べたときのような、何とも言えない気分が糸の感情に横たわっている。 身体の中心から、負のものに蝕まれているような鈍い痛みがある。「……部屋、だいぶ片付きましたね」「まあな」 積み木のように積ま
2021年12月16日 06:56
戻ってきた堂道はやはり怖い顔をしていた。店には、ただ糸を迎えにきただけで席に着く様子もなく、糸がすでに飲み干していたアイスコーヒーのトレーをご親切にさっさと片付ける。「あ、すみません!」糸は慌てて立ち上がり、隣の席に置いてあった荷物を掴む。 いつもより大きめの鞄だ。「なんで来たんだよ」店の外に出ると日が暮れかかっていた。次第に暗くなっていく空とは逆に、気分はいくらか明るくな
2021年12月14日 22:39
引っ越しや新しい職場環境に堂道の身辺が落ち着くのを待ち、糸が実際に強行突破したのは離れ離れになってから三ヵ月後のことだった。 その間も連絡は取っていた。 とりとめもないメッセージを毎日送った。以前のように無視はされなかった。わりとマメに返事がきた。 しかし、「会いに行っていいですか」にはダメの一点張りで、そのうち、NOのスタンプ返しだけで済まされるようになったので糸も尋ねなくなった。