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「パーセプション」戦略は、相手がどう思うかが大事なら、独りよがりブランドは消えていく

こんにちは、服部(はっとり)です

企業にとって"ブランディング"が大切と言ったりします。しかし、それは独りよがりな目線だけになっているかもしれません。今日は自社から発信するブランディングではなく、他者がどう受け取るかを考える「パーセプション(PERCEPTION)」のお話です。




パーセプション 市場をつくる新発想

パーセプション 市場をつくる新発想 - 本田哲也

最近、「パーセプション」に関する本を読みました。「パーセプション 市場をつくる新発想」、著者は本田哲也さん。「戦略PR」という、かれこれ15年ほど前の本ですが、マーケティングをやる上ではバイブル的な本を書いた方です。

今日はこの本の中で紹介されていた事例から、服部(はっとり)が感じたことや発見を書いていきたいと思います。定義など詳細を知りたい方は、ぜひ本書を読んでみてください。


「パーセプション」とは何か?

パーセプションは、よく言うブランディングとは異なります。以下のように表現されていたが、主体はブランドや企業側ではなく、それらを受け取る人たちがどう受け取るかが重要な点です。

パーセプション:知覚、理解、認識 = モノゴトの見え方・捉え方
パーセプションをコントロールすることで、トレンドを生み出すこともできるだ。(略)この時代における情報発信は、もはや認知を争う戦いではない。認識の戦いなのだ。世の中のトレンドの裏側で、消費者のパーセプションの変容はなぜ起こるのか。企業は、商品やブランドにとって好ましいパーセプションをどう維持すべきなのかを考えるべきだろう。

パーセプション 市場をつくる新発想

パーセプションの発想は経営からマーケティングまで、広くさまざまな仕事に関係するということだ。新商品の市場投下を成功させたい、歴史あるブランドを活性化させたい、企業広報で会社に新しいイメージをつけたい、スタートアップ企業の経営を成功させたい。その全てに、パーセプションは関係してくる。
マーケティングや広報活動におけるパーセプションのコントロールは、世の中から商品やサービスに向けられる認識を新しくつくり出したり、変化させたりすること

パーセプション 市場をつくる新発想



アリエールがインドで取り組んだパーセプション活動

テキストだけでは少しわかりづらいので、パーセプションを肌感覚で理解するために一つ事例を紹介します。

まずは、P&Gアリエールがインドで実施した「Share the Loadキャンペーン」が興味深いです。インドに家事や洗濯は女性がして、男性は何もやらないという風習があります。その背景に対して、このキャンペーンでは「なぜ女性だけが洗濯をするのか?」というメッセージをつけて、これまでの当たり前を疑問視し、社会へ問いかけることで、パーセプションを作り上げました。


特にこのアリエール事例で驚いたことは、洋服の洗濯タグに「CAN BE WASHED BY BOTH MEN AND WOMAN #ShareTheLoad (男性も女性も洗濯できます)」という記載をアパレルメーカーと共同で作り、世の中のミーム化を促進した点だと思っています。もはや一つの商品を販売することが目的ではなく、「世界や慣習を変えるために販売する」という考えがすごい。

このように、アリエールを売るのではなく、市場や社会への問いかけや、概念を変えることの投げかけを行うことで、人々の認識が変わった新しい市場ができて、その領域で好印象を得ていた自社商品が売れる(選んでもらえる)と言う流れに落ちていく。自分たちを主張するブランディングとは大きく異なりますね。


パーセプションとブランディングの関係性

P&Gのキャンペーンに学ぶ ブランドとパーセプションの関係

では、パーセプションとブランディングはどのように異なるのでしょうか?もちろん重なり合う箇所もあります。その境目を「オーセンティシティ Authenticity(信頼性、真正性など)」と言います。このオーセンティシティは、パーセプションとしての世の中がどう認識するかと、ブランディングとしての企業が何を伝え行動するか、のどちらの要素も持ち合わせています。

そのため、実際は、パーセプション側の世の中に訴えかける行為だけでもダメですし、企業側が言いたいことや伝えたいことだけしてもダメ。その両者の良い点を意識しつつ、弁図が交わるオーセンティシティを意識することが重要になってきます。


企業はオーセンティシティを満たせているか?

オーセンティシティの調査モデル from フライシュマン・ヒラード社

そのオーセンティシティの調査モデルを、FleishmanHillard(フライシュマン・ヒラード)社が3つの要素に分けています。

  • カスタマーベネフィット(消費者ケアや価値、イノベーション)

  • ソサエティーアウトカム (環境や従業員ケア)

  • マネージメントビヘイビア(信頼できるコミュニケーションや正しい行動)

企業は、仮にパーセプションとブランディングの条件を形上は満たせていたとしても、本当の意味で行動ができているかが問われてきます。オーセンティシティにあるように、その行為自体が消費者ケアや価値提供に繋がり、環境や従業員ケアに繋がり、正しく信頼できるコニュニケーションができているかが問われるのです。それらを満たしていないのにあたかも意味ありげに行動しても、受け手にはパーセプションを信じてもらえないという側面も持ち合わせています。


ジレットが伝える「最高の男性」とは

オーセンティシティを考える上では、Gillette(ジレット)が発信した”We Believe”がとても参考になります。ジレットは長年に渡って、「最高の男性」を軸にブランディングもプロモーションも行ってきました。ただし、時代と共に、男性という定義は変わっていきます。

そんな中行った"We Believe"は、あくまで企業として伝えたいメッセージ(最高の男性)という軸はぶらさない表現を行いつつ、その「最高の男性」の考えをアップデートしていくような伝え方をしています。様々な賛否両論があったみたいですが、きっと「正しくありたい」、その信念さえあれば伝わるものがあるんだと感じました。


Sansanの名刺は紙ではなく人脈の資産

他にも、名刺管理のSansanやEightの話もとても面白いです。特にアプリで名刺管理をして、手間を省き、「人脈を資産にする」と言うメッセージを伝えるために作られた「Eight Business Cards」ムービー。自分たちのメッセージをコミカルに描きながら伝える表現は考え方やメッセージの伝え方の参考になります。


固定概念にメスを入れる

アリエールもジレットもSansanも、自分たちの企業や商品の本質を変えた表現ではないことが面白いです。その軸を変えずに、社会の中や流れにどうアジャストやフィットさせるかということを深く考えて行っています。

もしかすると、市場のパーセプションを作り上げるのであれば、今の社会で「これって本当はおかしいよね?不自然だよね?不平等だよね?」という多様性が成されていない部分に注目して、自社製品とのメッセージの交わりを探し、販促キャンペーンにすること。これが企業と市場のオーセンティシティが合致できる一つの手法なのかもしれないと感じました。

今、マーケットに擦り付いた固定概念的な考え方。それは企業側も消費者側も持っている可能性があります。でも、その固定概念以外に、少し楽しく新しい選択肢があることを知ってもらえたら、消費者や利用者のマインドや日々の慣習は変わり、新しいパーセプションを作れるのだと思います。

あなたの企業や商品、サービス、またあなた自身にも、パーセプションの考え方は参考にできるものがあるかもしれません。


他にもパーセプションの五段活用カテゴリに合わせて、さまざまな事例が挙げられているので、読んでみるとよりイメージが湧くかと思います。

パーセプションを「つくる」:新たなる認識の創造
 事例:アリエール、atama+、uno BBクリーム、sansan
パーセプションを「かえる」:認識変容の実践
 事例:サンリオ、ラムネ、バカルディ、メルカリ、GoPro、メゾン・ロココ、Zoom、ジレット、ワークマン
パーセプションを「まもる」:好ましい認識の維持管理
 事例:大戸屋、ベビースターラーメン、吉野家
パーセプションを「はかる」:既存認識の計測分析
 事例:ポーラ、味の素、ロッテ、花王
パーセプションを「いかす」:社内広報や商品開発に応用
 事例:NTTデータ、キッコーマンインド、Cuzen Matcha
その他事例:yogibo、TOYOTA、山崎ぱん、エアークローゼット、ワービーパーカー

パーセプション 市場をつくる新発想

本書はこちら↓



それでは、今日はこの辺で。



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Kazuma Hattori | デジタル広告・マーケの人 @KazumaHattori


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