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IPA「DX白書2021」を読み解く(3)

この記事では、DXに携わる経営者や事業部門リーダー、またSIer・ベンダーの方向けに、2021年10月11日に情報処理推進機構(IPA)から刊行された「DX白書2021」を読み解いていきます。

(1)では、白書の位置づけ、本編第1部、本編第2部について。
(2)では、本編第3部について触れました。

DX白書2021を読み解くシリーズは、この(3)が最後です。


■第4部:DXを支える手法と技術

第4部は、以下のように構成されています。

第4部 DXを支える手法と技術
第1章 開発手法・技術
第2章 データ利活用技術
企業インタビュー

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■第4部 第1章:開発手法・技術

この章では、DX推進にあたり変化に応じた迅速かつ安全なITシステムの更新や外部サービスとの連携を実現するための企画開発手法・技術が紹介されています。


■第4部 第1章 ➀企画開発手法

VUCA時代の環境変化に対応するには、「顧客志向の徹底」と「デジタル技術の活用」がカギとなる。

そこでキーとなるのが、以下の4つの手法。
デザイン思考:消費者の本当に欲しいサービスを探る
アジャイル開発:変化する要求に対応する
DevOps:安全にリリース・運用・改善し続ける
ノーコード/ローコードツール:システム開発を効率化する

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以下、各手法・ツールを超概観。


□デザイン思考
デザイン思考とは、課題の発見から企画・デザインまでデザイナー的な思考プロセスを取り入れてプロダクトやサービスの検討に適用する、人間中心のイノベーションへのアプローチ
5つのステージがあり、柔軟にそれらを行き来する。

① 共感(Empathise)
② 問題定義(Define)
③ 創造(Ideate)
④ プロトタイプ(Prototype)
⑤ テスト(Test)

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デザイン思考に関して、書籍などでより深く知りたい方は、こちらをどうぞ(でも、実践がいちばん!)。


□アジャイル開発
アジャイル開発とは、体制の作り方や運用の仕方に関するプラクティスを含む手法・および思想。ユーザーの要望が頻繁に変化するなど、サービス提供のタイミングやきめ細かい改善がより重視される分野あるいは事前に予測困難な要素を多く含む技術・事業領域において特に効果を発揮するもの。

DX白書2021では、アジャイル開発手法の中でも代表的な「スクラム」を例にとり、以下の観点で解説されている。
(ア) 経営層の理解と報告
(イ) アジャイル領域の見極め
(ウ) プロジェクト体制

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□DevOps
DevOpsは、従来、分業・分断されていた開発(Dev)と運用(Ops)の担当者がそのシステムやサービスのビジネスゴールを共有し、テスト・構成管理・デプロイ等をできる限り自動化することで、スピードと品質を担保したうえで、柔軟かつ迅速な開発を目指す手段。

アジャイル開発とDevOpsを併せて導入すると、リリースサイクルの短縮や品質の向上の観点で大きな恩恵を受けられる。

基本的なコードデプロイプロセスのステージ。
・コードコミットステージ
・機能試験ステージ
・性能試験ステージ
・ユーザ受入れ試験ステージ(自動化対象外)
・本番リリースステージ

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コードデプロイプロセスを支える要素
(a) 構成管理(Configuration Management:CM)
(b) CI/CD(継続的インテグレーション:CI/、継続的デリバリー:CD)

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□ノーコードツール/ローコードツール
近年はアプリケーションの開発ツールとして、プログラミング言語無しで実装可能なノーコードツールや、簡単なプログラミングで実装が可能なローコードツールが注目を集めている。
スピードとアジリティが必要とされるアジャイル/DevOpsとの相性も良い。

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■第4部 第1章 ➁ITシステム開発技術

本節では、昨今のITアーキテクチャーのトレンドの変遷を振り返り、現在主流となっている考え方を踏まえ、DX時代に求められるITアーキテクチャーの特徴が整理されている。


□背景~ITアーキテクチャーのトレンド変遷
1980
年代末まで:メインフレーム
1990年代:クライアント・サーバーシステムによるオープン化(脱メインフレーム)
2000年代:インターネットの普及によるWeb化/オブジェクト指向開発
現在:スマートフォンやクラウドの積極的な利用/SOA(Service Oriented Architecture)
今後:ブロックチェーンや5Gなどの新技術が普及/マイクロサービスアーキテクチャー

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□技術概要
アジャイル開発・DevOpsなど高頻度の変更要請に耐えられるアジリティの高いITアーキテクチャー構築については、EA(Enterprise Architecture)の構造を把握すると理解しやすい。

ビジネスとデータの2階層については、ビジネスモデルが変化しない限り、大きく変わらない。一方、アプリケーション、テクノロジーの2階層においては技術の進化が速く、技術トレンドの移り変わりも激しい

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白書ではテクノロジーアーキテクチャーとしての「クラウド」と「コンテナ」、アプリケーションアーキテクチャーである「マイクロサービスアーキテクチャー/API」について説明する。


□クラウド
クラウドの明確は定義はなされていないものの、米国国立標準技術研究所(NIST)の2009年の公表資料では、「オンデマンド・セルフサービス」「幅広いネットワークアクセス」「リソースの共用」「スピーディな拡張性」「サービスが計測可能であること」の5つの特徴を併せ持つものとされている。

クラウドの代表的なサービスパターンにはIaaSとSaaSがあるが、近年の技術動向も踏まえたクラウドサービスの提供パターンは以下の通り。

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□コンテナ
コンテナを理解するための比較対象としてサーバー仮想化がある。

サーバー仮想化:1台の物理サーバーをあたかも複数台のサーバーであるように利用できる仕組み。多様なOSやミドルウェアなどを必要とする開発環境の構築を容易かつ素早く実現できるというメリットがあり、開発環境構築という点でも必要不可欠な技術となった。

コンテナ:仮想化と異なりと異なり、OSを含まない形でアプリケーションの実行環境をパッケージ化したもの。サーバー仮想化よりも高速に実行環境を構築したり、移行・起動・削除することが可能となり、より早くシステムを開発し顧客に届けるというビジネスニーズに応えるための技術として注目が集まっている。

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□マイクロサービスアーキテクチャー/API
マイクロサービスアーキテクチャーとは「あるサブシステムでの変更が、他のサブシステムにおよびにくくする」ことを目的としたAPI(Application Programming Interface)による疎結合化を強く推し進めたもの。

マイクロサービスは2014年にJames Lewis氏とMartin Fowler氏によって提唱され、以下図に示す9つの特徴を持つとされる。

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マイクロサービスにおけるアプリケーションアーキクチャーの観点の特徴としては、以下に示す3点が重要となる。
(a) APIによる疎結合化
(b) 個々のサービスに閉じたデータ格納
(c) データ内容の一貫性に対する妥協

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■第4部 第1章 ➂開発手法・技術の活用状況と課題

日米における開発手法の活用状況については、いずれの手法も米国企業での活用が日本企業の活用を上回っている。
米国企業では、各手法の活用状況の傾向が似ており、各手法がセットで活用されている可能性がうかがえる。顧客に新しい価値提供をするためには、適切な開発手法を選択し活用することは極めて重要である。IT部門と事業部門が連携することによって「デザイン思考」などの活用促進が望まれる。

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■第4部 第2章:データ利活用技術

この章では、予測困難な外部環境変化に俊敏に対応するためのデータ活用基盤技術、さらにはAI技術、IoT技術、が紹介されています。

非常に細かい内容になるので、ここでは2点だけ。

データ利活用に関する技術の活用状況
すべての技術において日米差は大きい。特に顕著なのが「データ整備ツール」。「全社的に活用している」が日本企業の6.8%に対して米国企業は50.1%と約7倍になっている。

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データ整備・管理・流通の課題
日本企業では、「全社的なデータ利活用の方針や文化がない」「データ管理システムが整備されていない」「人材の確保が難しい」といった項目が課題。
米国企業では、データ分析の活用を推進するChief Data Officerの任命や、データ分析を組織横断的に推進するCenter of Excellenceを設置するなどの施策によって、こうした課題の解決を図っている。
日本企業においても組織的な対策が望まれる。

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DX白書2021を読み解くのは、ここまで。

興味を持っていただいた人は、ぜひとも白書を実際に手に取ってみてください。無料でとてつもない情報が手に入り、とっても役に立ちます。


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