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音楽が国境を越えるなんて嘘だと思ってた 〜アメリカライブツアー4日目〜

2024年11月10日。
朝8時。人ではない何かの視線を集中的に浴びているような気がして目を覚ます。

視線がする方に体を向けて目を開けると、3匹の犬がすぐそばで自分をジッと見ている。体どころか尻尾すら微動だにしない。

彼らはゴーストではなく、前日から泊めさせていただいている家の犬たち。どうやら朝の散歩を終えて帰ってきたらしい。

昨日は結構歓待してくれたように見えたけど、今日は自分に絡むでもなく吠えるでもなく「あんたなんでそこにいんの?どいて?」とでも言いたげな表情だ。もしかしたら、今自分が寝ているリビングのソファが彼らの定位置なのかな?

すると、家の奥さんが「○×※△■%$!?」と英語で叫ぶ。犬たちはすぐに声のする方へ行った。なんと賢い。奥さんも気遣ってくれてありがとう。

フルハウスの世界観と食文化のギャップ

とはいえ、目は覚めてしまったので、スマホを見たりして時間をつぶす。地図アプリで確認したら、この家からメキシコ国境までは車で20分ほどだった。自分はあてもなく長時間散歩するのが好きなので、その気になったら歩いていけるくらいだ。

13時頃まで身支度をしたりダラダラして過ごす。天気が良さそうなので外に出ると、ギターさんが外でのんびりしていた。家の近所を少し散歩したらしい。

「近くに大きいスーパーがあるみたいなんで、散歩がてら行きましょう」と誘ってくれたので2人で歩く。道はまっすぐで高い建物もない。快晴でとても気持ちが良い。陽射しが強すぎて11月なのに5分も経たないうちに汗が出始める。でも、日本よりも乾燥しているせいか、そこまで不快には感じなかった。

立ち並ぶ家々は映画やドラマで見るアメリカの家そのもの。昔「フルハウス」っていうアメリカのホームドラマがやっていたけど、あんな感じ。芝刈り機で庭の芝を刈っている家もあれば、家の前で洗車をしている人もいる。どこかの家からはドラムを演奏している音も聴こえた。

住宅街を抜けると大通り。その道も4車線ずつあって広い。スーパーは近くの交差点の角にある。道の真ん中では、サンダル履きの黒人男性が何か書いてあるダンボールを掲げて立っていた。ヒッチハイクをしているんだろう。

着いたのは「H-E-B」というスーパー。テキサス州とメキシコの一部のみで展開しているスーパーなのに売上は6兆円もあって、小売業界では全米第6位らしい。日本で同じ売上規模の会社を調べてみたら、ソフトバンクと一緒くらいだった。

店内に入って食べ物や飲み物を探す。ほんっっっっっとうに失礼なことを言って申し訳ないけど、アメリカの食文化はまっっっっったく自分には合わない。何を見ても食欲を掻き立てるものはなかった。

「unsweet tea」と書かれたお茶があったので、午後ティーみたいなもんかなと思って買って飲んでみたけど、それも口に合わない。コーラとスプライトを買い直して飲みながら店の外でぼんやりする。

程なくして、昨日からお世話をしてくれているデービットの運転で、他のメンバーたちも店に来た。みんなの買い物について回ったり、イートインで軽い食事をとっているところに同席。みんな何か食べていたけど、自分は食べなかった。

その後、また家に戻ってまったり過ごした。この旅で初めて日中にのんびりした。

これぞアメリカな住宅街。
テキサス州の大手スーパー「H-E-B」。イオンモールをちょっと小さくしたくらいの大きさ。
よく見ると奥にはバーガーキングも。滞在中は行かなかったけど。

音楽は国境を越えるのかもしれない

18時頃に家を出る。昨日仲良くなったホセ君にもお礼を言って出発。30分ほどでマッカレンという街に着いた。

今日のライブは外。「Tropicasa」という雑貨屋兼バーの横にあるスペースでの演奏だ。

デービットが店の前に停まっている何台かの車の間に停めようとする。でも、縦列駐車が苦手らしく、店の前にいた50代くらいの白人男性に声をかける。どうやら代わりに縦列駐車を頼んでいるみたいだ。いつだったか「ウンテン、コワイ、キライ」と言ってたっけ。

すると男性が運転を変わり、いとも簡単にでかいバンを車と車の間に滑り込ませた。一同拍手喝采。

どうやら男性は店の関係者のようで、後で聞いたら彼のガールフレンドがDJをしていて、昨日このバーでjohannの曲をかけてくれたらしい。メンバーさんたちもその話を聞いて喜んでいた。

この日は珍しく自分たちを含めて3バンド。他の2組はシューゲイザーっぽいバンドとロックバンドだった。どちらも若い。特にシューゲイザーバンドの女性ボーカルの歌がめちゃくちゃ上手かった。

初めこそ客足はまばらだったけど、事前に告知がされていたようで、日本のインストバンドが来ることを知ったお客さんが後からどんどん入ってきた。隣の店にも待っている人がいたみたいだ。

20時半頃からjohannの演奏開始。この日もPAさんはデカい音がほしいようで、ギターさんは「もっとボリューム上げろ!」と言われたらしい。そう言われたのが嬉しかったらしく、かなり高いテンションで楽しそうに演奏しているように見えた。演奏を楽しんでくれていると、サポートしているこちらも嬉しい。

ステージがあるわけではなく、地べたにアンプを置いて演奏するフロアライブのような状態なので、お客さんは前だけでなく横にも後ろにもいる。

演奏しながら周囲を見渡すと、かなりのお客さんに囲まれた状態だった。とてもとても盛り上がっていて、こちら以上にお客さんの体が動いていた。

メキシコに近いこともあって、ラテン系の顔立ちの人が多いから、本場のDNAを持っている人たちにノってもらえるのもまた嬉しい。デービットやイベント運営・音響まわりをやってくれている人たちも誇らしそうに自分たちの演奏を見守ってくれている。

そんな景色を見て、あんまり信じてなかったけど「音楽は国境を越える」みたいな話をする人は、こういうことを言ってるのかなとも少し思った。

40分ほどで演奏が終わると、物販に人がめちゃくちゃ並んでいた。メンバーさんたちもカタコトの英語だけど、嬉しそうに楽しそうにお客さんとコミュニケーションをとっていた。サインも結構書いた。盛り上がって本当に良かった。

金網の向こう側で演奏中。ずっと奥に見える屋根は普通のアパートとのこと。ご近所さんも理解があるらしい。
両脇がコンクリート+屋外という組み合わせでの演奏も珍しいかも。でも、やりづらさは全然なかった。
物販は長蛇の列。サポートではありますが、サインもさせていただきました。

半○レ、国境警備、霧、ハンバーガー…感情が大忙しの帰り道

21時半頃には会場を出て、今日はこのままサンアントニオに戻ることになっている。会場を出てすぐのガソリンスタンドに寄って燃料を入れることになった。

ところがこのガソリンスタンド、なぜかめちゃくちゃ混んでいて、車が相当停まっている。しかもかなりの爆音。日本で言う「ヤン車」のような感じ。

たむろしている連中もガラが悪い。日本で言う「半グ○」のようだ。自分たちが取り囲まれているようにも見える。デービットも本気か冗談かはわからないけど「コワイヨ〜」と日本語で言っていた。ちなみにデービットは190cm近くあって、NBA選手みたいな体格の良い人だ。

燃料を入れ終えて、無事ガソリンスタンドを脱出。しばらく走っているとデービットが「パスポートの準備をして!」と言う。どうやら国境警備のチェックポイントがあるらしく、そこにいる警備員さんたちにパスポートを見せる必要があるという。

チェックポイントは日本の高速道路の料金所みたいな感じ。迷彩服の警備員さんにデービットが説明をしている。全員分のパスポートを見せたり、他の警備員さんがトランクを開けて荷物を目視したり、簡単なチェックを済ませる。デービットが「アリガトウ」と警備員さんに日本語で言うと、警備員さんも「アリガトウ!」と返してくれた。結構いい人たちじゃん。

その後は、この旅3度目のワタバーガーで遅めの夕飯がてら休憩。今のところ、ここのハンバーガーが一番口に合う。ドリンクに忌まわしき「unsweet tea」の文字があり、ちょっと迷ったけど飲んでみる。日本の午後ティーに近い味がして、美味しくて心からホッとする。ワタバーガー愛が止まらない。

サクッと食べて帰るも、フリーウェイは途中からとんでもなく濃い霧に覆われた。デービットもこの日何度目かの「コワイヨー」を発動。これは運転慣れしている人でもこわいと思う。

ゆっくりゆっくり北上すると霧も徐々に晴れて、午前3時に無事サンアントニオに到着。運転ありがとう。本当にお疲れ様でした。

シャワーを浴びたらいい感じで眠くなった。こっちの時間に体が慣れてきているみたいだ。国境警備の場所を地図アプリでピン留めしておいたので、横になりながら見てみると、こんな場所にもクチコミが書かれていた。

「彼らは礼儀正しかった」「プロフェッショナルな対応だった」などなど。ちなみに星は3.8。

でも、中には「警備員が感じ悪かった」「なんかバカにされた気がした」なんて低評価も。「車の中にいたペットの犬が警備員を怖がって大汗をかいていた。あいつらなんなん?」なんてクチコミもあった。

国境警備も大変だな…と思いながら眠りについた。

<続く>

地元の珍走団に取り囲まれかける。

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