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階層別研修の作り方⑥ ~階層別研修と他の研修って何が違うの?後編~

【この記事は以下の読者様を想定して書いています】
・人事担当者様
└なかでも、教育や育成の担当者様

【この記事を読むことで得られること】
シリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!

【登場人物】
▼ホッソン(細野 和彦):

研修作家、人事コンサルタント。㈱ハブプロダクト代表取締役。年間250日以上の研修プログラムを設計から実施まで行う。 自ら講師としても登壇する一方、近年はHOMEROOM、ROGCHECK、RE:CAREERなどの育成プロダクトを世に送り出す開発者でもある。㈱ログシー 育成支援事業部 統括。好きな食べ物は鶏料理。

▼さくら(鈴木さくら):
キャリアコンサルタント、研修講師。航空会社→ホスピタリティ系専門学校→独立。キャリアコンサルタントは天職で、主に企業や大学でキャリアコンサルティングを行う。育成にも力を入れ、キャリアコンサルタント養成講座の講師も務める。ホッソン主宰の研修講師育成塾の第一期生で、師弟関係でもある。好きな食べ物はエビフライ。


◆日本は研修においてもガラパゴスだった?!

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さくら:研修作家であり、人事コンサルタントである細野さんから見て、階層別研修をもっと導入する企業が増えればいいのになって思いますか?


ホッソン:これは難しいな・・・ちょっと話が飛ぶかもしれないけど、世界で階層別研修みたいな研修を実施しているのって、たぶん日本だけなんじゃないかなと思ってるんだよね。


さくら:ああ~!なるほど、たしかに欧米はジョブ型ですものね。


ホッソン:そうなのよ。だからスキルマッチでしょ。事業がそのスキルを必要としていたら雇用するけど、その事業が一気になくなってある日突然ファイヤーされるっていうのが一般的だよね。日本は解雇がしづらい国だから、その中でむしろ人材育成をしなければいけないっていうガラパゴスな状況があるよね。

だから今の日本って世界から見るとやっぱり特殊で、僕らがやっている階層別研修はどこまでの企業に必要なのかなって思う節もある。もしも、日本がこれからどんどんジョブ型になるんだったら、「自分でマインドセットしてきてね」っていうテーマになるのかもしれない。ジョブ型採用が進むのであれば僕らのやっている研修は増えなくてもいいんじゃないかなと思う。ひょっとしたら、階層別研修が増えないことで日本が強くなるのかもしれないね。ただ、現時点では僕らが研修をやることによって、組織強化の一助となっている。だから世界から見たときには、一概に「階層別研修をもっと導入する企業が増えればいいよね」とは単純に言えないかな。


さくら:おもしろい比較ですね。日本と海外を比べたときに、階層別研修を実施しているのって日本だけなんじゃないの?って。


ホッソン:以前、青山学院大学の研究ゼミ生と一緒に論文を書いたのね。その研究論文のテーマは「世界の就職活動」。そこで面白かったのが、例えばドイツだと小学校の時に進路を決めないといけないとか(※1)。学ぶ環境が全く違うから、日本でいう「就活」の概念がない国があったり。身分制度がまだある国では、学べること自体がすごい貴重なので、行った学校で就ける仕事が決まってしまうっていうのがあったりね。世界の就活事情のお話を聞いていると、じゃあ僕らがやっている階層別研修は世界では通用しないのかもしれないなって思ったよ。

※1:ドイツでは、小学4年生終了時に「高校進学・職人・実技修得」の進路を選ばなければならない。

《参考サイト》
▼世界の就活事情
▼世界の「就活」ってどんなもん? 新卒&転職を「アメリカ・香港・スペイン・ベトナム・ドイツ」で追ってみた
(世界と日本の就活の違いがなんともおもろいです!)


さくら:小学生のときから進路が決まってしまうのは、途中で軌道修正とか進路変更ができないから、よほどキャリア教育が早々からちゃんと着手されていないといけないですね。


ホッソン:そうなのよ。6か国ぐらい調べたけど、「世界から見たときに、本当に日本の新卒一括採用って特殊だよね」と。しかも生産性が悪い。でもその中で、平等かつ平均的に人材育成を行う環境と予算を取っている会社が多いので、僕らがやっている階層別研修が増えすぎるのはどうなのかなって思うかな。


◆ジョブ型採用が出ようが、この先も新卒一括採用はつづく

さくら:この流れでもう一つお聞きしたいんですけど、細野さんのお立場から日本の新卒一括採用について、どう思いますか?


ホッソン:これはね、日本の構造問題に話が飛ぶんだけど、今年34歳以下の方々からゆとり教育が始まって、個人軸で個性をちゃんと磨いていきましょうっていう路線になったよね。政府の方針として、個人でキャリアを考えたり選択したり、スキルを身につけたりっていう方向にいった。これ自体、僕はよいと思ってるんですよ。

ただ、だったら大学の数を減らさないといけないよねと思う。ちゃんと個性を伸ばすって言っている先の大学が増えすぎて、学生数と大学の定員数の需給バランスが崩れた結果、入学することがあまりにも安易になった。入学後もせっかく個人の個性個性といっていたのに、4年間在籍して退学してほしくないから進級も卒業も審査が甘くなり、専門教育が中途半端なんだよね。個性が見えづらいため結果的に「新卒一括採用」せざるを得ない。間口が狭く専門性が身についていれば、学部2年生でも3年生でも就職すればよいし、ジョブマッチで採用すればいいんだけど、構造的にそうはなっていない。

結果、一括採用した人たちを一括で教育しないと組織で通じなくなってしまうという、構造の問題かなと思っているんですよ。だから僕の立場から言えるのは、仕方ないよねっていう感じかな。そういう大きな構造の中で僕たちはお役目があるのかなって思ってる。

さくら:その構造の問題から見ると、大学受験の話にも及びますよね。日本の今の大学受験って、もうだいぶ前から問題提起されていることですし。でも大学受験を変えるならば、そもそもの日本の義務教育を変えないといけない。全部連動していますからね。大きな構造の中で全部密接に関わって今があるから、ある一部分だけを変えるっていうのはなかなか着手しづらいところですよね。


ホッソン:そうね、今のその一括採用に関して言うと、現状維持で行くしかないんじゃないかな。ジョブ型採用にアンテナを張る学生は、年間80万人ぐらいいる大学生の中で、0.00何パーセントくらいだよね。あと、有効求人倍率も高くて、学生の売り手市場はもう変わらないと思うから、今後もおそらく二極化になるんじゃなくて、ジョブ型は本当に少ないままだと思う。やっぱり一括採用でいった方が今の構造的には合っているんじゃないかなとは思うよね。


◆とくに階層別研修を導入したほうがよい会社とは?

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さくら:一括採用がこの先もなくならないんだろうなと想像がつきました。であるならば、階層別研修も今後なくならないってことですね?


ホッソン:うんそうだね。組織とは?っていうベースになることや、若いうちから自責で考えさせてちゃんとそこで地に足つけて働いていこうよ、リーダーの役割って?管理職の管理範疇とは?などは、なくなりはしないと思う。ただ、たとえば前回説明した「マインドセット・スキルセット・メンタルヘルス」の3つのバランスは時代によって求められるものが変わって、強弱をつける必要はあるのかもしれない。マインドセットをちょっとにして、スキルセットをもう少し増やすとか。メンタルヘルスもちょっと広げてほしいみたいなのは出てくると思うけど、構造的な考え方でいくと、なくなるっていうのはないと思うよね。


さくら:今回のお話で意外だと思ったのは2つあって、1つ目は階層別研修よりも職種別・業種別研修の方がニーズが高いっていうことでした。2つ目は階層別研修を年間で受注して、各企業のニーズを踏まえて設計して、常にブラッシュアップを図っている細野さんはもっと階層別研修を広めていきたい、導入してほしいと思っているんじゃないかなと思っていたんですが、それが違ったことでした。


ホッソン:うんそうだね、話が逆転するかもしれないけど、スキルマッチとかジョブ型採用とか、中途でガンガンキャリア採用しかしてないっていう会社に関しては、ひょっとしたら僕らが今提供している階層別研修をそこまで必要としないのかなって思うよ。でも、やっぱり組織でやっていこうよ、チームとしてちゃんと機能させようよっていうことを希望される会社には僕らのような研修は必須で、ちゃんと導入していかないと、よい組織にはなっていかないっていうのは、各社を見ていて思う。全員で目的地に行こうよって言っている会社はとくに、階層別研修を入れたほうがいいって思います。


さくら:会社がどんな組織をつくりたいのかによって変わりますね。世界の就活事情などの話が出て、世界と日本の比較がおもしろかったです。ありがとうございました!


(おしまい&つづく)


\『階層別研修の作り方』シリーズ/
1)階層は、どうやって分けたらいいの?前編 
2)階層は、どうやって分けたらいいの?後編 
3)階層別研修って、どんな種類があるの?前編
4)階層別研修って、どんな種類があるの?後編
5)階層別研修と他の研修って何が違うの?前編 
6)階層別研修と他の研修って何が違うの?後編 ←イマココ
7)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?前編
8)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?後編
9)階層別研修ってどうやって設計するの?前編
10)階層別研修ってどうやって設計するの?後編

このシリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!

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