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階層別研修の作り方②~階層は、どうやって分けたらいいの?後編~

【この記事は以下の読者様を想定して書いています】
・人事担当者様
└なかでも、教育や育成の担当者様


【この記事を読むことで得られること】
シリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!


【登場人物】
▼ホッソン(細野 和彦):

研修作家、人事コンサルタント。㈱ハブプロダクト代表取締役。年間250日以上の研修プログラムを設計から実施まで行う。 自ら講師としても登壇する一方、近年はHOMEROOM、ROGCHECK、RE:CAREERなどの育成プロダクトを世に送り出す開発者でもある。㈱ログシー 育成支援事業部 統括。好きな食べ物は鶏料理。

▼さくら(鈴木さくら):
キャリアコンサルタント、研修講師。航空会社→ホスピタリティ系専門学校→独立。キャリアコンサルタントは天職で、主に企業や大学でキャリアコンサルティングを行う。育成にも力を入れ、キャリアコンサルタント養成講座の講師も務める。ホッソン主宰の研修講師育成塾の第一期生で、師弟関係でもある。好きな食べ物はエビフライ。


※前回の『階層別研修の作り方~階層は、どうやって分けたらいいの?~』はこちらからどうぞ!


◆階層別研修の目的は、組織を烏合の衆にしないため


さくら:前回は階層別研修を「人称」で分けて、階層数は五階層プラスマイナス2っていうお話を聞かせてもらいました。今回は、前回の続きでそれぞれの階層が持つべき「視座」について教えてください。


ホッソン:OK!各階層の役割によって、視座には2つの軸がある。一つは「視野の広さ(高さ)」。僕はそれをよく守備範囲と言っています。もう一つは、「時間軸」。これをまとめた図がこちらなんですよ。

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新人が一階層目の一人称、そこから上がっていって、経営層が五階層目の五人称。一人称の新入社員は一人前を目指して自分の成長を考えるから持つべき時間軸としては、せいぜい1週間先くらいまでを考えればいいよね。二人称の若手リーダー層になってくると、対お客様で先読みが必要になってくるから1ヶ月先を見て仕事をしないといけない。

三人称の課長やGMといった管理職は、人材育成や組織づくりをする立場だから計画立ててやらなければいけないよね。育成や組織づくりはすぐには結果が出ないから3ヶ月先を見据える必要がある。四人称の部長や本部長クラスになってくると、部門全体で急に利益が見込めないなんてあってはいけないから、生産性を上げてどんな商品を扱うか、開発していくか、半年後くらいのキャッシュを考えないといけない。

五人称の経営者になってくると、もっと先だよね。今取り組んでいることが1年後3年後どうなっているか、業界にどんなインパクトを与えられるか、考える必要がある。視座は視野の広さ・高さと時間軸が必要で、これを広げて高めるために、それぞれの階層別研修をやるんだよ。


さくら:視野も時間軸も階層によって大きく変わりますね。ところで、私、今日細野さんに質問したい内容をひっさげて参りまして、その一つの質問が「そもそも、企業は階層別研修をしなければいけないんでしょうか?」っていう質問を考えてきていたのですが、その回答がこれってことですね。


ホッソン:そうそう。家庭でいうと、父親への教育と子どもへの教育って違うでしょう?父親は生活基盤を整えるために住む場所を決め、インフラを整え、収入を得るために学び、子供は生きる力を身につけるために国語・算数・道徳などを学んでるよね。階層って聞くとなんだか難しく聞こえるけど、そういうことよね。そう考えると、階層別研修は企業にとって絶対必要なんですよ。


さくら:階層別研修を導入していない企業も世の中にはありますよね?


ホッソン:あるある。それは、規模が理由になることが多いよね。「うちにそんなたくさん階層ないので。上司と部下しかいないのでね」とか。教育しなくても、なんとなく年齢やこれまでの社会人経験でできちゃうとかね。階層よりもスキルアップ、技術系の教育に振り切っている企業もある。でも、会社として組織にしていくのであれば、まさに今回の相談者さんのように800人規模だったら、階層別研修をやらないと烏合の衆になっちゃうわけですよ。



◆火消しとしての単発研修では、もはや意味がない


さくら:研修作家や人事コンサルタントというお立場の細野さんからは「階層別研修は必要だよね」と見ていますが、一方、企業側でも「階層別研修ってやっぱり必要だわ」と思っているものなのでしょうか?


ホッソン:僕の立場からは企業人としては回答できないけれども、ただ、めちゃくちゃ相談件数は増えているんですよね。話を聞くと、「うちの会社、これまで管理職研修をやったことがなくて、個人のスキルに委ねているところがある。あなたは実績も出てるし後輩の面倒を見るのがうまいから、管理職ね」とか。でも、それだと組織として危ういよね。だから、組織としての型を作るのが階層別研修という位置づけになる。それができていないから、企業からの相談が多いんじゃないかなと思う。


さくら:なるほど、企業としては明確に「やっぱり、階層別研修は必要だよね」という認識は持っていなくとも、各現場で問題が生じたときに、「はて、この問題はどうしたらいいんだ?」と細野さんに相談をする。そこで細野さんの回答としては「それは階層別研修が必要ってことですよ」と伝える、ってところに着地するってことでしょうか?


ホッソン:そうそう。それね、すごい良い解釈で、だいたい相談が来るときって、たとえば「現場でパワハラがあって、解決するにはどうしたらいいですか?」と現場で発生した問題について相談が来る。ヒヤリングしていくと、これまで研修をしっかりしたことがない。じゃあ、このタイミングで各階層に対して視座の認識や役割理解をしてもらわないといけないよね、と。たとえば、先ほどのハラスメントでいうと、ハラスメント防止研修を単発研修という一瞬の火消しで実施しても、そもそもの当人の自覚がないから意味がない。ちゃんと階層別に分けて役割理解から入っていかないと、研修だけやったって解決されないよね。


さくら:合点がいきました。現場で起きている現象について相談されたときに、人事コンサルタントの視点でいくと、「これまで階層別研修したことありますか?」ってヒヤリングして、何が問題の根本なのかを見極めて提供していくってことですね?


ホッソン:そう。1回研修やって「おもしろかったね」で終わっても、そもそもの問題が解決されていないと、当然だけどまた同じことが起きる。研修の価値って、おもしろさじゃないよね。

話を戻すと、今回の受講生さんが階層別研修の見直しをするときには、ベースは前回話した「人称」があって、それに伴って持たなければいけない視野と時間軸、守備範囲がある。そのうえで、その階層に起きている問題に対して解決するプログラムを当てていくことが大事。プログラムに関しては何が必要か、その業界の特性もあるだろうから、僕らもしっかりヒヤリングしないといけないね。それを聞いて、一緒に設計していくのがよろしいですよ。



◆研修って本当に効果があるの?という質問への回答は、こちらです

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さくら:今すごい腑に落ちたことがありまして。何かっていうと、企業では「研修って本当に効果あるのか?!」論争がいまだに続いているじゃないですか。「まあ、やらないよりやった方がいいけど、研修効果ってどのくらいあるの?」って。その論争に、ひとつの明確な回答が得られたと思いました。細野さんのこの階層別研修の話が一つの回答ですよね。

つまり、さっきの例でいくと、ハラスメント防止研修をやりました、でも火消しにしか過ぎないから一瞬は効果があるように見えても根本解決ができないままだから、時間が経てば「研修効果は測れない」となる。でも、階層別研修をしっかりと行うことで、火消しではない、効果の得られる研修を提供できますよね。


ホッソン:そうだね、階層に対する人称の考えと必要な視野の広さと時間軸を人事担当者がちゃんと持って、そのうえで、それぞれに挙がっている今の課題を明確にして、課題に対してマインドとスキルを身に着けて行動変容を促す研修を行うっていうのが、理にかなっているね。


さくら:研修の肝ですね。この内容を受講生さんに伝えますね。カオスにならず、スムーズに階層別研修の見直しができそうですよね。ありがとうございました!

(おしまい&つづく)



\『階層別研修の作り方』シリーズ/

1)階層は、どうやって分けたらいいの?前編 
2)階層は、どうやって分けたらいいの?後編 ←イマココ
3)階層別研修って、どんな種類があるの?前編
4)階層別研修って、どんな種類があるの?後編
5)階層別研修と他の研修って何が違うの?前編
6)階層別研修と他の研修って何が違うの?後編
7)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?前編
8)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?後編
9)階層別研修ってどうやって設計するの?前編
10)階層別研修ってどうやって設計するの?後編

このシリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!


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