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階層別研修の作り方④ ~階層別研修ってどんな種類があるの?後編~

【この記事は以下の読者様を想定して書いています】
・人事担当者様
└なかでも、教育や育成の担当者様

【この記事を読むことで得られること】
シリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!


【登場人物】
▼ホッソン(細野 和彦)
研修作家、人事コンサルタント。㈱ハブプロダクト代表取締役。年間250日以上の研修プログラムを設計から実施まで行う。 自ら講師としても登壇する一方、近年はHOMEROOM、ROGCHECK、RE:CAREERなどの育成プロダクトを世に送り出す開発者でもある。㈱ログシー 育成支援事業部 統括。好きな食べ物は鶏料理。

▼さくら(鈴木さくら)
キャリアコンサルタント、研修講師。航空会社→ホスピタリティ系専門学校→独立。キャリアコンサルタントは天職で、主に企業や大学でキャリアコンサルティングを行う。育成にも力を入れ、キャリアコンサルタント養成講座の講師も務める。ホッソン主宰の研修講師育成塾の第一期生で、師弟関係でもある。好きな食べ物はエビフライ。


◆3つ目の研修テーマはこちら

さくら:前回はなんでもかんでも階層別研修に入れていいってわけではなくて、研修テーマは3つだけよ!ということで、2つまで伺いました。3つ目は何でしょうか?


ホッソン:これまで中小企業は努力義務だったパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が2022年4月から義務化されたことによってよりフォーカスされてきたんだけど、それに関連したことが3つ目に入ります。「メンタルヘルス」です!


さくら:メンタルヘルス!


ホッソン:今、企業で働く方々のメンタルによる体調不良が出ていて、職務遂行ができないっていう事案が非常に多い。僕もこの業界に携わっていて強く感じるのが、パワハラ増加の背景の一つには消費者の求めるレベルがどんどん上がってきているわりに、労働環境は変わらないので、一つのミスやエラーの与えるダメージが本人にも会社にもすごく大きくなっているということ。たとえば、コンビニは日本中にいっぱいあるから、満足しなかったら他へ行く。そのほかシステムもそうだし、営業もまさにそう。これは新入社員だろうが管理職であろうが、それぞれかかるプレッシャーの種類は違うけど、負荷がかかっていることは同じ。だからこそ、メンタルヘルスは必要なテーマだと思う。例えるなら、1つ目のテーマだったマインドセットで心を整えて、よしやるぞって思ってもらい、2つ目のスキルセットで武器を渡して、これでしっかり全うするんだぞって言った後に、3つ目はちょっと傷ついたときはこれで回復してねっていう心のケアを学ぶ。回復に役立つものを渡してあげるっていうところまでを階層別研修でするといいんじゃないかなと思いますね。


さくら:絆創膏を手渡すみたいな感じですね。


ホッソン:そうそう。さくらさんはゲームしないからわからないと思うけど、回復の魔法を教えるホイミ(ドラクエに登場する回復呪文の一つ、うーん、ぜんぜん知らないw)ってこう使うんだよとか、もっと上になると傷つくからベホイミを覚えてもらってりとかね。管理職になって再起不能になったらザオリク(こちらもドラクエに登場する呪文で、戦闘不能状態から復帰させる完全蘇生呪文だそうw)で復活したり、それぞれの階層によって必要なメンタル回復方法を教えないといけないよね。


◆具体的なメンタル回復方法を伝授することはもはや必須

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さくら:研修でどんなホイミやザオリクを教えるんですか?


ホッソン:出来事や事象の捉え直しと言われる、その観念の書き換えがとくに若年層に必要になってきているよね。つまり、新入社員の8割はうまくいかないことだらけで、うまくいかないことって成長のためだけど、それを成長と捉えるためには回復力ともいえる「レジリエンス」が必要だよね。あとは、リーダーにいっそう求められる「アサーティブコミュニケーション」。互いの折衷案を見つけるコミュニケーション手法だよね。さくらさんの得意領域でもあるABC理論(※)のなかの「B:ビリーフ」の書き換えがうまくできるようなトレーニングもそうだね。あとは、ここ10年ぐらい管理職に「アンガーマネージメント」って言われる領域の話があるように、怒りのコントロールとか。トレーニングを受けることである程度できるようになる。このあたりのテーマはこれからとくに必須で、各管理職研修のプログラムに入れていくべきじゃないかなと思っている。
※:心理療法家アルバート・エリスが創始した論理療法におけるカウンセリング理論


さくら:メンタルヘルスの分野をもっともっと一人ひとりがちゃんと身につけておいた方が健やかに働けますよね。


ホッソン:そうそう。健やかに働けるとか、自分らしいキャリアを築けるとかね。エンゲージメントと言われるように、その会社と従業員本人たちが手を握り合う感じ、そのきっかけにもなると思う。


さくら:仕事をより効率良くパフォーマンスを出していくことを第一に考えたとき、心でいちいち感じちゃうと、うまくパフォーマンスが発揮できなくなっちゃうから心を閉じて感じないように仕事をしている人が多いなって感じます。でも、仕事には人間関係がつきものなので、部下から話を聴くときに心で感じようとせず、頭だけで理解しようとすると、部下は「わかってくれた」感じがしない。受容や共感がないままだとうまいこといかない。だから、研修でメンタルヘルスの分野を入れながら各階層で必要なメンタルケアを渡して行くことによって心でちょっと感じつつ仕事をしつつ、自分でケアができるようになればもっと良くなるんじゃないかなって思うんですよね。


ホッソン:そうね、当然ビジネスだから数字を追いかけて結果を出すっていうことは重々理解できるし、それが間違っているとも思わない。ただ、これまで一本槍だった時代から変わってきているわけだよね。 最近の管理職研修でオーダーがあったのが、Z世代ではデジタルネイティブだっていうような話で終わらせるんじゃなくて、なぜ多様性を彼らが求めるようになったのかっていう時代背景をちゃんと理解させてほしいっていう要望だった。それを加味して、研修冒頭の1時間ぐらいZ世代について固定概念が入らないように講義させてもらったんだよね。それがすごく腑に落ちたっていうような話をあとで聞いたよ。


さくら:管理職の腑に落ちたんですね。


ホッソン:今まで喜ばれていた営業インセンティブにモチベーションが上がらない理由や、医療介護福祉業界でホスピタリティや社会貢献をPRしても人材が集まらない理由とか、これまで各業界で従来の一本槍で通じていたものがあったはずなんだけど、多様性を本当に理解しておかないと、「うちの業界はこの一本槍のみです」っていうのが通じなくなってきている。この一本槍でいけなくなったときに、ふと立ち止まって、じゃあ心を閉ざすんじゃなくて、一回広げてみようとか、頭じゃなくて感じてみようっていうことがきっかけになるんじゃないかなと思うね。だから、そのものの捉え方や広げ方はこれからもっと必要になってくるんじゃないかなというのが現場から実感することかな。 


◆階層別において重要なのは、「自分自身」という最小単位のコミュニティを築くこと

さくら:多く聞かれるのが、「どうやったら自信を持てますか」という質問です。「自信の付け方」というのもメンタルヘルスの領域に私は入ると思っています。自信って周囲から認められるとか、いろんなスキルや資格を身に付けながらステップアップしていくとか、そういう自信のつけ方もあるんですけれど、そういうのって外側のものだからそれだけだと頭打ちが来る。自信ってなんだろうって考えていくと、やっぱり自分に対する信頼ですよね。自分に対する信頼がうまく育まれていないまま、外にばっかり求めていっちゃうと、あるとき何か自信がもてないっていう感じになっちゃう。最小単位の人間関係って自分との関係だと思うんです。その自分との関係をうまく育めるように、メンタルヘルスの面から研修としてサポートができるといいんじゃないかなって思います。


ホッソン:そうだね、今の話で言ったら、最小単位のコミュニティが自分自身だよね。それって一人称である新入社員に必要なことだよね。次リーダーになってくると、二人称になるって話を以前したと思うから相手との信頼関係の築き方になるし、もう一つ上がると三人称になるからそのチームとの信頼関係の育み方になってくる。元を正せば、やっぱり自信って自分への信頼になってくるから、自分がちゃんと自責で考えることができているかとか、自分を裏切らないために成長することをコツコツやり続けられているかだよね。やっぱり自信を作るっていうフレーズにおいて、マインドセットやスキルセットは大事だし、メンタルヘルスの領域で関係構築においての学びっていうのもやっぱり必要なんじゃないかなって改めて今聞いて思ったかな。


さくら:はい、自分との信頼関係を育んでいかないと、二人称三人称ってなった時に相手となかなか信頼関係が結べなくなっちゃうっていうことが発生してしまいますね。


ホッソン:そうそう、階層別研修では3つのテーマ、「マインドセットとスキルセットとメンタルヘルス」の領域を各階層に入れてプログラムを作っていくと、いいと思う。その他のちょっと専門領域に必要なものは専門教育になってくるから、業種や職種によって変えていかれたらいいんじゃないかな。


さくら:スッキリしましたね。この3つのテーマで階層別研修を作っていくと、カオスにならないで済みますね。ありがとうございました!

(おしまい&つづく)


\『階層別研修の作り方』シリーズ/
1)階層は、どうやって分けたらいいの?前編 
2)階層は、どうやって分けたらいいの?後編 
3)階層別研修って、どんな種類があるの?前編
4)階層別研修って、どんな種類があるの?後編 ←イマココ
5)階層別研修と他の研修って何が違うの?前編
6)階層別研修と他の研修って何が違うの?後編
7)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?前編
8)階層別研修にはどんなプログラムがあるの?後編
9)階層別研修ってどうやって設計するの?前編
10)階層別研修ってどうやって設計するの?後編

このシリーズを完読すると、社内で階層別研修を作るポイントを掴め、人事担当者として有意義な階層別研修を組み立てることができるようになります!


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