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未熟なメタモン

心のうちを言語化したい、ただそれだけ。
ずっとわだかまりが奥深くあぐらをかいて座っている。
頑固な亭主関白のように冷たく、ドス黒い。
触れたくない、目を逸らしたい。
でもそれをなんとかしなければならない、
そんなフェーズもとっくに迎えているはずなのに、
もうそんな子供じみた逃げ方をしている場合でもないのに、
まだ大人になりきれない、意思決定の弱い自分が震えて疼くまっている。

今、これからのキャリアについて考えるたびに袋小路に行き着く。
少し進んだと思うとまた行き止まり、結局来た道を戻る。

今まで何を大学4年間過ごしてきたのだろう。
晴れて浪人の苦悩から抜け出して、大学進学したというのに。
挑戦的なことをと思ってしていた行動は龍頭蛇尾。
コロナなんて言い訳に過ぎないと思っているのに、
それを理由に自分が保守的なことを正当化する。
あれもこれも好奇心はあるはずなのに、
何もしないことに心地良さを感じていた。
それでも何か惹かれる学問があるはずだと思って、
なんとなく4年間走ってきた気がする。
これを究めたらきっと。
そんな考えを新しい分野と出会うたびにそう勘違いする。
究めればの話だが。
やがて気持ちも切り替わって1から始まる。
あれもこれも、繰り返し、デジャブ。

勿論何か得てそれを活かしているシーンは必ずあったのかもしれない。
でもそれを実感できないまま、心がふわふわと宙に浮いたまま。
なんとなくの勘違いも時として得ても結局捨てる。

メタモンみたいだな、
ポケモンに登場するメタモンは、どんなポケモンにも変身・変化できる。
今の自分はまるでその変身が未熟なメタモンなのかもしれない。
あんな風に、あんな感じに、
なりたいと思って自らを変身しようとする。
空に憧れて鳥に変身したいと思うように。
何かこの学問について深めたいと意気込んでも、
結局自らの変身を途中で諦めてしまう。
何か一つに専念できることはきっと素敵なこと、
そのクールさにずっと心躍ることは嘘ではない。
何か一つのことに変身できることは、
我が物としてそれを軸に自分を再構築できるのかもしれない。
多趣味であれもこれもできること、
その好奇心溢れて自分のものにできることにも心躍る。
ある程度あれにもこれにも変身できることは、
臨機応変でどんな状況も切り抜ける、
なんだかんだやっていける世渡り上手なのかもしれない。
わからない、Y字の道でずっと立ち止まっている感覚。

どちらかと言えば今自分に必要で求めているのは前者なのだろう。
大学院に行きたい、
しかしその野望があるのにそこまで一つのことに専念してきた、そんな自負も実績もない。
趣味で勉強している分野もあるが、
専門性には劣るし、独学の範疇を超えない。
他のブログを見ると、
数々の経歴を携えてこの道に進みます、
目を見張るような文言が並び、読むたび心を挫く。
所詮一握りの人間でしかないのに、そんな人たちが溢れているのだろう、
そんな錯覚と眩暈を起こす。
ましてや海外の大学院、それなりの覚悟を持って行かなければいけない。
プレッシャーですりつぶされそうになる。
メタモンの形をしている自分の心の輪郭が、
より薄く水蒸気のように消えかかりそうになる。

周囲の人たちにも声高らかに
海外大学院に行きたい、
と伝えながらも自信が大きいわけでもなく、
ただ就職活動から逃げたと思われても仕方ないような言動をとっている。
それも一理ある。でもなんとなくこの学問を学びたい、
そう思っているのも違いない。
結局自分はどうしたいんだろうか、
4年もあったのに、なんら重大な決断をできていないし、
そのための行動も取れていない。
そんな自分への疑心感、焦燥、呆れが塵のように積もる。
絶え間ない不確実性に、期待が膨らみきれない。

キルケゴールも言っていた気がする。
あれかこれか。
こう迷い選択すること、これが自分を選択することだと。
楽な方に流れて興じるような美的選択ではなく、
困難な方を悩みながら選ぶ倫理的選択の方が大切だと。
時として間違ったと後悔するのは誰しもが経験がある。
それでも、なんだかんだ迷いの末その道に収束する、
高校の時に理解しづらかった彼の哲学的思考も、
今なら腑に落ちる。

たぶん、あれもこれもと色々同時にメタモルフォーゼしようと、
その気の分配も思考の仕方も間違えているのかもしれない。
そのキメラのような得体の知れないものへの変身は、
自分を見失うことに他ならないかもしれない。
一旦立ち止まってどれに変身したいか、
悩めるメタモンはかつてのキルケゴール、
彼のようにあれかこれかと選択しなければならない。
遅かれ早かれ、見ざる聞かざる言わざるのままではいけない。

頑張れ、メタモン。
どんなに辛くとも。
周りがどんなに映えていても。
とりあえずやってみよう。


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