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いちおうフィクションです。

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3分あれば読めます。寝付けない時、起きたくない時に、ベッドのお供に使ってください。
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#短編

短編小説「地下鉄の太陽」

短編小説「地下鉄の太陽」

ぼくはミュージシャン仲間に連絡をとった。

鉄男はドラムス、高男はギター、因みにぼくはアルトサックスだ。

ぼく達の計画は、某日、地下鉄銀座線の銀座駅のホームでギグしてやろうというものだ。地下鉄でのギグだから、メトロギグ、ぼく達はその行為をメトギグと仲間内で呼んでいた。

ぼくは、大学生の頃、一年休学して、東南アジアとヨーロッパをフラフラと放浪した。
ぼくの放浪の旅は、結局どこに行こうと、安宿でダ

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「王妃が処刑された町を出て」

男はダブルベッドで一人目を覚ました。

白い壁に、灰色の寝具。

それらは全て彼の妻が選んだものだ。
深緑色のカーテンを開けると、くすんだ雲が空を覆っており、雨が降っていた。

壁から外の冷気が伝わってくる。男は再び目を瞑った。

こうして一人で生きることにも男は慣れてきた。

自分の感情をじっと静かに保つことが肝心だ。

何かに対して喜びを抱いたとしても、その後には必ず落胆がやって来ることを男は

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