コロナで打撃、100人規模の人員削減。にも関わらず半年で新市場を開拓したベルフェイスの起死回生(実録)
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コロナで打撃、100人規模の人員削減。にも関わらず半年で新市場を開拓したベルフェイスの起死回生(実録)

bellFace 中島一明

この記事はbellFace Advent Calendar 2021の24日目の記事です。

ベルフェイス(株)は2021年12月に「リモートコントロール機能」β版の提供を開始した(特許出願)
元DeNAの専門役員で現ベルフェイスのCTO兼CPOである山口 (通称 ZIGOROu) がジョイン直後から企画したもので、電話提案から申し込み (契約) までを一気通貫で完結するなんとも画期的なサービスだ。

もともとコロナ禍における企業の「非対面でもその場で申し込みまで完結したい」という切実なニーズからスタートした構想だったが、その有用性にご期待いただき、正式リリース前に三井住友銀行様の営業職員約3,200人への導入が実現。また、飲食ポータルRetty様でも広告掲載申し込み手続きで全面的に導入いただき、ありがたいことに多数の大手企業様と商談が進んでいる。

2015年創業のベルフェイスは、対面営業が主流だった日本の商習慣と戦いながらオンライン商談ツールSaaSとして成長してきた。「インサイドセールス」という言葉を拡め、電話をベースにした営業現場に馴染みやすいプロダクトを開発し、大規模なユーザーイベントを含めカスタマーサクセスにも全力で取組んできた。2020年2月には52億円の調達を実現し、直後にコロナで緊急事態宣言が出されたときには正直「神風が吹いた」と思った (あくまで事業環境的に)。

しかし実は、神風どころか暴風雨となって家屋 (事業) を吹き飛ばしていった。

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照英さんのヒラメ筋CMで一気に知名度と業績を伸ばしたベルフェイスがコロナ禍の1年で何を経験したのか? 組織を再構築し、ターゲットセグメントをシフトし、資金を調達し、今回の新機能をリリースするまでの紆余曲折をご紹介したい。

(序章) コロナは神風どころか強烈な逆風

ベルフェイスはオンライン商談ツールを提供するSaaSベンチャーだ。音声は電話を使い、アプリ等のインストール不要。お客様にネット検索から接続ナンバーを発行してもらうだけでオンライン商談ができる。インサイドセールスの普及に伴い、オンライン商談ツール市場は成長。売上は5期連続で前年度比約200%のペースで伸び、このままIPOまでいけるのでは、と思っていた。

6期目に入った直後、コロナで対面営業ができなくなった企業からの問合せが激増。これを商機と捉え、2020年5月には60日間の無償提供を開始。キャンペーン開始から数ヶ月で申込企業数は12,000社に達し、緊急事態宣言の直前に52億円の大型資金調達をしていた勢いのまま一気に採用を進めた結果、たった半年ほどで社員数は140人→340人になった。

しかし、事態は予想外の方向に進んだ。

これまでオンライン商談どころから社内会議も対面が常識だった企業が、突如としてZoomやTeamsを使い始めたのだ。2020年10月頃からイケイケの雰囲気が一転。「社内でZoom / Teams を使うことになった」と解約する企業が急増し、新規契約も思うように獲得できなくなってしまった。bellFaceがオンリーワンのときは着想と営業力で一人勝ちだったのに、比較対象が出てきた途端にそれがまったく通用しなくなったのだ。

更にまずかったのが、顧客の9割以上がBtoB (法人) セールスであったことだ。bellFaceは電話を使うので1対1が前提で、ID月額は9,000円 (当時)。対して複数人で商談できて無料 / 有料でも月額〜2,000円で使えるZoomにユーザーが慣れたら勝ち目は無い。5年後に想像していたリモート社会が半年足らずで到来し、ベルフェイスの成長に急ブレーキがかかった。国内のオンライン商談市場は一夜にしてレッドオーシャンになったのだ。

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5年かけて積み重ねてきた収益基盤がガタガタになり、SaaSとしての成長戦略が土台から崩れてしまった。他社Web会議システムへのリプレイスに伴う解約はもはや避けられない。そして、急激に増やしてしまった人件費も減らさなければ会社が存続できないことは明白だった。

この頃、私は経営陣と共に3つの意思決定をした。

(1) 組織を縮小する決断
(2) 営業会社 → 真のプロダクトカンパニーへ
(3) 全業界✖️法人営業 → 金融業界✖️個人営業にシフト

どれも大きな意思決定だったが、1つずつ説明してみたい。


(1) 組織を縮小する決断

結論から言うと、ベルフェイスは2021年3月にビジネス部門を対象に希望退職を募り、前後の自然退職も含め340名いた社員数は約200名になった。

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もちろん、希望退職に至る前にあらゆるコストダウンを実行したことには触れておきたい。常勤取締役の役員報酬を大幅にカット、広告費、開発の内製化、リモートワークでほとんど使用していないオフィスも大幅に縮小した。

半年で200名採用した半年後に100名の人員削減、大きな市場変化があったとはいえ、どう考えても経営責任は重い。一部の株主からは反対もあり、この意思決定に至るまでに何ヶ月も議論した。とても苦しい決断だったが、もしこの意思決定を先延ばしにしていたら追加30億円 (シリーズD) の資金調達はできずにベルフェイスは終わっていたと思う。応募してくれた社員、共に乗り越えてくれた経営陣とマネジメントメンバーには感謝しかない。


(2) 営業会社 → 真のプロダクトカンパニーへ

告白すると、ベルフェイスは典型的な「Sales-Led Growth (営業力で成長)」の会社だった。そして、データや学習に基づかず、創業者のアイデアを開発して売り込む 「ビルドトラップ」に陥っていた。

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創業期のベンチャーであれば「創業者のアイデアや思い込み」は、世のイノベーター層を強烈に引きつけ、成長エンジンとなる。

しかしある程度顧客基盤ができ、更に今回のような急激な環境変化においてはそうはいかない。PMF(プロダクト・マーケット・フィット)できたら、早い段階で [トップダウン✖️アイデア] → [自律的な開発チーム✖️顧客学習] にシフトしていくべきだと思う。

※あくまで個人の感想だが、大半のスタートアップがビルドトラップに陥っているのではないだろうか。勉強したい方はこちらの本がオススメ ↓

ベルフェイスも本来であればもっと早くにシフトしておくべきだったが、トップ (中島) が「プロダクトマネジメント」とCTO含む「経営チーム」を強化する重要性を理解していなかったことで後手になってしまった。加えて、前述の通りコロナ前までbellFaceはオンリーワンだったので、5期まで "成長できてしまった" ことも目を曇らせた要因だと思う。

Amazon、Netflix、Google、Disneyなど、現代の世界トップ企業は間違いなく顧客を中核に置く真の「プロダクトカンパニー」だ。ベルフェイスもそうならないといけない、そうなりたいと強く思った。

僥倖だったのは、2020年末にかけて元DeNA技術役員の山口 (ZIGOROu) を筆頭に優秀なPM、エンジニアが続々とジョインしてくれたことだ。彼らが明らかに優秀で、顧客と事業を成功させたいという強い信念を持っていたので、創業者としてのこだわりを捨てプロダクトを任せることができた。これは21歳で起業して経営15年目にして初めての経験だった。(それまではボタンの配置1mmからテキスト1文字まで口を出していた)

※ベルフェイスを「プロダクトカンパニー」に生まれ変わらせるべく奔走したZIGOROuの苦労話はコチラ↓(涙無しには読めません。。)

開発組織を強くし、権限委譲して、プロダクトを中心に組織が作られるようにシフトしつつ、ビジネスも管理も含め全社的にマネジメントを厚くしていった。

下記を見て欲しい。組織を縮小しながらもハイレイヤーを採用し、開発とマネジメントを強化していった変遷がわかっていただけると思う。

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開発部門の社員数も直近16ヶ月で160%増加し、全体における人数比率も大幅に高まった。

営業力で成長してきた会社がプロダクトカンパニーへ変革するのは本当に難しい。特に営業出身の創業者には「アイデアを売り込む」ことがDNAに組み込まれているからだ。しかし、トップが変わらない限り組織が変わることはない。絶対に。この12ヶ月でベルフェイス組織は劇的に変わったが、まだまだ道半ばだ。


(3) 全業界 × 法人営業 → 金融業界 × 個人営業にシフト

組織を縮小し、プロダクトカンパニーへ生まれ変わる準備も整った。しかし、急激な環境変化で事業が成り立たなくなってしまった状況は依然として何も解決していない。起死回生を狙う中、注目したのが「金融業界」の動きだった。

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長年契約を更新していただいている企業にSMBC日興証券様があった。コロナ禍においても同社がZoomなどにリプレイスしなかったのは、画面共有が禁止されていたからだ。仮に画面共有で営業側のデスクトップを投影し、キャプチャを撮られてしまえば情報漏洩で大問題になる。bellFaceの場合、クラウドで資料を管理する機能がついていた。それを利用すると画面共有せずに資料を表示してプレゼンできる。本来は資料管理やデータトラッキングのために搭載していた機能だったが、意外な理由で使われていたのだ。

加えて、既存顧客の中でアクティブに使われているユースケースの多くが「個人向け営業」だったことにも驚いた。法人と違い、個人のスマホやPCにはZoomなどWeb会議ツールが入っていないことも多く、1対1が基本なので双方にとって「電話」の方が手軽だったことが理由だ。

このファクトを踏まえ、ベルフェイスは2020年度の終わりに「法人営業 → 個人 / 小規模事業者向け商談ツール」「全業界 → 金融業界」という2つのシフトを決めた。

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金融業界に注力することを決めたのには他にもいくつか理由がある。

■ 日本では個人金融資産1,700兆円のうち60歳以上が約6割 (約1,000兆円) を保有している。この層はWeb会議ツールを使うことが難しいのに、高齢層ほどコロナ感染のリスクが高まるので対面ができない(Burning needs)

■ これは証券会社だけでなく、銀行・保険業界も完全に同じ構図だった。銀行・保険・証券を内包する「金融業界」は代理店も多く存在するため、市場規模が大きいことも注力分野とする決め手になった

すぐに「金融営業本部」を立ち上げ、金融業界の開拓を開始。管理者権限の階層化や1日で消えるインスタント資料の機能など、金融業界のニーズに応える機能開発に注力した。この取り組みによりSMBC日興証券様だけでなく三井住友銀行様など系列での導入も拡大。他メガバンク、地銀、信金、保険会社、6月末にはJA共済連様でも全国導入されるなど大型契約も相次いだ。

2019年以前は一桁しかなかった金融業界の導入が急増。現在では100顧客に達し、業界別の売上構成比も大きく変化した。

(1)組織を縮小する決断
(2)営業会社 → 真のプロダクトカンパニーへ
(3)全業界✖️法人営業 → 金融業界✖️個人営業にシフト

この3つの意思決定と、事業的には金融業界への道が拓けたことで、昨年の大型調達に次いで2021年9月に30億円の資金調達 (シリーズD) を実現。ベルフェイスはもう一度成長を目指すステージに立つことができたのだ。


(終章) 目的は生き残りでなく圧倒的な成長。価値を全世界へ

現プロダクトが金融業界 × 個人営業でPMFしつつあるとは言え、市場の変化スピードを考えると成長しても一時だと予想している。そしてなにより、金融業界の変革には時間がかかる。(リードタイム1年〜数年が通常)

ベルフェイスはビジョンに「世界数十ヵ国で新たなビジネスを生み出すセールスプラットフォームをつくる」を掲げているので、金融業界への注力は戦略的なものであって、そこに留まり続けるつもりは毛頭ない。それを前提に、金融業界にも他業界にも大きなイノベーションをもたらすことを期待して開発したのが冒頭の新機能「リモートコントロール」だ。

この機能はbellFaceのオプションとしてだけでなく、普段は対面 (店舗 / 訪問)やWeb会議システムを使って営業している営業担当者が契約ツールとして "単体で" 使うことができる。

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ベルフェイスにとって、この新機能による契約領域への参入は序章に過ぎない。これ以外にも複数の機能リリースを予定しているが、これらの機能がラインナップされれば、例えば店舗や訪問で行っていたあらゆる手続きをお客様のスマホ1つで完結できるようになる。このコンセプトは脱炭素・SDGsが叫ばれ、人材採用が困難になり、店舗含めたコストとエリア制限が競争力を失わせている世界中の企業にとって救世主となるだろう。そして言わずもがな、誰よりも消費者に喜ばれるはずだ。

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そしてその結果、ブラックボックスになっていたセールス・接客領域のあらゆるビッグデータが集まり、新たなビジネスを生み出すプラットフォームをつくることができる。ベルフェイスが見ているのはそんな未来だ。

コロナによる環境変化の痛手は残りつつも、ベルフェイスは再成長に向け力強く歩み始めた。

ドラゴンボール世代は知っていると思うが、人は (そして企業も)、死にかけて復活すると前より強くなるのだ。

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bellFace 中島一明
ベルフェイス株式会社の代表をしています。高校を中退して土木会社に就職し、キックボクサーを経て19歳で世界一周の旅をしながらビジネスプランを200案作成。福岡で21歳で起業した会社を紆余曲折あり28歳で解任され、人生2社目のスタートアップをしています。たくさん失敗してきました