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【書評】「大丈夫、みんな悩んでうまくいく。 てんてんの「十牛図」入門」

本書の情報
出版社:朝日新聞出版
発行形態:文庫
ページ数‏ : ‎ 184
ジャンル:コミックエッセイ
発売⽇: 2011年9月30日

著者:細川貂々
1969年生まれ
漫画家・イラストレーターとして活動
代表作は夫のうつ病闘病生活を描いた「ツレがうつになりまして。」


全体の内容

てんてんさんは、小さい頃からマイナス思考を抱えてずっと悩み続けて生きてきました

しかし、少しずつ自信をつけていき、迷わなくなりました

その過程を「十牛図」(じゅうぎゅうず)に見立てて、マンガでわかりやすく描いています

十牛図とは、禅宗のお坊さんが修行するときに、牛を探す人に例えて、悟りへの道筋を10枚の絵で表したものです

てんてんさん風の「十牛図」の解釈で、彼女の半生が描かれていきます

物語は、十牛図の10枚に見立てて10章に区切られて進行します

各章の終わりには、夫の解説文があり内容の補足説明をしてくれます


1章 尋牛(じんぎゅう)

まわりの人たちとうまくやっていくことができない

努力をしても、自分が望む結果を得ることができない

どうして私ばっかりと、自暴自棄になり、自分の居場所を見つける旅に出かけます

2章 見跡(けんせき)

やりたいことはあるが、まわりから評価されない

かといって、「普通」にやっていくこともできない

どちらも辛い思いをするのなら、やりたいことで辛い方がいいと決心して、自分の居場所を見つける

3章 見牛(けんぎゅう)

自分の居場所であると思った所でさえ、評価されない

内に秘めた熱い想いはあるのだが、表に出すことができずに悶々する日々

そんなとき、自分を評価してくれる人に出会う

4章 得牛(とくぎゅう)

認めてもらえた人からアドバイスをもらい、漫画家デビューを目指す

少しずつ前に進むようになり、少しずつ成功を積み重ねていく

しかし、目の前に壁が立ちはだかると「マイナス思考クイーン」があらわれて、何やっても自分はダメだ!と、ネガティブ思考の日々が続く

5章 牧牛(ぼくぎゅう)

なんとか漫画家になれたものの、夢見ていた漫画家生活とは異なり、現実は思うようにいかない日々が続く

頑張りが空回りして周りに評価されない、自分が何を描きたいのかわからないなど、中途半端な自分に絶望する

6章 騎牛帰家(きぎゅうきか)

夫のアドバイスにより、何かを楽しんでやったことがない自分に気づく

やってみたいことはどんどんやってみるなど、行動に変化が生まれる

そして、自分が楽しんで描いたものには、まわりも楽しんでくれていることを発見する

7章 忘牛存人(ぼうぎゅうそんにん)

何かうまくいかないと自分や人のせいにして、マンガを楽しんで描けていなかったことに気づく

過去の自分と決別して前向きに生きようとするが、ネガティブ思考クイーンは簡単には別れてくれない

8章 人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)

これまで自分を支えてくれた夫がウツになる

夫のウツの症状が過去の自分に重ねて見えて、今まで支えてくれた夫に改めて感謝する

夫のウツを機に、自分がしっかりしなければと立ち上がる

口に出す言葉が現実になるとアドバイスされて、前向きな言葉を出すことを意識する

9章 返本還源(へんぽんげんげん)

自分に前向きな言葉をかけることで、前向きになることができた

それは、過去に夫からされていたことであったと気づく

マイナス思考に振り回されない自分になると決意する

意識的に楽しむことを努力をするようになる

積み重ねが功を奏し、願いが叶う体験をする

10章 入鄽垂手(にってんすいしゅ)

自分の役割が何なのかを確信する

穏やかでゆったりした気持ちで過ごすことができるようになる

今はつらいかもしれないけれど、あきらめなければ必ず楽しいと思えるようになると、過去の自分に伝えてあげたいと思う


大きな特徴3つ

「ネガティブ思考クイーン」は一筋縄ではいかない

過去のうまくできなかった体験がネガティブ思考の原因となります

長年により積み重なったネガティブ思考は膨張して大きな塊となり、もはや簡単に切り捨てることができない状態になります



てんてんさんは、これを「ネガティブ思考クイーン」と名付けています

何か行動をおこすたびに、「ネガティブ思考クイーン」が心の中に現れて、行動の邪魔をしてくるのです


ネガティブ思考によるデメリット

  • 壁が立ちはだかると、まわりのせいにしたり、私は何をしてもダメなんだ、という考えにおちいる

  • 自分に自信がもてなくなるため、可能性があっても前向きな行動に踏み込めない

  • 何をやってもダメという考えがあるので、保守的な行動になる


こうなってくると、ネガティブ思考により八方ふさがりになり、1人で解決することは難しくなるでしょう


人生の分岐点となったターニングポイント

人は何かをきっかけに、突破口が見出すことがあります

てんてんさんの場合、夫との出会いが最大のターニングポイントであったといえます

もし、夫に出会っていなければ、このままずっとネガティブ思考のまま人生を過ごすことになっていたのかもしれません


てんてんさんのターニングポイントは、

  • 自分にとって理解者があらわれたこと

  • 自分を理解してくれたことにより、自分に自信がもてるようになったこと

  • 理解者のアドバイスにより、今までにない視点から考えることができるようになったこと


夫によるアドバイスにより、状況は少しずつ良い方向に好転していきます

そして、編集者の出会いによるアドバイスで、状況は良い方向に加速していきます


最大のポイントは、人との出会いでアドバイスもらい、今までの考え方に変化が生まれたことだと思います


てんてんさんは、物語を通じてネガティブ思考への対応策を見出しました

  • やってみたいことはやってみる

  • 楽しんでやってみる

  • 自分が口に出す言葉は、現実になる

  • 楽しもうとする努力をする


個人的に心に響いたポイント

展覧会でのエピソードが印象的でした

自分が楽しく作った作品は、見る人を楽しくさせて売れていく

一方で、自分が出来の悪い作品だと思っている作品は、みんなにスルーされて売れない


作品には、つくっている人の気持ちが宿るようです
そして、見る人は無意識でもそれが伝わってしまう、ということです


  • 自分が楽しいと思わなければ、人も楽しいとは思わない

  • 自分が好きと思わなければ、人も好きとは思わない


自分の感じた気持ちは、自然と相手にも伝わってしまう「鏡の法則」が働くようです


読んだ感想

マイナス思考は、やめたいからやめられるものではないと思います

長年の生活による思考の積み重ねですから、簡単に切り替えれるものではありません

てんてんさんのように、前向きな言葉を武器にして、マイナス思考クイーンと上手に付き合っていく

そして、前向きな言葉の積み重ねにより、少しづつプラス思考の習慣を定着していけば、マイナス思考クイーンの影響力も小さくなっていくのだと思います


僕がこの本から学んだこと

  • やる前からあきらめない! やってみなければわからない

  • ネガティブ思考クイーンの正体は、バイアス(思い込み)

  • 苦しい時でも、少しずつやっていくこと! いづれ好転する


てんてんさんは夫のウツをきっかけに、自分で立ち上がる決意をしました

人は何かきっかけがないと、行動に移せない生き物です



僕も、この本をきっかけに、書評を初めて書きました

これを機に、色んな本の書評を書いていきたいと思います

そのきっかけを与えてくれた本書には、とても感謝しています


それでは、また


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