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ふたり生活

「私のが遅いから帰りにクリーニング屋で取ってきて」
渡された受け取り票のレシートを財布に入れて
僕のものじゃない
スーツをもらいに行った

「あなたのですか?」
店員に少し
怪しそうな顔をされながら渡された
3枚もあったのだけれど
家までそう遠くないから
少し意地を張って素手で持って帰った

しばらくして君が帰ってきた
「明日の式で使うのよ、助かった」
そんなものギリギリまで
クリーニング屋に置いとくな
そんなもの僕に頼むな


言いたいところだったが

「間に合ってよかったね」
すんなり口から出てきた自分にびっくりした
君とこんな生活なんて思ってもみなかったこと
だから心臓の中
気持ちの居場所失って
きっとどうにかなってしまうのか
なんて
思っていたはずなのに
こんなにも落ち着いて
君の部屋の
ピンクのカーペットに
寝っ転がる僕がいる

僕は僕を
「大人になったね」
皮肉ってやりたくなった
でも今 この二人の間に
流れている温い人生観に
自分はどっぷり浸かっていたい
と思って
シングルベッドの上
ひとつの枕で
狭そうに抱きしめて寝た

「二の腕が痛い」
「俺も肘が痛い」
2人で2人の身体に潰された箇所を
愚痴り合う朝
起きてすぐご飯食べるのが苦手な君を気遣って
僕も朝ご飯は食べない
目の前で平気に
下着を付ける姿に
心を開かれたような暖かい気持ちと
少しは恥ずかしがっても可愛いのにと
もったいない気持ちが同居した

「あなたのが帰り早いから持ってて」
当たり前のように渡された
君の家の鍵
どんどん僕は
君のいる僕へと
変わっていったような気がした

今日も外は雨が降っている
「折りたたみしかないの」
僕を君より傘の中に入れてくれて
駅まで走った

君はバス
僕は電車

「じゃあとで」
当たり前の挨拶をした
また君の家に帰れること
少し切なく思った


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