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#2 自尊心・自己肯定感(1)

●前回の記事: #1 感情とは

 ネガティヴな感情を「ありのまま受け入れる」ことで、自分自身を守ることができると、前回お話ししましたが、今回はその延長線上です。実は、「ありのままの自分をこれでよい」と思える人は、「自尊心の高い人・自己肯定感の高い人」だと言えます。ここからは「自尊心・自己肯定感」の表現を「自己肯定感」に統一してお話しします。

 「ありのままの自分をこれでよい」と思うことによって、自己肯定感が高まります。例えば、入社してまだ間もない新入社員Aさん。慣れない環境でとまどい、なかなか思うように仕事も覚えられません。そのためミスをして、先輩に怒られてしまいました。こうしたとき、自己肯定感の高い人はそのありのままの状態を「いまはこれでいい、仕方がない」と受け入れて、改善策にエネルギーを向けることができます。ところが、自己肯定感の低い人になると、「私は覚えの悪いダメな人間だ」、「先輩に迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない」などと過剰に自分を責めたり自己嫌悪に陥ったりします。

 さて、この例え話の続きで、ミスをした新入社員Aさんに対して、先輩は気が強い人で、それ以降すごく厳しい指導をするようになりました。

 「何度言ったらわかるの?」
 「わからなかったらきちんと確認してからやってください!」
 「私の言う通りにやってくれないと困ります!」

 と、先輩はほぼ毎日のように、新入社員に対して厳しく指導をするのですが、実はこの先輩も「自己肯定感が低い」人です。なぜならこの先輩は自分の価値観・考え方・仕事の進め方が「正しい」と思っていて、それを新入社員のAさんに押し付けているからです。また、この先輩はもしかしたら過去に「ミス」に対しての心の傷を持っているかもしれません。そのため、Aさんのしたミスに対して過剰に反応してしまうのです。さらには、自己肯定感が低いがために、「新入社員だからミスするのも仕方がないな。きっと本人なりの何か事情があったんだろうな。」と、相手の事情を考える余裕もないのです。

 新入社員のAさんは、何とか期待に応えようと一生懸命頑張りました。正直ちょっと精神的に疲れ始めていたのですが、プライベートの時間も割いて、そして休みの日もずーっと仕事のことばかり考えていました。実は自己肯定感が低いと、無理をしていてもやめられず、頑張りすぎてしまいがちです。Aさんは、常に先輩の顔色をうかがい、先輩の言葉に忠実に従いました。先輩にどんなに振り回されても、自己肯定感の低いAさんは「自分はこうしたい」と言うことができませんでした。

 そんなある日、Aさんの同期であるBさんが、先輩に対して「もう少し優しく指導してもいいんじゃないですか?」と異を唱えました。でも、先輩は聞き入れてくれませんでした。それどころか、

 「後輩のくせに生意気ね!ほんと信じられない!」
 「後輩なんだから素直に先輩の言うとおりに従うべきなのよ。」
 「あの子たちはほんと気が利かないのよね。とにかくそういうのは!」

などと、一方的に評価し、決めつけて自らの正当性を主張したのです。ただ、自己肯定感の低い先輩は、その怒りや不満をこのようにして自分の中にため込んでいるので、ますます自己肯定感は下がります。

 Aさんは、自分をかばってくれたBさんにとても感謝しました。

 「こんな私のようなダメな同期をかばってくれて、本当にありがとう。」
 「でも、結果的にあなたにも迷惑かけてしまってごめんね。」

 Aさんは自己肯定感が低いので、Bさんに対して過剰なくらいに感謝し、過剰なくらいに謝りました。

 いかがでしょうか?自己肯定感の低い同士のAさんと先輩、今後がとても心配ですね。それに対して同期のBさんは、自己肯定感の高い人のように思われます。自己肯定感が高まると、「生きづらさ」から解放されます。そして、他人もリスペクトできるので、優しく勇気ある行動が自然とできるのです。自己肯定感については、これで終わらず続編がありますが、次回は、「怒り」についてもっと掘り下げてお話しします。

(つづく)

【今回のまとめ】  自己肯定感の低い人
●「自分はダメだ」と自分を責める人。
●「~すべき」など、価値観や正しさを「押し付ける」人。
●上から目線で威圧的な人。
●つい頑張りすぎてしまい、無理をしていてもやめられない人。
●「自分はこうしたい」と言えず、他人に振り回されてしまう人。
●「相手の事情」を考えることができない人。
●「過剰な感謝」「過剰な謝罪」
 別に悪くないのに「申し訳ないんですけど~」とか「すいません」
 と言ってしまうような、自虐アピールの強い人。

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