#1 運命の分かれ道
初めて伊勢神宮を訪れたのは、学生の時だった。織田信長を愛し、無神論を決め込んでいた当時は、お伊勢参りも単なる観光だった。
月日は流れ、結婚し、娘が生まれ、お宮参りと誕生日プレゼントを兼ねて奥さんが伊勢神宮参拝旅行をプレゼントしてくれた。
二見の旅館に一泊し、夫婦岩を訪ねた後、お伊勢参りへ。当時、内宮前の駐車場はまだ無料だった。生後3か月の赤ちゃんを抱きかかえて参拝するくらい大したことはないとタカをくくっていたが、甘かった。とにかく腕が疲れるのだ。たまらず無料休憩所で、小休止。そしてまた、娘を抱きかかえ、本殿を目指す。腕がプルプルするのをこらえ、なんとか本殿の石段を登り、無事参拝。
不思議なもので、本殿の前に立った時、白い「御幌」(みとばり)がふわっと舞い上がり、本殿の奥が見えたではありませんか。まるで、「よく頑張ってここまで来てくれましたね。」といわんばかりに。
これで、わが家族は神の御加護のもと、幸せになれるに違いないと思ったものだった。
だが、世の中そんなに甘くはない。好調なスタートダッシュを切った事業は行き詰まりを見せ、「継続が打開を図る」と信じる自分と、「見切りが大切」と主張する奥さんは衝突を繰り返し、奥さんは精神的にも不安定に。
そんなわが家族を救ってくれたのは、なんと伊勢神宮だった。かなり精神的に参っていた奥さんと娘を連れ、急遽お伊勢参りへ。外宮、内宮、そして別宮の伊雑宮と参拝するごとに、奥さんの表情が和らいでいくではありませんか。
そして、その直後、たまたま紹介していただいたNPO起業家育成講座なるものを受講し、現在所属しているNPO法人と出会い、今現在の自分がある。
しかも、「自分が高みに到達すること、自分がもっと注目されること、自分のために富を築くこと」ばかり求めていた、自己中心的な思考から、「世のため人のために何ができるのか」という思考に180度転換することになるとは、その時はまだ夢にも思っていなかった。
(つづく)
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