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「介護books」②介護が始まるかもしれない人へ。不安を(少しでも)減らすための4冊

 今、家族の調子がどうも悪い気がする、だけど、それは単なる年齢のせいではないか、大丈夫、などと思いながら、どこかで、そろそろ介護が始まる不安がふくらんでいる方も、少なくないと思います。今の、こんな状況であっても、どんな場合であっても、介護は突然、始まることがほとんどです。

 できたら、介護を始めたくない、という気持ちと、だけど、介護をせざるを得なくなるのではないか、という恐さと覚悟と不安があるかもしれません。
 家族にとっては、特に親御さんの場合、あのしっかりしている姿や、優しかった言動などが印象に残っているので、どうしても、衰えたり、悪くなってきた部分には、目が向かない可能性もあります。ただ、それは、とても自然なことでもあります。

 それでも、心の中で「もしかしたら」という不安が芽生えたら、それを打ち消すだけではなく、「もしも、このまま介護が始まることになったら」という気持ちにも、少し従ってもらって、準備をすると、不安が減る可能性があります。

 それには、まず少しでも「知っておくこと」がいいのでは、と思います。気持ちの負担となる「不安」は、知らないことで、より膨らみます。もしも、否応なく介護が始まってしまえば、常に対応を迫られて、まるで介護に巻き込まれるような時間が始まる場合も少なくありません。そうなってしまえば、本を読む余裕もほぼないと思います。ですから、「もしかしたら介護がはじまるかも」と思っていたら、今のうちに読んでおくと、少しでも不安が減る可能性がある本を、4冊ご紹介させていただきます。

 全部、読まなくても、この本が良さそうだ、と感じたら、そこから始めてみては、いかがでしょうか。あくまでも、私の個人的なチョイスですが、なるべくタイプの違う本をご紹介します。相性が良さそうだ、と思われた本を、まずは手にとることから、介護への準備となり、不安が少しでも減ると思います。



「認知症になった家族との暮らしかた」

 認知症が、まだ痴呆と言われていた頃、1980年からの長い歴史を持つ全国的な組織が、「認知症の人と家族の会」です。認知症の方、本人。家族介護者、介護者を主な会員とするセルフヘルプグループ(自助団体)で、その団体が監修した本です。
 介護に関わった人たちの多くの知恵が、ここにあるのは間違いないと思います。介護がはじまった場合、どのような生活が始まるのかを、イメージしやすいとも思います。認知症の薬のことも書かれています。また、認知症のいろいろな症状に対して、どのように対処してきたのか、という歴史も詰まっているような印象です。この本の出版年は、2018年。すでに2年がたっているとはいっても、比較的、新しいと言えるので、より最新の情報が入っているはずです。
 オーソドックスな「介護の本」といえるかもしれません。


「家族の認知症に気づいて支える本」

長く、認知症治療の最前線で仕事をされてきた精神科医によって監修されている本です。
 この「気づいて支える」というタイトル通り、認知症ご本人の気持ちの変化についても、描かれていて、症状の進んでいく気持ちについても触れられています。「認知症」と聞いただけだと、やはり恐さがあるかと思いますが、「こんなことを思っているのか」と、少しでも理解するだけで、無闇な恐怖心は減るはずです。
 また、家族介護者に対しても、診察をどうすればいいのか。認知症の進行に伴って出現する行動に対しての対応も書かれています。ただ、その対応を完全にするのは、難しいこと、ということも、同時に書かれているので、家族介護者にとってはありがたい記述があります。注意深く読むと、そんなことに気づかされると思います。


「親の介護には親のお金を使おう!」

 特に、優しい方には、抵抗があるタイトルだと思います。それでも、介護が始まったら、知っておいた方がいい情報が、コンパクトにまとめられています。制度や法律に関しては、介護が始まってからは、いやでも知ることにはなると思うのですが、まだはじまっていなくて、多少の余裕がある、「介護がはじまりそうな」時に、読まれたほうが、理解が深くなると思います。特に、費用の負担が減る制度などは、介護がはじまる前に知っておいたほうがいいことで、場合によっては、よりよい選択ができる可能性まで出てくるはずです。できたら、介護に関わる可能性がある家族の方々が、皆さんで読んで、もし介護が始まった時の費用負担なども話し合えるきっかけを作ったほうがいいのかもしれません。                 

 この本の中の「いくらかかるかではなく、いくらかけるか 介護費用は高くも安くもできる」という言葉は、本質的なことだと思い、「本当だ」と思わず、心の中で、つぶやいていました。


「週末介護」 

介護の体験談は多く出されています。もちろん、私も全部を読んでいるわけではないので、あいまいな印象になってしまいますが、かなり過酷な介護の話も少なくなく、それは、とても貴重な記録だと思いますし、広く読まれるべきだとも考えています。そして、いろいろなことを知っておきたいと思う方には、そうした大変な介護の体験が書かれた本は、とても有用だとも思います。

 ただ、「介護が始まるかも」という時期に読むと、あまりにも「介護への恐怖」みたいなものがふくらんでしまう可能性もあります。そんな場合には、「こんな介護もありえるんだ」という意味でも、読む価値がある本だと思います。大変でない介護はありえないので、もちろん筆者も大変なのは間違いなく、急激に変わる状況への対応や、緊張が続くこと、眠れないことも多かったことなど、過酷さの片鱗は見えます。ただ、ことさらに大変さを訴えない書き方をしているので、こういう言い方は筆者に失礼かもしれませんが、おそらく受ける印象は「等身大の介護」になるかと思います。
 兄弟で協力することで、誰か一人がつぶれるほど大変にならずに、介護ができることの貴重な実例でもありますし、延命治療など、考えるべきこと、知っておいた方がいいことの、経験者ならではの、視点での記述も少なくありません。著者はエッセイストなので、当然のことですが、読みやすい文章です。


 今回は、「介護がはじまるかもしれない方」へ、今の不安が少しでも減る可能性のある本を4冊紹介させてもらいました。よろしかったら、読んでいただければ、と思います。もちろん「介護が始まるかもしれない方」以外でも、ご興味が湧いたら、手にとっていただければ、有り難く思います。

 次回は、「介護books」③「介護に慣れてきたけど、希望が持てない人へ(もしよろしければ)読んでほしい6冊」です。


他にも介護に関して、いろいろと書いています↓。もし、よろしかったら、クリックして読んでいただければ、うれしく思います)。

「介護books」 ① 介護未経験でも、介護者の気持ちを分かりたい人へ、おすすめの2冊

『介護時間』の光景① 「母娘」

『介護離職して、10年以上介護をしながら、50歳を超えて臨床心理士になった理由①』

『家族介護者の気持ち』 ①介護のはじまり・突然始まる混沌

「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法① 自然とふれる」

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