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イギリスの思い出その8

短い滞在でしたがリバプールに別れを告げてロンドンに帰って来ました。トラファルガー・スクエアでは白い鳩の群れが飛び立ち、公園では真っ赤な薔薇の花が咲き乱れ、野兎たちが戯れている。なんと平和な光景。その夜は同じツアーの山内さんとホテルで夕食を共にする。「そうですか、リバプールまで?どうでした?僕もいろいろ不動産を調べてね、いろいろ分かりましたよ。やはり自分の足を運んで調べるのが一番ですね。」とてもいい雰囲気のレストラン。サービスも英国風で良いし、ステーキも美味しい。

後はリバプールのマークが招いてくれた、そのバンドのギグを見て帰るだけ。

カムデン・タウンは水路があったり、古着屋が並んでいたり、庶民的でなおかつオシャレなエリア。

そろそろライブの時間だ。アンダーワールドというクラブへ向かう。ゲストリストを持った女性が入り口に座っている。「えーとゲストリストに載ってるはずなんですけど。」「苗字は?」「フジモト」「フジモトはないけど、ヤマモトならあるけど。」この際どうでもいいや。「ああ多分それオレです。」手の甲にスタンプを押してもらって難なく入場。でもこのゲストリストっていうシステムいいなあ。日本では友人のバンドのライブでも毎回1800円のチケットを買ってさらに2ドリンクミニマム。そんなに毎回行けますか!このイギリスの夕食を食べた後になんとなくライブ・ミュージックを聞きに行くという文化、いいなあ。と心底思いました。別にどのバンドがやっていようと関係ない。(昔、埼玉の大宮フリークスに適当に現れて、入場しようとした時、どのバンドを見に来たんですか?と訊かれて。別にただ見に来ただけです。と答えたら。どのバンドを見に来たかを答えてもらわないと困るんです!と迫られて、適当に選んだけど。まあお金の配分がそこで決まるわけだが、なんかつまんねえなあ、と思いました。)

ミラーボールが回る店内はまだガラついている。バーで飲み物を頼んで今回のイギリス旅行のダイジェストなんかを頭で描く。そうしている内にバーが少しずつ埋まっていく。そしてしばらくしてバンドが登場。バンド名はTOPだ。

割とオーソドックスな8ビートのロック。ステージには各曲のタイトルがステージの壁に貼られた黒い布にスライド形式に幻灯機を使って現れる。

このフロアの約1/3しか満たしていない観客は自由に踊り出す。「いいねえ。」オレは山口県出身ですが、初めて東京に出て下北沢の屋根裏というところに行きました。観客はみんな地べたに座り込んでタバコを吸ってバンドを見ていました。とても偉そうに。まるでレコード会社の重役のように。

でもロンドンの観客は違う。この8ビートの曲を16ビートのリズム感で肩を忙しく動かしてる。ストーン・ローゼズなどの影響か?

「おお、これこそオレが求めていた世界!」オレも自然に踊り始めました。

ライブが終わり、ローディーのマークが楽器を片付けているのを見つけて話かけました。「おお、来てくれたか!楽屋に来てくれよ。メンバーに紹介しよう。」

楽屋に入ると汗だくのメンバーがビールを飲みながら休んでいました。

マークがみんなに告げました。「みんな、彼はわざわざ日本からこのライブを見に来てくれたんだ!」

ボーカルの人が「名前は?」「フジモトです。」「フジモトは知らないがカンサイ・ヤマモトは知っている!」

みんな気のいい連中でした。

次の日、彼らのCDを購入。あとは帰国準備。(続く)



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