それでも君はお笑いを目指すのか
若い人のキャリアコンサルティングの場合、多いのが転職相談です。
新卒で3年以内に転職する人の率は大卒でおよそ30%、高卒でおよそ50%。この数字はここ30年間ほぼ変わりません。
20代そこそこの年齢ならまさに自分のアイデンティティーの確立に悩む時期です。悩まないのは親を継ぐ人たち。子供のころから未来を決めていた人達であり、ごく少数の人達です。
多くの人たちにとって自分の適性がわからないのはむしろ当たり前のことでしょう。就職をして初めて自分に向いていないことがわかった。そういう人が3割いる、ということです。
自分に向いていないことを見極めるのは大切なことだと思います。適性がわかった上で転職を考えるのは正しい選択だと思います。
私が問題だと思うのは好き嫌いで適職を判断しているケースです。先日のキャリコンでのことでした。相談者は20代そこそこの若者。お堅い方面の仕事について2年目の男性です。自分には向ていない。好きなことを仕事にしたい。そこに転職したいけれどどうすればわからない、という内容でした。
「好きなこととは何ですか」と尋ねると「お笑いです」という返事。「お笑いの何をしたいのか」。「お笑い芸人か、お笑い作家です」と。
そう語る彼の口ぶりはどちらかと言えば重たく、面白みは感じられません。この語り口で、芸人は厳しいだろうと思いました。では作家の道はどうでしょうか。そこで尋ねました。「お笑いのネタは貯めていますか」「人に見せられるものはあるのですか」「いいえ、特に作ってはいませんが、頭の中にあります。」
この業界に正式な門はありません。求人などもありません。道があるとしたら活躍中の作家の弟子になるか、局にネタを応募し続けるかでしょう。いずれにしろ茨の道ですが、その道ですら何のネタも持ち合わせていない人間に通らせてすらくれるものではありません。
若い人の最大の財産は「可能性」です。総理大臣にることですらゼロではありません。そこで彼らは夢見ます。ロックスター、役者、芸人、作家・・・・。
好き嫌いを基準に選ぶならそうした職業があがるでしょう。しかし間違いなく現実的ではありません。輝くスターたちの下には夢破れた人たちの悲しい残骸の山が広がっているのです。
夢見る若者たちに対し、現実を知るあらゆる大人たちが反対を唱えるでしょう。問題は若者に大人たちの反対を跳ね返すだけの気概があるかです。
大谷翔平は2刀流は無理だ、という反対をすべて突っぱねました。18歳の若者にそんなことができること自体驚きです。ただ、彼には鋼のように強い意志とそれを裏付ける才能がありました。そして実際の成績でそれを証明して見せたわけです。
夢があるのは素晴らしいことです。夢に向かっての努力は人間を成長させます。しかしそれが中身のない承認欲求で動かされているものだとしたら怖いことです。
今見ている夢の本質は何ですか?その職業があなたを活かす唯一の手段だからですか?それとも有名になり、お金を稼ぎたいからですか?
その大事な部分をじっくりと考えてから答えを出すべきだと思います。
キャリコンサロン編集部はこちら
https://note.com/career_salon/m/m4c1d1009cb77
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