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泣きたい時に読む小説「CALAMITY」vol.5


前回のお話 ↓


第4章 厄災


図書館から戻った俺は雪奈の部屋へ直行した。

蒼白な顔に濡れた前髪がくっついている姿に、俺は胸が締め付けられる思いがした。

そっと前髪を払い、熱にうなされた雪奈の額に手のひらを当てる。

「大丈夫、必ず助けるから。絶対にこの苦しみから救い出してやるからな」

そうつぶやくと、雪奈がかすかな声で頷いて言った。

「どうして...そこまでするの...」

俺はためらいがちに答える。

「当然だ...お前をこのまま放っておけないからだ」

「お前は俺に沢山の幸せを教えてくれた。何もなかった俺に、幸せをくれたんだ」

「そんなお前が苦しんでるのを放っておけるわけがない」

すると雪奈は泣き出しそうな顔で目をそらした。

「ありがとう...」

「真人さん...」

弱々しく口を開く雪奈の言葉に耳を傾ける俺。

「でも私」

一旦そこで言葉を切り、消え入りそうな声で続ける。

「もうだめかも...」

俺は頭の中が真っ白になった。雪奈の言葉が理解できない。

だめってなんだ?お前はこうして俺の目の前にいるし、ショッピングモール行って買い物したり、一緒に寿司食べたりしてたじゃないか。

俺に幸せを実感させてくれたのはお前じゃないか。

初めてのことだったんだ。23年間生きてきて、初めて幸せだと感じたんだ。

だめなんて言うな。

俺は涙を堪えながら雪奈に言葉を返した。

「バカなこと言うな!」

思わず大きな声を出す俺。

「絶対に」

「絶対にお前を見捨てたりしないから」

見捨てたりなんかしない。雪奈一人に苦しい思いなんてさせたりしない。

雪奈の目から涙が溢れ出す。

「うぅぅ...」泣き崩れる雪奈。

「...約束する。必ず救うから」

そして俺は古文書のことを思い出し、少し確信を持って言葉を紡いだ。

「お前を助ける方法があるんだ。俺はこの街の秘密を知ったんだよ」

「お前を救う術があるんだ」

「...本当に?」震えた声で雪奈が問い返す。

信じられない様子ながらも、希望の明かりが灯ったかのように見えた。

俺は頷く。

「ああ、約束する。必ずお前を救うから」

そう言って俺は雪奈の部屋を後にした。

リビングに居た父親に、俺は図書館で見つけた古文書の内容を話し始める。

雪奈の父親はその話を俯きながら聞いている。

そして、しばらすると口を開いた。

「真人くん、ひとつ昔話を聞いてくれないか」



泣きたい時に読む小説「CALAMITY」vol.6 へ続く…

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