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世界は多様であることを知っているから、世界中どこへ行っても面白い(本田和秀さんインタビュー②)

初めての海外赴任で、頭の中の世界と現実がつながった!

「その一方で自分はアートを創るのではなく、消費・支援する側だなと感じていました。それで、就職活動では『表現活動をビジネスとしてサポートする側になりたい』と考え、文化イベントの企画やプロデュースなどの広告代理店的な仕事が可能で、かつ生真面目に出版文化を支える製造業でもある印刷会社に入社しました。」

「数年間、営業部門で休みなく働いた後に、海外に赴任しないかと打診されたんです。それまでの海外経験と言えば28歳の時に初めてイギリスに行っただけなのに、不思議とその話にピンと来て、29歳でロサンゼルスに赴任しました。生まれて2度目の海外が駐在でした」

「ロサンゼルスに行って、頭の中の想像力の世界全てが現実世界とつながって目覚めた気がしました。高校の時によく聴いた、イーグルスやドアーズ等の歌詞に出てくる場所、そしてその空気感。エンタメビジネスのスケールを感じさせる、ローリングストーンズやガンズアンドローゼズ、ピンクフロイドのスタジアムツアー。マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソンのプレーに熱狂する満員のNBAアリーナ。古代ギリシャから日本の浮世絵、印象派からピカソやポロック、ウォーホールの作品の並ぶミュージアム。ああ、本や映画を通じて触れてきた世界が、現実にここにあったんだと。」

世界は多様であることを知っているから、世界中どこへ行っても面白い

「それ以降はキャリアがガラリと変わり、39年間の会社員人生のうち、19年を海外で過ごしていますが、大変だと思ったことは一度もありません。アメリカへ行っても、中国へ行っても、どこへ行っても吸収することはいくらでもあります。音楽や文学を通じてそれぞれの国の基本的な考え方のバックグラウンドを学ぶことができますし、現地に住めば、直接人から話を聞き、空気に触れて知ることができます。そして何より、アートを通じて世界は多様で、そしてつながっているということを知ったからだと思います。」

「いつも頭の中に多様な世界があって、必要な瞬間にアクセスすることができるんです。一例をあげると、中高生時代に聴いていたロックを通じて、世界には苦しんでいる人たちも、迫害されている人たちも、LGBTの人たちのことも存在することを学んでいました」

本田さんの心の中にいつも“在る“という、2001年5月のニューヨーク・ワールドトレードセンター

人はそれぞれに、その人が育んできた認識の世界で生きているものだと思います。そして、本田さんのお話は、アートに触れることによって、その認識の世界を豊かにすることができるということを教えてくれているような気がします。

本や映画、音楽等を通じて、いろんな世界を擬似体験できる。行ったことのない場所、知らなかったことを知ることができる。あるいは、自分とは違う人の立場や気持ちになって考えることができる。そういう蓄積が多い人ほど、世界には多様性があることを知っていて、人にも優しい方が多いような気がします。

ついでに私のことについて言えば、生きることに対する自分の認識を変えたくてジャズピアノを始めました。周囲に求められることをやってうまく適応していくだけではなく、自分の思いから出発して何かを創造していけること、そのことによって人とつながることができること、自分で自分を幸せにできること、自分の中にも主体的に人生を切り拓く力があることを認識できるようになりたかったのだと思いますし、現実にそれを少しずつ叶えることができているように感じています。

その③「自分の思いと社会性を両立させて新しい価値の創出へ」に続きます。


 


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