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#5 元気を出して

人生はあなたが思うほど悪くない
早く元気だして あの笑顔を見せて

――竹内まりや「元気を出して」より抜粋

最近、人から相談を受けたり、悩みを打ち明けられることが増えた。年齢的に、皆色々考える時期なんだと思う。私自身もたくさん悩んでいるから。ところで、私は人の相談に乗るのがとても苦手だ。昔からずっと。

私自身も時折愚痴もこぼしているし、色々な話もいつも聞いてもらっているので、自分が相談をされたら親身になって受け止めて、話を聞くようにはしている。でも、話を聞き終わって、こちらから何か言葉を投げ返さなければならないというときに、なかなか言葉が出てこない。「気にする必要ないよ」だとか「大丈夫だよ」だとか、チープな言葉は言えるけど、それはきっと相手が望んでいる言葉ではないと思うのであまり使いたくない。でも、代わりの言葉が見つからない。相手の心が晴れる言葉が分からない。辛いんだろうな、というのは分かるけれど、「気持ち、分かるよ」と言うと「お前なんかに分かるか!」と思われるかもしれない。色々考えた結果、いつも結局私は自分に起こった似たような体験の話をして、「私も同じような体験してるよ、だから気持ちわかるよ」という言い方をするようにしている。でも実は、この励まし方、相手を励ませているかは分からないが、少なくとも自分が毎回傷つくのだ。

「大丈夫だよ、私なんて…」と自分の体験をすると、自ずと当時の嫌な記憶を思い起こすことになるし、「あなたよりついてない人がここにいるよ」ということを伝えようとするため、私はかなり自分を卑下した話し方をしてしまう。で、ある意味戦略的に自分を卑下していると分かっているつもりでも、それを一旦口から出してしまったら、本当に自分のほうがみじめな気がしてきてしまうのだ。結果、相手を励ますつもりで発した自分の言葉が、一番自分自身を傷つけるのだ。

しかも、結局私が実体験を話したところで、恐らく相手はそれを求めていないので、あまり響いたような感触がない。結果、さらに落ち込む、という負のスパイラルに私自身が毎回はまってしまうのだ。自分の実体験に対して、相手が慰めてくれることもないので、自分の発した自分を卑下する言葉は、誰からも慰められることなく自分の頭の中でぐるぐるする。私はその頭の中に自ら生んでしまったぐるぐるのもやもやを、少しずつ日々の中で消化していき、数日間、長いときは数週間かけて消していく必要があるのだ。この作業は本当に孤独で、辛い。

そう考えると、人を言葉で慰めるのは私にも、相手にとっても、あまり利益がない。とはいえ、「だから相談しないで」とも言えないし、相手が私以外に話せる人がいなくて辛い気持ちを抱え込んでしまうのも嫌だ。それでは、どうしたものか。私は辛いとき、自分がどうしているか考えてみることにした。

考えてみると、私はある程度の辛さであれば、あまり人に相談しない。そんな辛い話をして、その場をしらけさせてしまうのが嫌だし、そんな時間があるくらいなら少しでも笑っていたいと思うから。本当に辛いときは、人に話すというより自分の殻に閉じこもり、一人きりになって悶々と頭の中で考えるか、一人で泣いていることが多いように思う。相談したくても、どう切り出せばいいか分からないから相談できないというのもあるかもしれない。私はきっと相談をすることが下手だから、相談に乗るのも下手なのだろう。

でもこの間、旦那さんと大喧嘩をして、彼が家を出て行ってしまったとき、どうしようもなく悲しくなって、親友に泣きながら電話をした。正直、その時彼女が言ってくれた言葉は半分も覚えていない。でも、彼女が貴重な日曜日の夜という大事な時間を惜しみなく私のために使ってくれて、ずっと話を聞いてくれたことですごく温かい気持ちになったし、話をしているうちに自分の悩みがとてもちっぽけなものに思えてきたのを思い出した。

本当に辛いとき、私は多分誰になんと言われようと心は晴れない。本当の意味で、自分の辛い気持ちを解消できるのはきっと自分自身しかいないから。友人からは、慰めの言葉が欲しいというより、そばにいて話を聞いて、大丈夫だよとポンポンと肩をたたいて欲しいだけなんだと思う。だから、私も同じようにすれば良いのだろう。これからもし、また大切な友達が私を必要としてくれたら、私は自分を卑下するでもなく、適切な言葉を考えるでもなく、ただそばで話を親身になって聞いてあげて、肩をたたいてあげようと思う。「元気を出して」という想いを込めて。

◆本日引用した曲
竹内まりや 「元気を出して」

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