かやのうち

翻訳家。 幼少時代を海外で過ごしました。 大学ではイギリスの妖精について研究していまし…

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翻訳家。 幼少時代を海外で過ごしました。 大学ではイギリスの妖精について研究していました。 小さいころから言葉が好きです。 子供が生まれたのを機に、自分の原点を自分の言葉で見つめなおしたくなりました。 「かやのそと」から「かやのうち」へこんにちは。

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最近の記事

翻訳という仕事と、宇多田ヒカルのこと

昨年の12月から、ひょんなきっかけでずっと夢だった翻訳家を名乗れることになった。 何年も前からずっと英米児童文学に関連した翻訳家になりたいと思っていて、スクールまで通っていたのだが、きっかけをなかなか見つけられずに出産などを経てライフステージが変わり、「もう夢で終わっちゃうのかなあ」と思っていた矢先の出来事だった。内容も英米児童文学をベースとしたものや、様々な素晴らしい映画に関連したもので、人生とは本当に何が起こるか分からないものだと改めて実感している。本当に運が良かったし

    • 花束を紡ぐ日々

      先日、NHKの朝の情報番組「あさイチ」に歌手のあいみょんが出演していた。 朝の連続テレビ小説「らんまん」の主題歌である「愛の花」についてインタビューを受けていて、私はそれを流し見しながら息子の幼稚園の仕度をしていた。 インタビュアーから「あいみょんさんの考える「愛の花」を描いてみてください」という、無茶振りが入った。「ハートがいっぱいついてる花でも描くのかな?」と適当に考えながら仕度を進める私。しかし、あいみょんの描いた花は私の安直すぎる予想を遥かに超えていた。 彼女はさら

      • 小さくて大きな最初の一歩

        ロシアがウクライナへの侵攻を開始したとの衝撃的なニュースが飛び込んできたのは、二月頃のこと。 このニュースを聞いたとき、11歳の頃のある記憶がフラッシュバックした。平日の夕暮れ時、スーパーからの帰り道。かかってきた電話に出た母が間もなく膝から崩れ落ち、手に持っていた袋から林檎が一つ、ころころと転がり出る風景だ。その日は2001年9月11日。電話はアメリカ同時多発テロを知らせるものだった。父はその頃、ニューヨークに出張中だったのだ。 幸い父は無事だった。 しかし、人々が燃え

        • #6 BADモード

          昨年の十一月、住み慣れた関東から地方へ引っ越した。 きっかけは主人の転職。東京採用として入社したにもかかわらず、蓋を開けてみると、出張と称して本社のある地方で月の半分以上を過ごすという状況がずっと続いていた。そのため、私は子供と二人きりの時間が長かった。 まだ幼いわが子を実質一人で面倒見ながら育休から復帰することを考えた時の心細さがひどく、主人と話し合いを重ねた結果、本社のある地方へ引っ越すことになった。 引っ越し自体については正直、ほとんど抵抗がなくむしろわくわくしてい

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        • 私を作っている音楽
          7本

        記事

          無理することが美しいと思わなくなった話

          県外に引っ越すことが決まったので、最近断捨離に勤しんでいる。今日は今後着ないであろう服や鞄の一部を買い取り店に持っていくことにした(あまり高いブランドでない服は基本、寄付に出す)。断捨離する服選びをするとき、基本的には「ときめかなくなったか」を一番の判断材料にするのだが、今回はそれに加えてもう一つ、判断材料を加えた:服自体は可愛くても、着るときに体がどこか無理をしていないかだ。分かりやすい例だと、サイズアウトした服。頑張ればチャックは閉まるけど、体に合っていない服は体のどこか

          無理することが美しいと思わなくなった話

          あたらしい自分になるための決意表明

          すごく久しぶりの投稿、緊張! こんにちは、かやのうちです。 私、まさに今、人生の過渡期にいると思っているんだ。 ここ数年、自分の人生の変化が目まぐるしすぎて色々と試行錯誤しながらここまで来た感じがする。決意表明みたいな感じで、この文章を書いてみたよ。 ちょっとした自己紹介も含めて、少しここ数年の話をするね(ちょっと長いかも)。 ◆妊娠~出産 まず一昨年の五月に、初めての妊娠が発覚しました。 ちょうど新しい部署(というか入社一年目に配属されていた部署に私の希望で戻ったんだけど

          あたらしい自分になるための決意表明

          伯父と妖精のこと

          先日、突然伯父から葉書が届いた。 伯父は、某有名大学の名誉教授で、私には到底理解できないような生物学などについて詳しい人なのだが、なぜか私たちはとても波長が合って、正月に父方の祖父母の家に家族が集合した際は伯父と話しをするのが密かな楽しみだった。 私が伯父と話すのが好きだった理由は、他人に笑われるような私の好きなものについて、伯父はいつも彼ならではの視点で真剣に議論してくれたからだ。そんな伯父から言われた言葉で、特に記憶に残っているものがある。私が大学時代、妖精について研究し

          伯父と妖精のこと

          息子はお花が好きみたいで、花瓶の近くに連れて行ったら満面の笑みで手を伸ばした。「優しくね」と言ったら、私の言葉が分かるみたいに、本当にそうっと、花を撫でてあげた。優しくなでてもらって、お花もきっと嬉しかったね

          息子はお花が好きみたいで、花瓶の近くに連れて行ったら満面の笑みで手を伸ばした。「優しくね」と言ったら、私の言葉が分かるみたいに、本当にそうっと、花を撫でてあげた。優しくなでてもらって、お花もきっと嬉しかったね

          大好きな祖父のこと

          一か月ちょっと前、母方の祖父が亡くなった。八九歳だった。 私にとって、近しい人が亡くなるのは初めてだった。正直、近しい人が亡くなったらきっとお葬式でたくさん泣くんだろうな、と前から考えていたが、実際は思ったほど泣かなかった。意外だった。 祖父母は、横浜から京急線で少し行った先の駅の、丘の上に住んでいた。大工をしていた祖母の兄が、何十年も前に丘の上に建てた古い日本家屋で、古いけれど、頑丈な立派な家だった。私は祖父母の家が大好きだった。 春になると、小さな鳥が庭先に訪れて、チッ

          大好きな祖父のこと

          #5 元気を出して

          人生はあなたが思うほど悪くない 早く元気だして あの笑顔を見せて ――竹内まりや「元気を出して」より抜粋 最近、人から相談を受けたり、悩みを打ち明けられることが増えた。年齢的に、皆色々考える時期なんだと思う。私自身もたくさん悩んでいるから。ところで、私は人の相談に乗るのがとても苦手だ。昔からずっと。 私自身も時折愚痴もこぼしているし、色々な話もいつも聞いてもらっているので、自分が相談をされたら親身になって受け止めて、話を聞くようにはしている。でも、話を聞き終わって、こち

          #5 元気を出して

          ノートの魔力

          私は昔から、「ものを書く」ことに対して熱しやすく冷めやすい。 文房具屋に行き、表紙に一目惚れしてノートを買った回数は数知れず。家に帰りながら、「旅行に行ったときに感想を書くためのノートにしよう」「好きな歌詞を書こう」「映画の感想を」「本の記録を」などと理由をつけて買った自分を納得させる。でも、結局三、四回書いてからそのまま永遠に更新されないでいるか、その書き込まれた最初の数ページを切り取り、新しい真っ新なノートとして「何か重要な書くことができてから使おう」と待機中になってい

          ノートの魔力

          薬指の、「薬指」たるゆえんを、息子の頬に薬を塗りながら実感する晩夏の夜。あっという間の七か月。

          薬指の、「薬指」たるゆえんを、息子の頬に薬を塗りながら実感する晩夏の夜。あっという間の七か月。

          蚊取線香の香りがすると、夏が来た、と感じる。

          蚊取線香の香りがすると、夏が来た、と感じる。

          #4 名もなき詩

          あるがままの心で生きられぬ弱さを 誰かのせいにして過ごしてる 知らぬ間に築いてた 自分らしさの檻の中で もがいてるなら 僕だってそうなんだ ――Mr. Children「名もなき詩」より抜粋 ここ数週間の日曜、日テレでドラマの「過保護のカホコ」が再放送されていた(観たことのない方へ概要をざっくりと説明すると、過保護に育てられた大学生のカホコが、恋をすることをきっかけに少しずつ自立していくという話だ)。 私はリアルタイムではこのドラマを観たことがなかったのだけど、何の気なし

          #4 名もなき詩

          私は手紙が捨てられない

          私は手紙が捨てられない。 一時期、「断捨離」や「シンプルな暮らし」的なものに色々とはまりだし、しまいには風水について調べ始めたことがあったが、古い手紙をずっと持っていることは運気が下がるのでお勧めしない、といったようなことが書かれていた。 でも、私はどうしても手紙が捨てられない。いざ捨てようと思って、手に取ってみたところで中身を読んでしまうと、当時それをくれた人が私だけのために時間を割いて書いてくれた文字たちが並んでいて、それがとても愛しく感じてしまって、それを捨てるなんて!

          私は手紙が捨てられない

          #3 わたしは人類

          止めて止めて止めて 止めて止めて 進化を止めて 止めて止めて止めて 止めて止めて 止めないで ――やくしまるえつこ「わたしは人類」より抜粋 昨年行った展覧会の中で最も印象に残っているものの一つは、臨月に大きなお腹を抱えて行った、森美術館の『未来と芸術』展だ。倫理観や道徳観念に激しく訴えかけてくる作品が多くて、展示の足を進めるにつれて徐々に不穏な空気が漂う作品へと変化していったことがとても印象的だったのだけれど、その何とも言えない「不穏感」を決定づけたのがやくしまるえつこさ

          #3 わたしは人類