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「なぜ高いところが恐いのか?」キャラクターに5回尋ねる

 5Whyは、ある問題ごとが起きる真の原因を探る1つの手法である。これをするには特に難しい下準備が必要なわけでもなく、行ってしまえば単に「5回なぜを問う」をするだけである。
 つまり、ある問題ごとが起こるのはなぜかと問うて出て来た答えに対して、更になぜを繰り返す。そうして5回目に出て来た理由が、その問題ごとの真の理由なのである。

 この5Whyについて、その実際の難易度はおいておくにしても、クリエイティブの世界で活かすのであれば、それはキャラ設定になるだろう。なぜなら、キャラクターとは問題ごと・課題感の塊である存在で、それを基準として様々な制約を課されてしまっているからだ。
 ある「設定」というものから逸脱してしまうことをキャラブレといって忌避されるのは、その制約の強さゆえである。しかし、キャラクターの言動や世界観の内、どこに制約に抵触するもの、しない者があるかは中々に分析が難しく、それが故にキャラクター設定とは、単にそれを縛るためだけの窮屈なものになってしまいがちだ。
 かといって、キャラクターに成し遂げなばならない問題ごとや課題感がなくなった時、それはもう前に進むことはない。そして魅力もなくなる。難儀な存在なのだ。
 だから、キャラクターとは常に目標を目指し続ける存在であるところ、その動機や障害となる「課題」に関して、5Whyにて設定しておくことは、非常に有用である。例えば、

・高層ビルや山、飛行機を恐れるキャラクター
①これらが恐いのは、全て「高いところ」というイメージがあるから
②高いところを恐れるのは、高所恐怖症であるから
③高所恐怖症であるのは、幼い頃に高所から落ちる事故に遭ったから
④高所から落ちたのは、家族ともども巻き込まれた火災から逃れるため
⑤火災はそのキャラクターの不注意で起き、しかも家族を見捨てて助かった

 現実の5Whyではもっとシンプルに、「~なのは、~だから」と5回繰り返されることが主であるが、キャラクター設定については、純粋なWhyのみならず、その周辺にあるシチュエーションなども含まれる方が良い
 これによりWhyを完璧に掘り下げる精度は落ちるものの、イメージに富み、そのキャラクターの行動理由や、性格などをはっきりさせることが可能になるからだ。

 上記の例で言えば、このキャラクターが「高いところが恐い」とする理由は幼少期の火事にあり、加えてその原因は本人の火遊びであることが分かる。のみならず、そのキャラクターは家族を置いて自分だけが助かっていて、その部分に大きな罪悪感を抱えていることまでをはっきりさせることができた。つまりこの掘り下げによって、

・このキャラクターは家族を犠牲にして生きているという負い目がある
・このキャラクターは火にも恐怖を抱いている

 といった設定をも見出すことができる。よって、キャラクターの行動原理として、家族(仲間)をどうしても見捨てられない、あるいはその言うなりになってしまう、といった点が特徴的であると言える。そして、これこそがこのキャラクターの真の姿であり、この部分を元としていれば、つまりこの結果にさえ矛盾していなければ、キャラクターはどのような言動をとっても矛盾がないということになる。
 このように、1つの特徴を5Whyによって掘り下げることで、キャラクターに課せられた「ねばならない」の根っこを知ることができる。あるいは、整理がつく。そしてその根っこのところさえ押さえておけば、キャラクターは活き活きと、制約に抵触することなく動き回れるのである。

 5Whyというのは、課題解決の分野ではもうありきたりな当然の手法であるが、キャラクター設定という観点でこれを運用することは、問題の真因というよりも、キャラクターの真相を捕まえるために非常に役立つだろう。
 だからぜひ、あなたがキャラクターを動き回らせねばならない立場ならば、それに5回尋ねてみてほしい。特に大きな問題点の1つについて、最も大きな特徴の1つに対して、その根っこを捕まえておくために。

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